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顔面崩壊の恐怖

2019.10.28 (Mon)
アーカイブ177

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『Se7en』

顔、というのは、人間が持つアイデンティティーの一つです。
生まれたときから人間は自分の顔を持って成長していきます。
思春期になれば、身だしなみに気を遣い、女性なら
化粧をしたり、中には整形手術をするという人もいるでしょう。

やがて結婚して齢を重ねると、若い頃ほどには容姿を気にしなくなる
人も出てきます。しかし、歩んできた人生が顔に刻まれるなんて
言い方もありますよね。ではもし、自分の顔がある日突然、
崩壊してしまったとしたらどうでしょう。

小説や映画、マンガ作品をあれこれ思い浮かべてみると、顔面崩壊を
あつかったものが意外に多いのに気がつきます。どうですかね、
一番に出てくるのは、横溝正史氏の『犬神家の一族』のスケキヨでしょうか。
小説よりも、映画のあの白いマスクが目に浮かぶ人が多いでしょう。
ただ、この作品の場合、スケキヨの顔面崩壊は

『犬神家の一族』


別人がすり替わるためのトリックで、顔面が崩壊したスケキヨの
苦悩などは、詳しく描かれてはいませんでした。
筒井康隆氏には、そのものずばり『顔面崩壊』という短編があります。
これは主にビジュアル面から顔面崩壊の恐怖をあつかった話で、

「ドド豆を圧力鍋で煮てるときに鍋が破裂して、熱々のドド豆が
顔面いっぱいにめり込む。顔面は黒い無数の穴だらけの状態となり、
豆を1粒ずつピンセットで取りのぞくのが
絶叫ものの痛さ。薬を塗って包帯ぐるぐる巻きにして治療するが、
その時にハエが傷口にたまごを産みつけてしまう。

穴という穴にウジ虫が大発生。肉を食い破ってかゆくて発狂しそうだが、
これまた1匹1匹ピンセットで取りのぞくしかない。さらに皮膚の下に線虫がわき、
血管に沿って顔中移動してかゆくてたまらない。ついに狂ったように
かきむしってしまい、顔面の筋肉が露出してさらに化膿し・・・」
筒井氏独特の執拗な筆致で、顔面崩壊のプロセスが描写されてましたね。

『他人の顔』


顔面崩壊の苦悩とアイデンティティーの喪失が作品の中心テーマに
なっているのは、安部公房氏の『他人の顔』。
「高分子化学研究所の液体空気の爆発事故で重度のケロイド痕を負い、
自分の顔を喪失してしまった「ぼく」は、妻や職場の人間との関係が
ぎこちないものに変わり、周囲の目を異常に気にするようになってしまう。

そこで、「ぼく」は精巧な人工皮膚の仮面を作り、誰でもない「他人」に
なりすまして自分の妻を誘惑しようとし、これに簡単に成功する。
「ぼく」は妻の裏切りに愕然とし手記を書いてこれをなじる。しかし、
じつは妻は始めから、その「他人」が「ぼく」であることに気づいていた・・・」
かなり重いテーマを、非現実感が出ないギリギリのところで描いた作品でした。

『デロリンマン』


マンガのほうに目を向けると、ジョージ秋山氏の『デロリンマン』
「主人公三四郎は自殺未遂によって顔面を損傷し般若のような
奇怪な風貌になる。さらに精神にも異常をきたし、彼はデロリンマンと名乗り、
人間を救う使命を帯びていると語るのだが、周囲の人間には相手にされない。
ボロをまとい、その下は赤褌一枚で街を歩きつつ、自分は「神」であり、

「魂のふるさと」であると説く。デロリンマンは妻と息子の前に現れ、
じつは自分は三四郎であると告白するが、妻も息子もまったくこれを信じず、
父親は失踪したと邪険にあつかわれる・・・」これははじめ
「少年ジャンプ」に連載されていたようですが、よくこんなシニカルで
終末論的な作品が少年誌に載ったなあと思います。

洋画に目を転じると、これもいろいろあります。『バットマン』シリーズに
登場する悪役のジョーカー。ある平凡な男が工場の毒廃液の中に落ちたことで、
真っ白な皮膚、緑の髪の毛、裂けてつねに笑みをたたえた口に変化して
しまいました。これによって性格も変化し、ゆがんだユーモアを持つサイコパス
となって、犯罪組織のボスとして君臨し、バットマンに戦いを挑みます。

『ジョーカー』
っd

さて、ここまで見てきて、筒井氏の作品は別にして、
顔面が崩壊することで、精神にまで異常をきたしてしまうという
内容が多いんです。まあそうですよねえ。ある日突然、自分が自分で
なくなってしまう。それも美しいほうへ変化するのならいいんですが、

人から嫌悪され、忌避される姿になってしまった場合、
精神にも影響が出てくるのは当然といえば当然でしょう。
よく、人は外見よりも内面が大切だと言ったりしますが、
外見と内面はどうしても連動してしまうものだと思います。

さてさて、最後にご紹介するのは1995年のアメリカ映画、
『セブン』です。これは神の定めた7つの大罪
(暴食、色欲、強欲、憤怒、傲慢、怠惰、嫉妬)をなぞる形で
殺人を実行していく猟奇殺人犯が出てくるサイコサスペンスですが、
そのうちの5番目の「傲慢(pride)」の罪だったかな。

怖い 整形依存症


殺人鬼は、美しく、つねに容貌を鼻にかけている
モデルの部屋に押し入り、彼女をベッドに縛りつけて、
顔の皮を修復不能なようにはぎとります。さらに鏡で醜く変貌した
顔面を見えるようにし、その上で、片手には携帯電話、

片手には睡眠薬入りの瓶を持たせて部屋を後にします。
つまり、助けを呼ぶか自殺するかを被害者に選ばせようと
いうわけです。彼女の部屋に刑事たちが駆けつけたときには、
被害者は自殺していました・・・最後の結末もそうですが、
ひじょうに後味の悪い作品でしたね。では、今回はこのへんで。





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