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猫ドアの話

2019.11.10 (Sun)
今晩は。橋本ともうします。主婦をしております。どうぞよろしく
お願いします。現在、自宅に主人と2人暮らしです。
主人は銀行員でしたが、退職して2年になります。
子どもは男女一人ずつ。どちらも就職して家庭を持ってます。
娘のほうは比較的近くに住んでますが、息子は他県に出ておりまして、
なかなか会えないんです。それでも、お盆や正月は孫を連れて
里帰りしてくれます。はい、孫は4人です。主人はずっと仕事一筋の
生活で、趣味は特別なかったんです。ですから退職後は、いっとき
気が抜けたようにぼーっとした状態でしたが、それだと早く
ぼけがくるということで、現在は地域のハイキングの会に入って、
ときおり近くの山に出かけたりしています。

それには、私もおともすることもありまして、お金の心配もなく、
特別に不自由のない老後ではあったんですが・・・
といっても、やはり一軒家に2人暮らしですから、寂しさを感じる
こともあります。それで、私のほうから猫を飼わないかって主人に
持ちかけました。インターネットで猫ブログなどを拝見し、
ああ、いいなあと思ってたんです。主人はもともと動物嫌いではなく、
猫はペット店で入手することも考えたんですが、
私としては、猫の品種には特別こだわりはなかったんです。
そうちに主人が、山の会のお仲間から猫の里親さがしの会の方を
紹介されまして、うちで申し込んだんです。審査などもありましたが、
特に問題もなく、1匹の猫が来ることになったんです。

和猫の雑種で男の子でした。生後3ヶ月で、ワクチンの接種などは
済んでました。白地に黒い斑のある毛の短い猫で、それは可愛かった
んですよ。名前は、主人はタマがいいんじゃないかと言ったんですが、
私が好きな西洋の小説の主人公の名前をとって、ミゲルにしました。
ミゲルは頭のいい子で、トイレのしつけなどもすぐに覚え、
粗相をすることはほとんどなかったんです。私にも主人にもなついて、
どちらの膝にも上がってきました。そうして2年が過ぎまして、
ミゲルの様子に変化があったんです。落ち着きがなくなり、
日中ずっと寝ていて、そのかわり夜は起きてて家の中をうろうろ歩き回る。
かかりつけのペット医の先生に相談したら、大人になってきたためで、
去勢するように勧められました。お願いするつもりだったんですが、

検査したところ、腎臓の数値がよくないことがわかったんです。
はい、麻酔に耐えられないかもしれないって。それで手術は
やめたんですが、ミゲルのストレスを解消するため、外に出して
みることになりました。ずっと家猫だったんですけど、サッシからいつも
外を眺めていて興味津々の様子でしたから。少しずつ外に慣らすと、
戸を開けてくれと頻繁に催促するようになり、これでは大変だと思って、
猫ドアを設置したんです。はい、サッシにはめ込む形のもので、
工事は必要ありませんでした。磁石がついてて すきま風は入らず、
それだけじゃなく、センサーもついててミゲル以外の猫は通れないんです。
ですから、ノラ猫が侵入してくるのを防げます。
ミゲルの首輪につけた小さなキーで判別するんですね。

最初のうちは、ミゲルが外に出ていって帰ってこないんじゃないかって
心配でしたが、食事の時間を覚えてて、必ず戻ってきました。
その点はよかったんですが・・・外からちよくちょく、狩りの獲物を
くわえて戻ってくるんです。体の小さい猫ですので、ネズミのような
大きなものはなかったですが、セミ、コガネムシ、トカゲ、
一度などは頭だけになった小鳥もありました。さも得意げな顔で、
私の前まで持ってきて落とすんです。気持ち悪かったですが、
叱るわけにもいかず、主人に頼んで捨ててもらってました。
それで、3日前の朝です。ミゲルがかなりのケガを負って帰ってきたんです。
背中の毛がむしられ、大きな裂傷がありました。家の外に
点々と血が落ちてたんです。すぐにバスケットに入れ、

ペット病院に連れていきました。診断の結果、血はかなり出ているものの
傷自体はそう大きくはなく、10針程度縫うだけで済んだんです。
私も主人もほっとしました。家に連れて帰ると具合が悪そうにしてたん
ですが、傷のせいだと考えてました。ためしにペットフードを出してみると、
食べようとしたので、ああ、大丈夫だなと思ったら、急にえづいて、
唾液とともに何かを吐き出したんです。そうですね、太さ2cm、
長さ3cmほどの黄色い三角形のものです。吐き終わると、
ミゲルはけろっとしたようにフードを食べ始めました。
主人がそれを拾い、しげしげと見て、「何だろうなこれは。動物の
 角みたいだ」って言ったんです。たしかに年輪のような細い線が
たくさん入っていて、角といえばそうも見えました。

「気味が悪いから捨てて」と頼んだんですが、主人は、「いや、植物とか
 じゃないし、やはり動物の角だと思うけど、こんな小さいのがついてる
 生き物なんていないよなあ。今度ペット病院に行ったとき、
 先生に見てもらおう」そんなことを言いまして、わざわざ洗って、
居間のテレビ台の上にあげておいたんです。その日の夜です。
ミゲルは私たち夫婦の寝室に寝てるんですが、シャーッ、シャーッという
声で目が覚めました。ふだんはまず鳴くことのない子なんです。
見ると、包帯を巻いた体で寝室の扉の猫ドアから出ようとしてたので、
止めなければと起き上がりました。ミゲルはトットッと、ケガをしてる
とは思えない動きでキッチンを通って玄関に向かったので、
「ミゲル、待ちなさい!」と声をかけ、廊下の明かりをつけました。

すると、玄関の猫ドアに何かがいたんです。・・・先ほど話しましたように、
猫ドアはセンサーでミゲルしか入れないはずなのに、
太い柔らかそうなものが、つっかえるようにはまりこんでいたんです。
うまく表現できないんですが、猫の胴体よりもやや太いくらいの毛虫。
色は濃い赤です。「何これ?」と思うと、足がすくんで動かなくなりました。
それはずるずると猫ドアを通り、1mほどの体が玄関に入ってきました。
頭らしき部分には、目も口も見あたらないんですが、上のほうに
片方だけの黄色い角が見えたんです。ミゲルが吐いたのと同じものに
思えました。しのび寄っていたミゲルがそれに飛びかかり、前足が触れた
と見るまに、それはバッと赤黒い煙に変わって散ったんです。
「え、え、生き物じゃない?!」煙はひとかたまりのまま、

大人の頭くらいの高さを漂い、ミゲルが飛び上がっても届きませんでした。   
煙は壁に沿って動き、寝室のほうに向かい、それをまずミゲル、
その後を私が追いかけました。それは開け放していた寝室の戸から
中に入り、寝ている主人の顔の上にわだかまりました。
ミゲルがだだっとベッドに駆け上がったとき、その煙は一瞬で、
主人の鼻と口にしゅっと吸い込まれてしまったんです。いえ、自分から
入ってったと言ったほうがいいのかもしれません。主人は半身を起こし、
大きくむせて何度も咳をしました。そこへミゲルが飛び乗り、
主人は咳き込んだまま、ミゲルを大きく突き飛ばしたんです。
ミゲルは壁にあたり、でも、さしてダメージもなく床に降り立って、
うなりながら主人のほうをにらみました。私はもう、

どうしていいかわからず、ただおろおろしているだけでした。主人は
ゆっくりベッドから降り、そのとき固く目をつぶっているのがわかりました。
そのまま歩いて居間に向かい、途中で、まとわりついてくるミゲルを
足で蹴りました。それで、何をしたかわかりますか。あのテレビ台に
取っておいた角を手でつかむと、自分の口の中に放り込んだんです。
ミゲルはじりじり後退りし、傷ついた体のまま玄関の猫ドアから
外に出ていってしまいました。主人は・・・急に力が抜けたようにくたくたと
その場に座り込みましたが、目を開けて、「あれ、俺、何してるんだ?」
そう言ったんです。はい、正気に戻ったんですが、あの不気味なものは
主人の体に入ったままです。あれからミゲルは戻ってこないし、主人にあの夜の
話をしても信じてくれず、困ってしまって、ここにご相談にうかがったんです。





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