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死に婆の話

2019.12.25 (Wed)
じゃあ話していきます。口下手なもんで、何かわからないとこが
あったら、途中でも質問してください。・・・あれはもう40年以上も
前のことになります。私が中学1年のときでした。
6月でしたね。中学に入学して最初の定期テスト、1学期の
中間テストのとき。時間も覚えてます。午後になって最初の科目、
理科のときでした。ほら、最初のテストだからあんまり範囲が
広くないんですよ。だから問題解き終わって、20分くらい時間が
あまってたんです。テスト用紙に落書きなんかしちゃいけないし、
もちろん寝たりもできないし、ぼんやりと窓の外を見てました。
1年の教室は3階でした。でほら、テストのときって、
カンニングができないように、他の列と机離すじゃないですか。

私の机はいちばん窓側で、板壁にびったりくっつけてたんです。
手を伸ばせばサッシにさわれるくらい。窓は開けてなかったです。
まだ暑い時期じゃなかったし、用紙が風で飛ばないように。
でね、当時の中学校の建物はまだ新しくって、外壁に
装飾っていうか、それともパイプとか通ってるのかわからないけど、
下から上までずっと続くでっぱりがあったんです。
幅が40cmくらいかなあ。そこにちらっと動くものが見えて。
何だろ、と思ってよく見たら、人間だったんです。
女の人で、かなり年上に見えました。中学生からしたらお婆さんって
感じに。その婆さんが、両手両足で でっぱりをはさんで
校舎の外壁を登ってる。いや、さすがにありえないと思いましたよ。

でも、現実に目にしてるわけだし。はい? ああ、その婆さん、
まだ窓より2mくらい下にいて、顔もはっきり見ました。
髪は白髪交じりで、今考えるとパーマかけてたと思います。
顔にはかなりしわがあった印象があります。え、着てるもの?
着物だったと思います、灰色っぽい。え、透けたりしてなかった
かって?いや、そうは見えませんでした。普通の人間と同じ。
それでね、婆さん、表情が必死だったんですよ。あんなとこ普通は
登れませんからね。ずり落ちていかないように全身に力を込めて、
少しずつ校舎を登ってくる。いや、どうしようかって思いました。
監督に来てる先生に知らせればいいのかどうか。
そのあたりもよくわかんなかったんですけど、ほら、テストのときって、

問題にわからないとこがあったり、消しゴムを落としたとかでも、
自分で拾わないで、手を上げて先生に拾ってもらうじゃないですか。
そうしようかと思ったんです。でね、もう一度婆さんを見たら、
婆さんも下から私のほうを見上げてる。完全に目が合ってしまったんです。
あ、婆さん、俺が見てることに気がついた。それと、その目がね、
すごい憎しみがこもったような感じで。で、思い切って手を上げたんです。
先生は何か書類を書いてたけど、ややあって私に気づいて、
机の近くまで来て小声で、「どうした?」って聞いたんです。
私それで、窓の外、婆さんのほうを指差したんですよ。先生は、
「え、外に何かあるのか?」とまた聞いて、俺の指の先のほうを見てるのに
驚いてなかったから、そのときに、もしかして婆さんが見えてないのか

って考えたんです。それでたしか小さい声で「お婆さんが」みたいなことを
言ったと思います。けど、先生はまったく意味がわかってなくて、
「具合が悪いのか? あともう少しでテスト時間が終わるけど、保健室に
 行くか?」そう聞いてきました。で、私、「大丈夫です」って答えて、
先生は教卓のほうに戻ってちゃったんです。その間に、婆さんはかなり登ってて、
教室の窓に手がかかるくらいのとこまで来てました。そこの教室はベランダとか
なかったから、せまい窓枠に立って、サッシにびったりと顔をくっつけて・・・
それでも、私以外に窓のほうを見てる生徒はいなかったんです。もうほとんどの
生徒はテストは書き終わってたと思いますけど。婆さんはあれほど必死に登って
きたのに私を見てにかっと笑い、そのままの姿でふーっつと窓をすり抜けて・・・
ええ、窓枠は腰くらいの高さなんで、婆さんは宙に浮いてたってことです。

そこで、これは人間でない化け物なんだ、じゃなきゃ私が幻覚を見てる、
そう考えるしかなかったです。そのときに、もし婆さんが私のほうに
向かってきたら、たぶん席を立って逃げ出してたと思います。
ところが、婆さんは立った姿勢のまま、ツーっと滑るように動いて、
前のほうの席の山根って男子の頭を片手でさわったんです。
それから後ろに向かい、佐藤、小橋って生徒の頭も。つまり男子3人の
頭に手を触れ、やっぱ通り抜けるようにして廊下側の窓から
出ていきました。呆然としてると、チャイムが鳴って、その時間は終わり。
テストが回収された後、先生が私の名前を呼んで、
「さっきからどうした? 具合が悪いなら無理するなよ」って言ってきて。
やっぱ見えてなかったってわかったんで、「大丈夫です」としか

言えなかったです。その休み時間に女子の生徒が一人、私のとこに
来たんです。小学校が違う、それまで話したことがない子でした。
その子は三村っていうんですが、私に「さっきお婆さんいましたよね」
って言ってきたんです。「あ、見えてた?」 「浮いてましたよね」
「ああ、浮いてて、頭さわって出ていった」 「あれ、何ですか?」
「わからない、妖怪かなあ」こんな会話をしたと覚えてます。
すぐに6時間目が始まったんで、それだけでした。で、その後ね、
しばらくの間 窓の外が気になってたんですけど、見たのはそれが
最初で最後でした。三村さんともその話はしなかったです。で、
さっきね、山根、佐藤、小橋って3人の頭をさわったって言ったでしょ。
私が2年になったとき、山根が亡くなったんです、交通事故で。

違うクラスになってたので詳細はわからないんですが、部活の帰りに
自転車でトラックに接触したってことでした。ひっかけられた程度で、
そんときはたいしたことがないと思って家に帰ったのが、倒れたとき
地面に頭を打ってたんですね。2日後に脳内出血で手術したけどダメで。
でね、その後のことはわからないんです。私、3年生の1学期、父親の
都合でかなり離れた県に転校したんです。それからは連絡もとってないし、
そこの県に戻ることはなかったし。それが、今年のお盆前です。約30年ぶりに
その中学校の同級会の通知が来たんです。私はその後、何度も住所を
変わってるんで、よく所在がつかめたなと思いました。それとね、
ふつう同級会って言ったら、中3のときのクラスですよね。それが中1の、
婆さんを見たときのやつら。で、はがきの幹事代表名が三村って女性名に

なってたんです。珍しいでしょ。あの三村さんだってことはわかったし、
テスト中のときのことも思い出しました。でも、クラス委員とかでも
なかったし、旧姓で出してるのか、それともまだ独身なのか。時間は
あったのでともかく行ってみることにし、30年ぶりでその市を訪れました。
会場は駅前の居酒屋で気のおけないところ。当時の担任は来ておらず、
クラス40人中で出席は20名に欠けるくらい。
みな、何で今ごろ中1の同級会をやるのかって言い合ってました。
でも、それなりに盛り上がったんですよ。1次会のなかばで、三村さんが
私にとこに来て、「テストのときにお婆さんを見たの覚えてる?」と聞いたので、
「ああ、もちろん」と答えると、「私ね、最近になって何度か顔、整形してるの。

 だんだんあのときのお婆さんに似てくる気がして怖くて。」って。でもまだ
40代だし、あのときのお婆さんはもっとずっと上、70歳過ぎてたと思います。
ただね、そう言われてみると似ているような気もしたんです。でも、
そんなはずはないですよね。なんで三村さんが婆さんになって、
中学生の自分の前に現れるのか、わけがわからない。だから、
「気のせいじゃないかな。似てないですよ」と言っておいたんですが・・・
それから、婆さんがどうして私ら2人だけにしか見えなかったのか話したけど、
結論なんて出しようがありません。それと、頭をさわられてた佐藤と小橋ね。
出席してなくて、誰も話題に出さなかったんだけど、聞いたら、20歳過ぎてすぐ、
ありえないような事故で2人とも頭部をケガして亡くなってたんです・・・





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