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アインシュタインの敗北

2019.11.06 (Wed)
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今回は昨日に引き続いて物理学のお話にします。アインシュタインは
当然、みなさんご存知ですよね。相対性理論を提唱したことで
有名であり、アメリカでは頭のいい人の代表のような形で
ジョークに出てきます。そうですね、一つだけご紹介しましょう。

天国へアインシュタインとピカソがやってきた。天国の門番は2人に、
入るためには本人であることを証明しろと言います。
そこで、アインシュタインは黒板に相対性理論の数式を書き、
ピカソはあのキュピズムの絵を描いて本人と認められます。

アルベルト・アインシュタイン
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それを見ていたのが、ジョージ・ブッシュ元アメリカ大統領(父親のほう)。
天国の門番が証明を求めると「私は大統領だ、見ればわかるだろう。
それより変な落書きしてた今の2人は何者なんだ?」と逆に聞かれます。
門番はにっこりと笑って、「ああ、間違いなくご本人ですね、どうぞ」
と、ブッシュ大統領を天国に入れてやるんです。

意味はわかりますよね。アインシュタインもピカソも知らないのなら、
ブッシュ本人で間違いないと、物理学も芸術も理解しない無教養を
バカにしてるわけです。まあそれでも、アメリカ人はブッシュ大統領が
天国に行けると思ってるんですね。もし天国があるとして、イラク戦争を
実行したブッシュ大統領が入れるか、自分は怪しい気もするんですが。

「テキサスの田舎者」のイメージが強いブッシュ大統領ですが、じつは英王室につらなる家柄
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さて、物理学の世界では「古典物理学 Physics in the Classical Limit」
という言葉があります。この言葉だけみれば、古代ギリシアの
アルキメデスあたりの物理学のことみたいですが、そうではなく、
量子論以前のものはすべて範疇に入ります。ですから、
アインシュタインの相対性理論も古典物理学なんです。

アインシュタインが量子論を懐疑的な目で見ていたのは有名な話で、
「神はサイコロをふらない」という過激な発言があります。
これは、量子力学が確率論を中心にすえていることを皮肉ってるんです。
量子論では、原子核のまわりの電子の位置は、
確率的にしか言えないとされています。

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電子は確率の雲のように広がって原子核を取りまいている。
その中には、存在する確率の濃い部分と薄い部分があるとされますが、
それがアインシュタインには気に入らない。確率ではない、           
もっとしっかりした法則があり、それが明らかになっていないため、
現状では確率論に頼らなくてはならないのだと考えたわけです。

まあね、アインシュタインの言うことはわからなくはありません。
この世界の法則はきちんと定まったものであると、どうしても考えたく
なります。このため、アインシュタインはことあるごとに当時の
量子論の研究者たちに難題をふっかけていきます。このあたり、
新しい考え方になじめない頑迷な老人という感じですね。

ニールス・ボーア
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量子論の中心となっていたのは、コペンハーゲンに住んでたくさんの
研究者を育てたニールス・ボーアです。ボーアは一般の人には
あまり知られていませんが、世界の物理学者に、
アインシュタインとボーアのどっちが偉大か聞くと、回答はかなり
わかれると思います。下手すればボーアのほうが多いかも。

ボーアは、先の「神はサイコロをふらない」という言葉に対し、   
「ミスターアインシュタイン、神が何をなさるかなど、
軽々しく語ってはいけません」とクールに切り返すんです。
アインシュタインがボーアのグループにぶつけた思考実験の一つに、
「EPRパラドックス」というのがあります。

ある粒子を2つに切り分けたとします。そこで粒子AとBができるんですが、
この2つは必ず逆向きのスピンを持っています。仮に上向きと
下向きにしましょうか。どちらがどの向きなのかは、観測してみるまで
決まりません。A・Bをそれぞれ観測せずに別の箱に入れ、
Aは地球、Bはロケットではるか遠くの星に持っていきます。

EPRパラドックス
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で、地球でAの箱を開けてスピンが上向きに決定される。その瞬間、
遠く遠く離れた星のBに情報が伝わり、Bのスピンが下向きになる。
あれ、変ですよね。相対性理論では、光速を超えて情報が伝わることは
禁じられていたはずです。アインシュタインはこのことを
「不気味な遠隔作用 spooky action at a distance」と表現しています。

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結論から言えば、この議論はアインシュタインの負け。
不気味な遠隔作用は実在したんです。ただし、地球とBの星にいる人間が
もう一方の情報を知るためには、電話をかけたりなど、
相対性理論で制限される手段をとるしかありません。

じつはこれ以外の論争も、ほぼすべてアインシュタインの敗北に
終わっています。アインシュタインが、ハイゼンベルグの不確定性原理に
いちゃもんをつけたときには、ボーアはなんとアインシュタインの
一般相対性理論を用いて、完膚なきまでに論破してるんですね。
これはアインシュタインにとっては屈辱だったでしょう。

上記のA・Bの粒子間に起きる現象を「量子もつれ quantum entanglement」
と言います。量子もつれは現在たいへんに研究されている分野で、
その理由はおわかりと思います。これを利用することで、
量子テレポーテーションが可能になるからですね。
最近のニュースとして、イギリスで量子もつれの様子が撮影されました。

さて、ボーアが偉大だったのは、「波の収縮」について積極的な解釈を
しなかったことです。観測がなされたときだけ、電子の雲が収縮して
位置が決まる。不思議ですが、それは人間の感覚で、この世はそういうふうに
できているので、無理に意味を解釈しようとしてはいけないというのが
ボーアの方針。(ボーアらの考え方をコペンハーゲン解釈と言います。)

世界初、画像にとらえられた量子もつれ(イギリス グラスゴー大学)
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ここで立ち止まらなかったため、量子論は大いに進展しました。
この理論を使って半導体などが開発され、現在使われているPC、
スマホ、その他、ほとんどの電気製品に量子力学が応用されて、
人間の暮らしはたいへんに進歩しましたが、これは、
ボーアがそのように方向づけしたためと見ることもできるんです。

さてさて、アインシュタインは相対論発表後、神の隠された数式を
見つけだすべく、相対論と量子論を結びつける研究を続けましたが、
成功することなく亡くなります。その後「超弦理論」なども出てきたものの、
現在でも明確な答えが出ないまま、量子論と相対論(重力理論)をつなぐ
研究は続いてるんですね。では、今回はこのへんで。



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