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喰う場所の話

2019.12.10 (Tue)
これは、当ブログの話にたびたび登場していただいているKさん
から聞いた話です。初めて読まれる方のためにいちおうご紹介すると、
50代の実業家で、自分(bigbossman)よりずっと年上です。
貸しビル業、飲食業なんかを営んでて、年収はおそらく数億。
また、Kさんは霊能者でもあり、全国各地をオカルト事件解決の
ために飛び回ってますが、交通費などを含めて謝礼を受けたことは
いっさいありません。すべてボランティアなんです。
いつものように、大阪市内のホテルのバーで話を伺いました。
「Kさん、最近ずっと大阪にいなかったですよね。どこに行ってたんです?」
「ああ、ちょっと難しい案件があってな、あちこち飛び歩いてた」
「例によってオカルトなことですよね」 「ああ」

「ぜひ話をお聞かせください」 「案件はまだ途中だからオチはないし、
 今、話しても消化不良になると思うが」 「ぜひぜひ」
「じゃあ。お前、ブログの怪談で、人がいなくなる話をけっこう
 書いてるよな」 「そうですね、多いと思います」
「人がいなくなることを一言で何という?」 「うーん、失踪とか」
「失踪でもいいが、それだと自分の意志でいなくなったって
 ニュアンスも含まれてるな」 「ああ、そうですね、じゃあ行方不明」
「うん、それでもいいが、この世から完全に消え去って、しかも
 その人物についての記憶、あるいは生活していた証拠。
 そういった類のものがすべてなくなってしまう、ということだったら」
「うーん、消滅になるでしょうか。たしかにねえ、
 
 その手の話も書いてますよ。けど、完全消滅して、この世にいた痕跡が
 一つもない、誰の記憶にも残ってないってことなら、そもそも
 話にならないんじゃないですかね。わかりようがないから」
「そうだな。例えば、自分には弟がいたような気がするけど、あったはずの
 勉強部屋も弟の持ち物も何もない。家族も弟なんていないと言う。
 学校へ行っても先生方も知らないし、弟のクラスには机もない。
 そういう場合、そもそも自分には弟がいたという記憶のほうが
 何かの間違いだというのが普通だろ」 「そうです。それでもまだ、
 記憶が残ってる人物が一人でもいればいいんですが、もし覚えてる人が
 誰もいなけりゃ、始めからいないのとまったく変わりないってことですよね」
「ある人物が完全にこの世界から消滅する、もしそういったことがあるとして、

 bigbossman、その原因は何だと思う?」 「・・・そうですね、
 まず一つ目は神の介入でしょうか。神というと誤解を招くので、
 運命と言ってもいいかもしれません。例えば、自分は原稿書きですが、
 文章に ある言葉を使って、これはダメと思って消したとします。
 そうすると出来上がった文章にその言葉はないし、消したことを覚えてるのも
 自分だけですよね。その文章がこの世界だとすれば、自分にあたるのが神・・・」
「ああ、面白い例えだな。けど、コンピュータの履歴には、その消した
 一連の動作が残ってるだろ」 「そうですね」 「他には?」 
「平行世界でしょうか。平行世界がもしあるとするなら、その数は無限大という
 説もありますよね。とすれば、最初から自分の弟がこの世に生まれなかった
 世界もあるわけで、そっちと何らかの形で世界が入れ替わったとか」

「うん、それも可能性としてはあるわな」 「具体的にどういう事件なのか
 話してくださいよ、このままじゃブログの読者は読むのやめちゃいます」
「ある青年から話を聞いたんだよ、場所は言えない。古い家柄の人でな、
 結婚が決まって、檀家になってる寺に報告に行った。そのときに、
 住職に家系図を出してもらったんだな。青年の家では、家系図を
 過去帳とともにお寺に保管してもらってるんだ」 「うわ、もとお公家さん、
 お殿様とかですね」 「そう。青年は家系図を見るのはその時初めて
 だったが、自分の横にもう一つ名前があったんだ。両親の間の子ども
 だから、彼にとっては弟になる。けど、彼は生まれたときからずっと
 一人っ子なんだよ」 「うーん、で、両親はその名前に心あたりがないんでしょ。
 それを書いたのは誰です?」 「寺の先代の住職だが、もう亡くなってる」

「へええ、わくわくする話ですね」 「もちろん親戚にもその名前を知ってる
 者は誰もいない。役所にある戸籍には当然ながら名前はない」
「プログラムのバグみたいですね」 「でな、その青年とは表の仕事の
 ほうの知り合いで、ある会合の後に世間話みたいな形で聞いたんだ。
 その青年のほうでも、何か実害があるわけでもないし、話のネタとして
 出しただけで、正式な調査依頼じゃない」 「でもKさんは興味を持った、と」
「まあな、だが、手がかりは何もない。bossman、お前ならどうする?」
「・・・わかりません」 「まあ、お前は霊能者なんて うさん臭いと考えてる
 みたいだが、俺には知り合いがたくさんいてな、日本でおもだった人は
 だいたい懇意にしてる」 「知ってます」 「俺の専門はお祓いで、
 霊視はほとんどできないんだ。最近、サイコメトラーっていうのが
 
 流行ってるのは知ってるな」 「マンガがありますね」
「その手の、物に残っている情報を読み取る力を持っている若い人の
 ところに、借り出した家系図を持っていって見せた」 「それで?」
「そしたら、系図のその部分に手をあてて目を閉じ、しばらく霊視を行って
 いたが、心臓の鼓動が聞こえる、と言うんだな」 「ドキン、ドキンという?」
「そう、それと、ものすごい空腹感」 「うーん、餓鬼関係の何かなんで
 しょうか」 「俺も最初そう思ったが、違ってた。そのサイコメトラーは
 目を開けて、かすかに家のようなものが視えるって言うんだ。
 で、期待はしないでもらいたいが、少しこちらで調べてみるとも。
 こんな雲をつかむような話で手間をとらせるのは申しわけなかったんで、
 けっこうな額の謝礼を置いてきた。それがよくなかった」

「どういうことです?」 「2ヶ月ほどして、その人亡くなったんだよ。
 ある田舎の駅のベンチに座ったまま事切れてるのを駅員が見つけた」
「う」 「でな、死の間際に俺にメールを出してたんだよ。それにはたった
 一言だけ、喰う場所 ってあった」 「で?」 「死因は心不全。
 葬儀に参列したら、奥さんから封筒に入ったメモリーカードを渡された。
 亡くなったときに持ってたもんで、表に走り書きで俺の名前が書いてあった」
「で?」 「カードには画像データが4つだけ。一枚目は、丘の上の旧家を
 下から仰いで撮ったもの。次がその家の門の画像。朽ち果てて、長い間
 人が住んでないのがわかった。3つ目が家の中だ。襖が開け放たれた
 日本間が5つも6つも並んでる。昔の庄屋屋敷だと思った」
「で?」 「最後が一室の襖を外から撮ったもの。赤黒い無地の襖で、
 
 これは想像だが、サイコメトラーはその襖、開けてない」 「それでも
 亡くなってしまった。・・・Kさんのことだから、その画像の家、特定した
 んでしょ」 「ああ、これも場所は言えないが、山間部にある廃村だった。
 その村の最後の一家がいなくなったのは昭和30年代の終り、もう60年
 ちかい昔だ。その後は朽ち果てていくままで、再開発にもかかってない。
 そこの県では積極的にかかわろうとしてないんだな。戸数は80ほどで、
 画像にあったのは、やはり昔の庄屋屋敷で、その家の血筋は絶えている」
「サイコメトラーは家の中には入ったんですね」 「・・・俺の責任だよ。
 だから俺も行くことにした。それが2週間ばかり前の話」 
「うわあ、よく生きて出てこられましたね。もう最凶と言っていいところでしょ」
「ああ、だから、考えられるかぎりの霊的な護りを実行した」

「お一人で行ったんですよね」 「もちろん、他人を巻き込むことはできない。
 車で行ったんだが、その廃村に入ると とにかく蔦がすごかった。
 あらゆるところが蔦で覆われて。あと、道の途中で舗装が切れてた。
 問題の家はすぐにわかった。集落を見下ろせる丘の上にあったから」
「で?」 「坂はとても車で入れないんで、歩いて登って門の前に立った。
 門も家の玄関も開け放たれてたよ。まるで口を開いてるみたいに」
「うう」 「中に一歩入った途端、くらっとめまいがした。視界がゆがむような
 感じも。それとその家にあるもの、それが腹が減っていると感じた」 「で?」
「中はホコリが積もっていたが、その上を踏んだ足跡がかなりの数あった。
 足跡は重なってて、さまざまな時代のものが交錯してたな」
「で?」 「ドギンという音が頭の中に響いた。俺の心臓じゃない。

 おそらくはその家にあるものだ。目覚めさせてしまったと思った。
 だいたい旧家の構造はわかってるんで、急いで仏間を探したんだよ」
「ありましたか?」 「ああ、意外なことに、その家の中央部だった。襖はあの画像と
 同じもので、全部閉まってた」 「で?」 「開けた。中は真っ暗でな。どこからも
 光が入らないので当然だが、床が何かで埋まってるように見えた。懐中電灯で
 照らすと、全部が位牌だった。腰くらいの高さのある立派なもの。12畳ほどの床が
 すべて位牌、奥に扉が閉まった巨大な仏壇」 「で?」 「そのときにまたドギンという
 音を全身に感じた。もういられないと思って逃げたよ。・・・今、複数の神社に通って
 お祓いを受けてる。あの位牌の中に俺も入るのはご免だ。おそらく家系図の名前の
 人物も、いつの時点かに、理由はわからんがあそこに入り、喰われて存在そのもの
 が消えた。・・・そこの県の上層部に話を通して、廃村の処置を考えてもらうつもりだよ」
 

 
 

 
  
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