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和楽器のオカルト

2019.12.11 (Wed)
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今回はこういうお題でいきます。みなさんの中では和楽器というと、
尺八や三味線を思い浮かべる方が多いんじゃないかと思いますが、
それらは比較的歴史の新しいものです。今回はもう少し古い、
琵琶や笛などにしぼって書いていきたいと思います。

日本には「玄象(絃上)」という琵琶の名器、「葉二(はふたつ)」
という笛の名器があります。どちらも平安時代のもので、
夢枕獏先生の『陰陽師』、あるいはそのアニメ作品でご存知の方も
多いでしょう。玄象はおそらく中国から来たものでしょうが、
葉二は鬼の所有物だったのを手に入れたという話になっています。

また、この2つの楽器、どちらも平安京の門と関係があります。
さて、この当時、楽器は大変貴重なものであり、実用品であると同時に
工芸品でもありました。高位の貴族でなければ手に入れることが
できなかったんですね。(もちろん、打楽器や竹笛のような
簡素なものは、庶民でも楽しむことができました。)

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そこで、楽器自体が命を持つという話ができていきます。
まず、製作者の念がこもっています。また、名器は代々受けつがれ
ますので、歴代の所有者の念も入り込む。さらに天地の気を集めて
楽器が生命を持ち、人格をそなえるようになっていく。

そして、名器は誰もがほしがるため、盗まれてしまいます。
盗人は人間であることも、鬼であることもあったんです。まず玄象の
話から見ていきましょう。『今昔物語』には、村上天皇の御世、
玄象の琵琶はいつのまにか姿が見えなくなってしまいます。
ここで登場するのが、夢枕作品で安倍晴明の相方を務める源博雅です。

博雅が一人、清涼殿で宿直(とのい)をしていると、かすかに
琵琶の音が聞こえてくる。内裏の外に出ると、それは朱雀大路の
南の方角からしている。そしてとうとう、南のつきあたりの
「羅生門」まで来るんですね。芥川龍之介作品でも有名な、
都の外れの門です。(下図参照)

平安京 クリックで拡大できます
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博雅は門の下でひとしきり琵琶の音を聞いてから、落ち着いて門の
上の者に話しかけます。「どなたが弾いているのでしょう。玄象の
音と聞きわけましたが、天皇はこの琵琶がなくなったことで
たいそう心を痛めています」すると、琵琶に縄がついてするすると
下がってきたということです。羅生門の鬼が盗ったんですね。

また、玄象は、弾き手が下手だと弦を弾いても鳴らない。手入れが
悪くてホコリが積もっていても鳴らない。あるとき内裏でボヤ騒ぎがあり、
みな慌てて、玄象を運び出すのを忘れたが、騒ぎがおさまってみると、
玄象はひとりでに庭に出ていたとも記されています。



後醍醐天皇の時代、玄象は人間の泥棒によって実際に盗まれています。
この頃、玄象は三種の神器と同様に天皇の即位に必要なものでしたので、
六波羅探題の武士が必死に探して犯人を捕らえ、転売されていた
玄象は3年ぶりに内裏に戻ることになります。

あとはそうですね、「秘曲」というのがあります。源博雅が、
盲目の琵琶の名手、蝉丸の庵に3年間通いつめ、「流泉」 「啄木」の
秘曲を伝授されたという話が残ってます。名器によって演奏される秘曲は
さぞ素晴らしいものだったでしょう。鎌倉時代になると、琵琶法師が
この楽器を持って日本各地で「平曲」を語るようになります。

琵琶の名手だった蝉丸
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さて、ここまででだいぶ字数がかかってしまいました。葉二の話に
移りましょう。短い横笛ですね。最もくわしく書かれている、鎌倉時代の
説話集『十訓抄』では、源博雅が「朱雀門」の下で自分の笛を
吹いていました。朱雀門は内裏からすぐ近くにある門です。
すると、自分と同じような直衣(のうし)姿で、やはり笛を吹く者がいる。

博雅は吹くのをやめ、その音に聞き惚れます。そのときは
それで終わりましたが、月の明るい夜に博雅が笛を吹いて歩くと、
必ずその男と出会うんですね。その笛のあまりの音色に、博雅は
勇気を絞って声をかけ、自分の笛と取り替えてもらい、吹いてみると
やはり素晴らしい。そして博雅は男に笛を返しそびれてしまいます。

源博雅と鬼


それ以来、笛は宮中にありましたが、時がたって博雅は亡くなり、
誰もその笛を吹けるものがいなくなりました。そこで、浄蔵という名の
笛の名手がいることを知った帝は、この笛を浄蔵に吹かせてみた。
すると博雅の音色に劣らない素晴らしい音色だったんです。

帝は浄蔵に、博雅と同じように夜間、朱雀門の下で一人で吹くように
命じます。浄蔵が命にしたがってその笛を朱雀門の前で吹くと、
楼上から「なんと逸品かな」と大きな声が降りてきました。
鬼であると悟った浄蔵は、ただちに内裏に戻って帝にそれを報告し、
笛は、「天下に二つとない」という意味の葉二と名づけられました。

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楽器とは関係ない余談ですが、浄蔵は天台宗の僧で、『扶桑略記』では、
菅原道真の怨霊に祟られている藤原時平のために祈祷しに行くと、
時平の両耳から竜と化した道真が出てきたので、
調伏を辞退したと書かれています。管弦の道だけでなく、
天台密教を極めた高僧だったようです。

さてさて、ということで、玄象と葉二の話だけで終わってしまいました。
続きはいずれ書きたいと思ってます。平安時代には、
「百鬼夜行」というオカルト現象がありましたが、
その絵巻の中には古くなった琵琶が化けた付喪神もいるんですね。
(下図)では、今回はこのへんで。

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