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アーカイブ 植物園の事故

2019.10.06 (Sun)
まだ今月中の話ですね。正月に実家に帰省した帰りのことです。
妻と、2人の娘を連れて車で行ったんです。年越しの夜から3日滞在して、
3日の午後に実家を出発しました。もう帰省ラッシュが
始まってたんで、高速を避けて下の国道や県道を通りました。
家族の住む家から実家までは車で4時間ほどのところにあり、
裏道もよく知ってるんですよ。午後の3時を過ぎてたと思います。
あまり雪の降らない地方ですが、気温は低く、薄暗い感じがしました。
車通りのほとんどない県道を走ってると、車の中に
いがらっぽい臭いが入って来ました。なにか物を燃やしてるような
臭いです。道の両脇の枯田で稲藁でも焼いているのかと思いましたが、
あたりに煙の上がってるところは見えなかったです。

車のエアコンを車内循環にすると、だいぶ臭いがやわらぎました。
幼い娘た2人は後部座席で2人とも眠っていました。しばらく走ってると、
前方に通行止めのバリケードと三角コーンが見えました。
その脇に人が2人立っていましたが、それがどうも様子が変だったんです。
警察その他の制服を着てるわけでなし、工事の人にも見えない。
道の脇に軽トラが一台止まってました。2人とも派手な蛍光色の
ダウンを着て、一人は手に長い鉄パイプのようなのを持ってたんです。
スピードを落として近づき、運転席のウインドウを開けました。
すると、さっきからのプラスチックが焦げたような臭いが強くしました。
「どうしたんですか?」と聞いたら、40年配くらいの、メガネをかけて
黄緑のダウンを着たほうが寄ってきて、無愛想な調子でこう言いました。

「スマンな。この道、通行止めになってるから引き返してくれ」
「通行止め?どうしてですか?」こう聞き返したところ、
若い、まだ20代に見えるピンクのダウンを着たほうも近づいてきて、
「どうしたもこうしたもねえから! 戻れって言ってるだろ。危険なんだよ」
こう怒鳴ったんです。それで、こっちもムッとして、「あんたら警官にも道路関係の
 人にも見えないけど、何の権限で通行止めなんかしてるんだ」やや強い調子で
言いました。そしたら、若い方が持ってた鉄パイプを振り上げかけたんです。
中年の黄緑ダウンがそれを手で制して、「いや、スマンな。緊急のことで頼まれたんだ。
 おっつけ警察が来るし、自衛隊も来るかもな。さっきから焦げ臭い臭いがしてただろ。
 この先の火力発電所で事故があったんだよ。正確には火力発電所のほうは
 何ともないんだが、その排熱でやってる熱帯植物園の事故だ」

「植物園?そんなとこでどんな事故が起きるっていうんだ?」 「それがよ、
 詳しいことは言えないんだが、見れば小さい子どもが乗ってるじゃねえか。
 下の子はまだ赤ちゃんだろ。悪いことは言わないから、こっから引き返せ。
 でないと手遅れになるぞ」これを聞いて妻が不安そうな顔をしました。
「引き返せったって、あの海沿いの火力発電所の事故なら、高速もダメだろ」
「高速は大丈夫だよ。この道よりは離れてるからな」
こんな言い合いをしているところへ、バリケードの向こうからパトカーが
一台来たんです。サイレンを鳴らさず、赤ランプも回ってませんでした。
パトカーはバリケードに接近して停車し、中からかなり大柄な警官が
一人出てきました。それが驚いたことに顔にガスマスクをつけてたんです。
「これはマジでヤバイのか?」って思いました。

警官が手で招いてダウンの2人を呼び寄せ、2人はパトカーの
後部座席に入りました。警官は窓に近づいてくると、くぐもった声で、
「すみません、今の2人はボランティアの人で、好意でやってくれてたんです。
 事故があったのは本当です。どうか引き返してください。
 今から正式に通行止めにしますから」
こう言われてはしょうがないので、車をUターンさせようとしたとき、
4歳の上の娘が目を覚まし、「ドカーンってするよ」って言ったんです。
寝ぼけてるのかと思いましたが、その直後、道の向こうでものすごい
爆音が響き、黒い噴煙が上がったんです。車のウインドウがビリビリ鳴りました。
必死で発進させて、来た道をかなりのスピードで戻りました。適当なところで車を停め、
妻が下の娘の様子を確認しましたが、変わった様子はなくよく眠っていました。

こちらに向かってくる車はありませんでした。15分ほど走ると、
上の娘が「怖かったね」と言ったので、「どうして爆発するのがわかったの?」
って聞きました。娘はそれに答えず、「あそこにダウン着た人が2人いたでしょ。
 どっちも緑色の顔をしてて、とっても怖かった」って答えたんです。
確かに奇妙な服装をしていましたが、顔は緑色ということはなかったと思いました。
きっと娘は、半分寝た状態でさっきのやつらとのやりとりを聞いていて、
そんなふうな夢を見たんじゃないかと考えました。
インターまで戻って高速にのったら、たしかに渋滞はしていましたが、
思ってたほどでもなかったんです。車のナビをテレビ設定にしましたが、
あれほどの爆音が響いたのに、事故のニュースはどの局でもやっていませんでした。
そのうちに流れがスムーズになってきて、右手に火力発電所の煙突が見えてきました。

この道は何度も通ってるんですが、普段と変わってるようには
見えなかったんです。ただ煙突からの煙は出ていませんでした。
で、その横に鉄筋を組んでガラスをはめ込んだ体育館くらいの建物があって、
それがさっきから話に出てきた植物園なんですが、どうも様子が違って見えました。
いつもならガラスの上部は透けて、空を映してるんですが、
そうじゃなく、全面が黒く染まってるように見えたんです。
「やっぱり何か事故が起きてるのか」と思いましたが、よくわかりませんでした。
植物園の脇まできたとき、ガラスが黒く染まってるんじゃなく、
内部を何かが覆っているんだとわかりました。濃い緑色をした、
蔦植物みたいなやつです。それがすごく不気味な感じがしました。
あとは特に変わったこともなく、7時過ぎに家に着きました。

下の子はずっと眠ったままだったので、そのままベビーベッドに移しました。
テレビをつけても、ネットを見ても、爆発事故らしいニュースはなかったんです。
まだ正月休みだったんで、あまり気にしないことにして、
くつろいでテレビを見てました。そしたら上の娘が入ってきて、
「○○ちゃん(これ下の娘のことです)顔が緑色になってたよ」って言ったんです。
驚いて寝室に行くと、妻が下の娘を見ていました。
べつに顔色は普通で緑ということはなかったです。
妻が「熱があるみたい。病院に連れてったほうがいいかも」と言いました。
3が日中だったんですが、救急病院はやっているようでしたので、
車で連れていくことにしました。妻が抱いて後部座席に乗ろうとしたんですが、
そのときに、下の娘が口からぷっと何かを吐きだしたように見えました。

下に落ちたものを拾い上げてみると、白く乾いた1cmばかりの丸い種の
ようでした。種からは5mmほど、薄緑の芽がのびていたんです。
すぐ側溝に捨てたんで、今は持っていないです。あれからもう1ヶ月ちかく
たつんですが、下の娘の意識が回復せず、ずっと眠ったままなんです。
さまざまな検査をしたんですが、医師にも原因がつかめていないようです。
自力呼吸はできるんですが、ずっと妻が病院につきっきりでいます。
それとね、もう一つ気がかりなことがあるんです。上の娘が毎晩夜中に
うなされて泣くんですよ。そして目が覚めたあと決まってこう言います。
「顔に変なのをつけたおまわりさんと、緑の顔をした人たちが窓からおうちを
 覗いてる」って。でも夜は厚いカーテンをしてて、寝室の窓から外は
見えないんです。ね、理解しかねる話でしょう。あの日何があったんでしょうか?





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