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カウントダウン

2014.01.09 (Thu)
コンビニでバイトしてるんだけど変なことがあった。
俺のシフトは週4日、午後の10時から朝の5時まで。
もう1年近くなるな、俺にしては続いているほうだ。初めは眠かったが、
それももう慣れた。で、2ヶ月くらい前から妙な客が来るようになったんだよ。
男で、歳は50代くらいだと思う。それがいつも同じ服装をしているんだ。
黒のニット帽に黒のスエットの上下。
顔はもみあげが長くてあごひげと鼻ひげがつながってる。

こう言えばサンタさんみたいだと思うかもしれないが、
サンタとは違ってひげは黒々してる。だから全体が黒って印象なんだけど、
わずかにのぞいてる目の下のあたりがたるんでしわだらけなんで、
50代くらいかなと。あと目の色が金色っぽいんで、
もしかしたら外国人の血がまざってるかもしんないと思った。

その人がここ2ヶ月、毎日来るんだよ。
それも深夜の3時きっかりに店に入ってくるんだ。
んで、発泡酒1本とハンバーガーを1個買う。ハンバーガーはレンジで温める。
千円札を出すんでお釣りを渡す。小銭だったことは一度もない。
口はほとんどきかないな。まあここまではそれほど変というわけでもないだろ。
来る時間が同じなのは仕事の関係かもしれないし。

ただ、バーガーをレンジで温めて待ってもらっている間に、
何かブツブツつぶやいてるんだ。この人が来るようになって3日目くらいに気づいた。
それで気になって何気なく耳をすましてたら数を数えてるんだ。
「108、107、106、・・・」というカウントダウン。
どうやら店に入ってくる前から数え始めてるっぽい。
で、俺が袋に入れた商品を渡すと、数えるのをやめて帰っていく。
だいたいそのあたりで90くらいになってることが多いな。

まあ神経質な人なのかもしれないし、単にヒマをまぎらわすためかもしんないけど、
やっぱ気になるんだよ、もしカウントが0までいったらどうなるか・・・とか。
週の残り2日を深夜帯でやってる人にも聞いてみた。
そしたらやっぱり午前3時ぴったりに来るということだ。
数を数えてるのも気づいてたよ。「近くの公営住宅から来てるんじゃないかな」
と言ってた。で、つい3日前のこと。その人が時間どおり来た。

いつものように他の商品には目もくれず、
入ってくるなりほぼ最短距離で発泡酒とバーガーの棚を回ってレジに向かう。
ただその日は他にカップルの客がいてタッチの差で前に並んだ。
カップルはいろいろ買い込んでたんで時間がかかって、
その人が千円札を出したときによく聞いたら、カウントが70を切ってたんだ。
そしたら、いつもは後ろに手を回して立ってるだけなのに、
そのときは両腕を横に出して、てのひらを握ったり開いたりしてた。

それでもバーガーの温めは30秒だからカウントは0までいかないと思って、
まずお釣りと領収書を渡した。そのとき、レンジで「パフッ」という音がした。
バーガーを温めるときには包装にちょっと切れ目をいれなくちゃならないんだけど、
それを忘れてたんだな。出してみると案の定、
包装がはがれてパンがむき出しになってた。
しょうがないから「失礼しました。今お取り替えしますので」
そう言ってその人の顔を見たら、泣いてるんだよ。

声は出さずに、両目からはらはらと涙をこぼして、
そのしずくがひげにまで伝わってる。泣きながつぶやいているカウントは28・・・
俺は脇の戸から出て同じバーガーを持ってきてレンジに入れたが、
その間にその人のカウントが0までいってしまったんだ。
でも・・・特に何が起きたわけでもない。その人は下を向いて黙って涙を流してる。
俺はすんごく悪いことをしたような気になってさ。
「申しわけありませんでした」と言って商品を渡した。

その人は袋を受け取ると、とぼとぼとした足どりで店を出て行ったが、
数秒して、店の外で「パフッ」という音がした。
店の中にいても聞こえたんだから、実際はけっこう大きな音だったと思う。
外に出てみたら、今さっき出て行ったその人の姿はなくて、
コンビニの敷地から道路に出るあたりに、大きな液体の染みが広がってた。
染みは街灯に照らされて、毒々しい緑色に見えた。
その横にコンビニ袋が置いてあって、バーガーと発泡酒が入ってた。
おととい、昨日とその人は来ていない。もう来れないんだと思う。





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