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瘴気の話 2題

2019.11.28 (Thu)
今回はこういうお題でいきます。難しい漢字ですが「しょうき」と
読みます。簡単に言えば、「悪い気」ということです。
一口に悪いといってもいろいろですが、この場合は「病気になる」
という意味が強いでしょう。古代ギリシアで、医師の元祖とされた
ヒポクラテスは、「悪い土地」 「悪い水」 「悪い空気」が
病気の原因であると唱えています。この説はずっと長い間
信じられ、感染症の原因が病原菌であると判明するには、
19世紀、ロベルト・コッホが炭疽菌を発見するまで待たなくては
なりませんでした。現在でも、「霊は水辺に集まりやすい」などと
言われるのは、この瘴気説が一つの要因となっています。では、
今回は瘴気にまつわる話をいくつかお届けしましょう。

大学生 西根光輝さんの話
あ、どうも、現在 都内の大学の3年生です。うちの伯父さんが、
西荻のほうで整骨院をやってるんです。けっこう大規模な治療院で、
面積も広く、電気治療器とかいろんなリハビリの機械が
たくさん入ってます。1日、400人前後の患者が来るんです。
まあ、整骨院の場合、一人あたりの治療費が安いので、
数をこなさないと経営が成り立たない面があるんです。
伯父さんのところは、若い理学療法士を何人も雇ってますからね。
それで、俺ね、学校の長期休みのたびに伯父さんから治療院の
アルバイトに誘われてるんです。はい、毎回やらせてもらってます。
もちろん、俺には何の医療資格もないので、やるのはゴミ捨てとか
ダンボールの整理とかの雑用だけなんですが。

たぶんですけど、俺に小遣いをくれようと考えて誘ってくれてるん
じゃないかな。あ、それで、こないだの土曜日のことです。
土曜の午前中は開業してるんですが、それ終わって最後の患者が
帰った後に、伯父さんが、「あ、御神水なくなってるな。
 いただきに行かなくちゃならんが、この後予定が入ってる。
 前に行ったよな。あの水、ポリタンク2ついただいてきてくれんか」
こんなふうに頼まれたんです。一度伯父さんに連れられて行ったことが
ありますが、関東某県の山の中に毘沙門堂というのがあって、
崩れかけたような小さなお堂なんですけど、その後ろに小滝があり、
そこからくんだ水を御神水と言うんですね。もちろんタダという
ことはなくて、お堂の近くで暮らしてる堂守の人に、

いくばくかのご報謝を払わなくちゃなりません。伯父さんはいつも、
20Lのポリタンク2つで2万円払ってましたから、高い水ですよ。
で、「この水、何に使うんですか」って聞いたんだけど、
そのときは教えてもらえませんでした。前から気になってたんです。
水は治療院に運ぶから、伯父さんの生活用水というわけではないし、
治療院の水は、医療用の蒸留水をちゃんと使ってます。それで、
俺、免許持ってるんで、伯父さんのベンツにポリタンク積んで、
往復4時間かけて毘沙門堂まで行ってきました。ほとんど人には
知られてないみたいで、俺の他に来てる人はいなかったです。
その滝、すごくいいところなんですよ。岩の上に細かい水しぶきが
散って、天気のいいときには小さな虹がかかります。

神気が満ちているというか、心があらわれるというかね。
伯父さんから預かったお金を置いて治療院に戻り、そのときにまた、
「この水、何に使うんです?」って聞いてみたんです。そしたら、
「気になるか、じゃあ、来週のどっかで見せてやろう。
 本当はいけないんだが、お前は療法士みたいな顔してろ」        
こう言われました。それで、今週の水曜です。顔色のドス黒い
患者さんが初診で来られ、50代後半くらいの男性でした。
ものすごい肩こりがするって訴えで、肌脱ぎしたら、腕から背中に
立派な彫物がありました。そっち系の人だったんです。伯父さんは、
肩から首筋をさわって、「筋肉は固くなってないねえ」と言い、
その人を特別治療室に通したんです。

特別治療室は建物の最奥にある6畳程度の部屋で、診療用のベッドだけ
しか置いてません。あとね、なぜか壁の上のほうに神棚があるんです。
そのとき、伯父さんが俺に目配せしたので、医療スタッフのふりをして
ついていきました。伯父さんは患者に上半身裸になるよう言い、
うつ伏せでベッドに寝かせたんです。背中の彫物が全部見えましたが、
俺にはわからない、たぶん中国の絵柄です。屋根の上に坊主みたいな
人があがって暴れている。伯父さんは腰のあたりから指圧を始めましたが、
背中から肩へと進むにつれ、すごいことが起きたんですよ。伯父さんが
患者の背中を押すたび、彫物の人物の口から黒い煙が出るんです。
まるで映画のCGを見ているような感じ。その煙は粘り気があるみたいで、
流れていかず、一ヶ所にかたまって溜まってました。

1時間以上かけて整体が終わり、その人は「ああ、肩が楽になった。
 評判は聞いてたが、あんたすげなあ。また来るよ」そう伯父さんに言って、
会計のほうへ向かいました。それから伯父さんは、木のタライに水を
張って持ってきて、俺に、「これがこないだの御神水だ」と言い、
長い木の菜箸みたいなもので、治療室の隅で渦巻いてた黒い煙を
からめとってタライの水に入れたんです。そしたら、驚いたことに
タライの水が墨の色に変わり、しかも一瞬で煮え立ったんですよ。
ボコボコ泡立ってました。伯父さんは、「あの彫物が吐いたのは瘴気で、
 それが肩こりの原因になってた。まあ取れるだけは取ったが、
 しょせんは対処療法で、あの患者が生き方を変えなければ、またすぐ
 元に戻るな。この水は医療廃棄物として処理する」って言ったんです。

理容師 塚田浩さんの話
あ、どうぞよろしくお願いします。僕、理容師になって6年目です。
いや、まだ自分の店は持てなくて、チェーンの格安カットの店で
働いてるんです。仕事はきついですよ。カットだけだと1300円
なんで、お客さんはひっきりなしですから。理容師の仕事はずっと
立ちっぱなしなんで、腰が痛くなるんです。
まあ、職業病と思ってあきらめてますけど。それでね、2ヶ月くらい
前に、本部からの指示で店舗の移動があったんです。あんまり
お客さんの数が多いんで、広い場所に移って、理容椅子の数を
増やしました。新たに何人か人も雇ったし、僕の給料も少しだけど
上がったので、それはよかったんですが・・・ はい、新しくなった
店は、2軒続きて飲食店が入ってた建物を本部が買い取ったんです。

そこを理容店に改築した。前に入ってた飲食店はどっちもつぶれた
みたいです。でも、場所が悪いからということでもなく、
理容店のお客さんはたくさん来ました。けどねえ、さっき話した新人、
3人だったんですが、すぐ2人辞めちゃったんです。
店長が理由を聞いたら、店の待遇には文句ないけど体調が悪くなった
ってことで。店長は、今の若いもんはこらえ性がない、って怒って
ましたが、じつは僕もね、そこに移ってから体の調子がよくなくて、
いつも肩がじーんとしびれたように重いし、腰の痛みもひどくなった。
僕だけじゃなく、他の同僚も同じです。それとね、理容店だからたくさん
照明をつけてるんだけど、室内がどうも暗く感じる。
でも、前面がガラスサッシで、太陽光も十分入ってるはずなんです。

なのに、室内全体がもやがかったみたいで。で、そのうちに、
同僚の一人が、黒い煙が流れてるって言い出して。けど、店内にこげてる
ものなんてないし。僕もそれ見たんです。まるで水の中に墨を流した
みたいな煙、それがゆっくり漂ってる気がして、目をしばたいて
もう一度見るとなくなってる。で、みなで店長に訴えました。
すると店長も、「いやな、俺がそんなことを言うわけにはいかないから
 黙ってたが、たしかにここの店、なんか変だ」って。
で、店長は「とりあえず塩でもまいてみようか」と言い出し、
コンビニで食塩一袋を買ってきて、「じゃあ皆で、自分が嫌に感じる
 場所にまけ」そしたらですよ、全員が同じ北のほうの隅に集まって、
上に向けてつかんでた塩を投げたんですが、何が起きたと思いますか。

なんか黒い太い1mほどの毛虫みたいなのが落ちてきたんですよ。
それはフローリングの床でうねうねと動いてましたが、
店長が袋ごともってきた塩をドバッとかけると、のたうって消えました。
いやあ、すごく気持ち悪かったです。とてもこんな店では働けないって
言う同僚が何人も出て、店長が本部にかけ合って、神職が
お祓いに来たんです。いや、そのときは店の中には入るな
って言われてたので、その場で何が起きたのかはわかりません。
ですが、1日がかりのお祓いの後、おかしなことは起きなくなりました。
ええ、すごく繁盛してますよ。店長はスタッフ会議のとき、「神主さんの
話では、瘴気というものが溜まりやすい場所だということだったが、
解決できたそうだ、これからも頑張っていこう」こう言ってました。





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