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鬼のオカルト

2019.09.28 (Sat)
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今回はこういうお題でいきます。「鬼」というのは、さまざまな
要素が複合した難しい概念です。一般的には妖怪の仲間に入るのかも
しれませんが、それだけでは とうてい収まりきらないですね。
さて、何から話しましょうか。鬼の概念に混乱が見られる理由としては、
まず、中国と日本での意味がそれぞれ異なるためでしょうね。

鬼の音読みは「キ」、現在の中国語の発音だと「guǐ」となります。
中国での意味はだいたい各時代を通して一貫していて、
「死者の霊」ということです。日本でも「鬼籍に入る」という慣用句が
ありますが、これはほぼその意味で使われています。鬼籍とは、
亡くなった人の氏名と情報が書かれている冥界の記録簿のこと。

中国の「縊鬼」
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この漢字が日本に導入されたのは6世紀頃と考えられます。法隆寺金堂
釈迦三尊像光背銘の中に「鬼前大后」(聖徳太子の母の穴穂部間人皇女)
という字が見られ、この頃は、特別悪い意味で使われているわけでは
ないようです。で、この漢字にどのような和語の訓をあてるか。

これについては、民俗学者の折口信夫や、国語学者の大野晋らによる
議論があり、「もの」と「おに」の2つの候補があったと考えられています。
「もの」は物の怪の「もの」であり、人間ではない超自然的な存在の総称。
これに対し、「おに」は「おぬ(隠)」からきていて、姿の見えない、
この世ならざるもののことを意味します。

『伊勢物語』に登場する鬼
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鬼が「おに」と読まれる以前は、「もの」と読まれていたという説も
ありますが、そのあたりははっきりとはわかりません。10世紀、
平安時代中期に編纂された『和名類聚抄』には、「おに」という読みが
出てきますので、この頃には鬼がそう読まれていたのは確かです。

ちなみに、同じく10世紀の『延喜式』では、災いや祟りを引き起こす
悪神を「もの」とし、人間・生物に幸福安泰や恵みをもたらす善神の
対義語として出てきます。いずれにしても、最初の鬼の概念は
目に見えない存在であったわけです。それがどうして、
虎の皮のふんどしをつけ、金棒を持った姿形になっていったのか。

鬼門と裏鬼門
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陰陽道と仏教、この2つからの影響が考えられます。
まず陰陽道からみていきますが、これはもともと中国で発生した
陰陽五行説の一部が取り入れられたもので、天文、暦、時刻、方位など
当時の日本においては、最先端科学と言っていい学問でした。

この陰陽道の方位に関した考え方の一つに「鬼門思想」があります。
鬼門はよくない方角とされ、この方角には玄関をつくらず、魔除けの
効果を持つ植物を植えたりしていました。鬼門は北東で、
「艮(うしとら) 丑(うし)と寅(とら)の間」と呼ばれました。

中国の牛頭馬頭像
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いっぽう、仏教からの影響ですが、生前に罪を犯したものは地獄に
堕ち、責め苛まれるという思想が入ってきます。ここで、
亡者に罰を与えるのは「牛頭馬頭鬼(ごずめずき)」で、
字のとおり馬や牛の頭を持った獄卒です。

おそらくですが、この2つが結びついて、鬼は牛の角を持ち、
虎の皮の褌をつけた姿でイメージされるようになったものと思われます。
余談ですが、鬼門の反対の方角(南西)には戌(いぬ)、申(さる)、
酉(とり=雉)があり、鬼退治をする桃太郎のお供になったとも
言われます。ただしこれ、真偽のほどはわかりません。

昔話に登場する目一つの鬼
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さて、鬼は「鍛冶師、金工師」を表しているという説があります。
「鬼」の字が表れる日本最古の文献は『出雲国風土記』ですが、
「大原郡の阿用郷(あよのさと)で、昔、人が山あいに田をつくって
暮らしていたが、あるとき、山から目が一つの鬼が下りてきて、
その人の男根を食べてしまった」と出てきます。怖いですね。

物質民俗学という分野で多数の著書をものにしている若尾五雄氏は、
1981年の『鬼伝説の研究』で、日本各地の鬼伝説のある地が、
また鉱山地である場合が多いことを指摘し、鬼とは、
鉱山採掘や金属精錬、金属製品生産などに従事する者のことでは
ないかという仮説を展開しています。

源頼光に噛みつく酒呑童子の首
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うーむ、鬼の概念はもちろんそれだけではないと思いますが、
前述の『出雲国風土記』では目一つの鬼が出てきますし、
「一本だたら」という、目が一つ、足が1本だけの妖怪もいます。
ここで、目が一つなのは、焼いた金属を槌で打つときに火花が目に入った、
あるいはいつも片目で炉を見張るため一方だけ視力が落ちた。

また、足が1本なのは、たたら師(鍛冶師)が、片足で鞴(ふいご)を
踏むことで片脚が萎えてしまったから、などという話もあるんですね。
あとはそうですね、鬼=漂着した外国人という説もあります。
酒呑童子など、平安時代に有名になった鬼は、

筒井康隆 『死にかた』


体が大きく毛深いため、日本に漂着したロシア人などが山の中に
拠点をつくって盗賊を働いていたという内容です。鬼が人の生き血を
好んですするのは、じつは赤ワインだった・・・でもねえ、
確証のないままこういうことを言うのは、差別的な気もしますね。

さてさて、ということで、今回は鬼について取り上げてみましたが、
とても浅学の自分には無理のある論考になってしまいました。
現代の怪談では鬼はまず出てこないんですが、筒井康隆氏に
『死にかた』という短編があり、現代のオフィスに突然金棒を持った
鬼が現れ、一人一人を叩き殺していくという内容です。では、このへんで。



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コメント
おはようございます。
犬、山犬は鉱山採掘、金属精錬に従事する者とい説は有力ですが、鬼も同じという説もあるんですね。「ひょっとこ」という神楽などで使われる面がありますが、あればフイゴを吹く姿だという話も聞いたことがあります。
形名 | 2019.09.29 09:01 | 編集
コメントありがとうございます
ひょっとこは火男で、竈を吹いている姿と言われますが
フイゴであってもおかしくないですね
片方の目が小さいですし
bigbossman | 2019.09.29 14:07 | 編集
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