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早朝ウオーキングの話

2019.10.29 (Tue)
あ、どうも、わたし宗像と申しまして、今年で68歳に
なります。もう仕事のほうは引退しまして、子どもたちも
それぞれ独立しましてね、まあ隠居生活です。自宅には、
せまいながらも庭がありますので、庭いじりをしたり、俳句の会に
出たりして、それなりに楽しくやってたんですが、
一昨年、女房を急な病気で亡くしまして。これはショックでした。
それで、鬱みたいになっちゃったんです。何も手につかなくてね。
いや、恥ずかしい話ですが、家のことは何もかも女房に頼りきり
でしたから。見かねた長男が、自分たちと同居しないかって
誘ってくれたんですが、考えた末に断りました。息子は都市部に
出てまして、そっちに引っ越すのは気が重かったんです。

何もない田舎町ですが、わたしはここで生まれて、ずっと生活して
きたんです。女房と知り合ったのもここですし、
家は女房と2人で間取りや内装を決めて建てたものですから、
やはり愛着があります。幸い、体のほうはどこも悪くないですから、
自由がきくうちはここで暮らしたいと考えたんです。
で、去年になって、どうにか気分も戻ってきました。一人の暮らしに
慣れたんでしょうね。ただ、ずっと家に閉じこもってましたので、
体力の衰えを感じたんです。ジムに通おうかとも思ったんですが、
こんな年寄が若い人に混じって運動するのも恥ずかしいですし、
お金もかかります。それで、早朝ウオーキングをやろうと思いました。
年寄りは朝が早いですし、時間はいくらでもあります。

自宅付近を1時間程度歩こう、そう考えて、トレーニングウエアも
新調しました。コースは特に決めませんでした。とにかく30分歩いて、
引き返して家に戻ってくる。で、やってみると、けっこうな数の人が
出てるんです。わたしは5時半に出るんですが、1時間の間に20人
ほどの人に出会います。犬を連れたりした若い人もいないわけでは
ありませんが、多くは年寄りです。ご夫婦づれも多くて、
ああ、女房が生きていたときに始めればよかったなと思ったんです。
それで、ウオーキングをしてると、いくつか奇妙な出来事に遭遇しまして。
前置きが長くなってしまいましたが、そのお話をしたいと思います。先ほど、
コースは特別決めないと言いましたが、毎日、なるべく違った道を
歩くようにしてました。交差点に来たら、通ったことのないほうへ曲がる。

老婆を見る
3月で、やっと春らしくなってきた日でした。5時半だとまだ薄暗い
ですが、天気もよさそうで、歩いていくうちに気分がのってきて、
気がついたら1時間近くたってました。すっかり明るくなって、
通勤の車も増えてきてましたね。そのときわたしは、やや小高くなった
道を歩いてまして、ふと崖の下を見ると、一軒の家の屋根の上に
奇妙なものが浮いてたんです。何だあれは?眼鏡をかけ直して
よく見ると、お婆さんなんです。わたしよりもだいぶ上、80歳を
越えているように見えました。真っ白な髪に白い着物。
顔も手も紙のように白い。その婆さんが、青い屋根の家の上に
浮いていて、両手を横に広げた状態でゆっくりと回転してたんです。
そんな馬鹿な、幻覚なんだろうか。でも、たしかにそこにある。

距離は50mほどでしょうか。わたしは高いとこにいるので、
やや見下ろす形でした。はっきりはしませんでしたが、婆さんは目を
つむってるように見えました。今ほら、電磁石で回転するおもちゃというか、
置物があるじゃないですか。あんな形で、1分近くかけて1回転する。
ありえないですよね。ガードレールに両手をかけた状態で呆然と
見てたら、「ああ、見えますか」後から声をかけられたんです。
「え?」とふり向くと、柴犬を連れた男性が立ってて、わたしよりも
年配だと思いました。「いや、お婆さんが・・・」そう言うと、
「あれはサキコさんですよ」 「サキコさん?」
「はい、3年前の早朝、車に轢かれて亡くなったんです」
「どういうことですか? じゃあ、あれは幽霊ってこと?」

「おそらくは。朝方に毎日出てるんですが、見えない人が大部分です。
 たまに、あなたのように見える人がいますけど」
「わけがわかりません。あそこは、そのサキコさんの家なんですか?」
「違います。先ほど車に轢かれたって言ったでしょう。それ、轢き逃げで
 まだ犯人は見つかってないんです。おそらくは、あそこの家の者が
 轢いたんでしょう。それを死んだサキコさんが見つけた」
「いや、そんなことがあるはずがない」 「でも見えるんでしょう」
「・・・」 「サキコさんが祟ってるんです」 「祟る?」 「はい、
 あの家は家族3人暮らしでしたが、この3年の間に、奥さんと息子が
 病気で亡くなってるんです。息子はまだ高校生でした。残された旦那、
 小型トラックの運転手のようですが、その人がたぶんサキコさんを」

ソフトを買う
わたしがウオーキングをするコースの一つに、運動公園があります。
町で造ったもので、サッカー場、野球場、ジョギングコースがあります。
で、野球場のバックネット裏がちょっとした森になってまして。
そこに小さい神社があるんです。赤い鳥居なので、お稲荷さんだと
思いますが、狐の像とかはないです。ほんとに小さなお社で、
おそらくお参りする人も少ない。わたしはじつは、高校のときまで
野球をやってまして、この運動公園に来たときは、早朝野球の試合を
バックネットごしに見せてもらうこともあるんです。まあ、レベルは
それなりですが、楽しそうでね。それから神社にお参りして家に戻ります。
そのときに、10円ずつお賽銭をあげてたんです。
で、あれは夏のことでしたね。熱帯夜で、朝から暑かった。

その日は野球はやってなかったので、そのまま帰ろうと思ったんですが、
ふっと森の中に赤いものが動くのが見えたんです。何かあるのかと思って
入ってみましたが、いつものように扉のしまった小さい神社が
あるだけで。財布から10円玉を出して前に出てる賽銭箱に投げ、
戻ろうとしたら、「あのな」と声をかけられました。
「え?」とふり向くと、女の子が立ってたんです。そうですね、
7、8歳くらいでしょうか。おかっぱで赤い人形の着物のようなのを
着てたんです。ひと目で違和感がありました。現代の子どもとは
思えなかったんです。その子は、おずおずと近づいてきまして、
握っていた片手をぱっと広げまして。中には10円玉が何枚かありました。
その子はかわいらしい声で、「あのな、これでな、白いぐるぐるした

 ものを買ってきてくれんか」言ってる意味がわかりませんでした。
「おじょうちゃん、ぐるぐるしたものって何?」
「あのな、人間が夏に食べておるもので、白くて舌を出してなめて
 おるようなものだ」クイズみたいになりましたが、思いあたったので、
「ソフトクリームのことかな」と言うと「たぶんそれじゃ」
「ああ、いいとも、買ってくるからここで待っといで」その子から
受け取った10円玉は8枚。鳥居をくぐるときにふり返ると、
女の子は首をかしげてこっちを見てました。近くのコンビニに行きまして、
足りない分を足してソフトクリームを買い、神社に戻るとその子の
姿はありませんでした。それでね、ソフトは小さい賽銭箱の格子にさして
立てておいたんです。気になって翌朝見に行ったらなくなってました。

家に戻る
つい3日前のことです。だいぶ寒くなってきまして、ウオーキングも
そろそろおっくうになってきましたが、毎日続けてました。その日は、
別に早足で歩いてるわけではないのに、どうも息が切れて、10分も
しないうちに胸が苦しくなってきたんです。これは風邪でもひいたのか
と思い、そこできりあげて家に引き返しました。へたり込みそうでしたが
なんとか家に着いて、玄関の戸を開けると、後ろ姿の人が廊下に立って
たんです。「え?」女房だと思いました。「お前・・・」女房はこちらを
見ないまま、廊下を滑るようにして仏間のほうに消えてったんです。
探しましたが、もう姿はありませんでした。動悸が治まらず、その後
病院に行ったら、不整脈があって手術になるかもと言われました。
もういい齢ですからね、どうしたものか考えているところなんです。

szgc




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