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眷属の話

2020.01.16 (Thu)
あ、どうも、辻と申します。よろしくお願いします。
今年、大学の4年生になります。あ、就職のほうはなんとか
内定をもらってます。それで、大学は東京ですけど、
実家は〇〇県の□□市なんです。ええ、北関東の。
そこにある神社のお使いの話をします。少し調べたんですけど、
お使いは、正式には眷属って言うらしいですね。
その神様と関係の深い動物の場合が多いみたいです。
ふつうの小さい神社は、境内にある狛犬が眷属を務めてるん
だけど、大きな神社だと、鹿、猿、狼、龍なんかが眷属に
なってることもあります。そういう場合、狛犬のかわりに
その眷属の像が造られてたりするんですね。

ああ、すみません。こういう話は、ここのみなさんならよく
ご存知ですよね。その神社、名前を出すのは控えさせていただき
ますが、眷属がカラスなんです。これは神社の本社がそうだから
だと思います。ほら、日本神話で、神武天皇の道案内をしたという
三本足の八咫烏。その神社は、摂社の中でも大きなほうで、
海沿いにあるんです。まわりは運動公園になってて、
野球場、サッカー場なんかが並んでる中に、けっこう広い杜が
残ってて、その中に。はい、僕の実家も比較的近くにあります。
ですから、子どもの頃からよく両親にその神社に連れてかれました。
産まれて間もない赤ちゃんの頃から。七五三もその神社で
やりましたし、小学生のときはお祭りのお神輿も担いでました。

で、いつからなのかなあ。はっきりとはわからないんですが、
その神社の大鳥居の上に、巨大なカラスがいつもとまってることに
気がついたんです。そうですね、大きさは2m近くあったと思います。
人間の背丈より高く、ふつうのカラスの数十倍大きい。
まだ幼児だったときに、そのときいっしょにいた父親に、
「あそこに大きなカラスがいる」って言ったんです。
鳥居を見上げた父親は、「そうか、いないように見えるけどな。
 ここの鳥居は、カラスがとまらないことで有名なんだ。
 カラスたちは神様のお使いだから、神社の神様に遠慮して、
 鳥居にとまらないようにしてる」だいたいこんな内容を、小さな
子どもにわかるように説明してくれたんです。

はい、そのカラスが見えるのは僕だけみたいなんですね。
このことは母親にも、小学校のときの友だちにも話したんですよ。
でも、誰もが「いない、見えない」って。ただ、その神社の神主さん
だけは、僕の言うことをわかってくれました。
いつだったかのお祭りのとき、神主さんが近くにいたんで、
「鳥居に大きなカラスがいつもいますよね」って言ってみたんです。
そしたら、神主さんはすごく驚いた顔になって、「ほう、ボク、
 それが見えるのかい」って。それで、初めて自分以外にも
見える人がいるのかと思って、息せき切って話したら、
神主さんは「いやあ、残念ながら私には見えないんだよ。
 ただ、いることは知ってる。ボクのほうが正しいんだよ」

そして僕の頭をなでてから、続けて「でもそれは、あんまり人には
 言わないほうがいいな。ほとんどの人には見えないんだから」って。
それからは人には話さないようにしてました。どうして、
そのカラスが僕だけに見えるかの理由はわからないです。
うちの父方の祖父は、その神社の氏子代表の一人だったんです。
でも、早くに亡くなってて、父親の代からは一般の氏子に戻って
ました。もしかしたら、おじいさんにも見えたんじゃないかなんて
思うこともありますが、わからないですね。他には心あたりはないです。
あ、肝心のカラスのことをあんまり話してないですね。
鳥居に向かって、中央やや右寄りの同んなじ場所にいつもいました。
それで、ピクリとも動きません。羽づくろいどころか、

頭を動かすことさえしなかったです。まるで彫像みたいなんだけど、
羽毛や目の光なんかを見るかぎり、生きてるものとしか思えませんでした。
足は3本ありました。そのうち左右の2本で、がっしりと鳥居をつかみ、
一本はつねに浮かしてましたね。・・・前置きが長くなってスミマセン。
ここから本題に入るんですが、このカラスが鳥居以外の場所にいるのを
2回見たことがあるんです。1回目は、小学校5年生のときの
お正月でした。初詣に行ったんです。その年は、紅白を見て年越しそばを
食べると家族みんな寝てしまって、初詣は2日の午後になったんです。
でも、行列ができるほどじゃなかったけど、そのときも神社は
だいぶ混雑してました。歩きで行って鳥居が見えてくると、
いつものように大カラスの姿を探したんですが、いないんですよ。

こんなことは初めてで、びっくりしました。鳥居へと続く道は両側が
駐車場になってて、たくさん車がありました。キョロキョロあたりを
見回してたら、いたんです。大ガラスは、やや離れたところにある
一台の車の上にとまって、上からガッツンガッツン、その車の
屋根を突っついてたんです。あ、ガッツンって言いましたけど、
音はしてなかったと思います。でね、当時は僕、車の車種なんて
よくわからなかったんですが、白いSUVでした。
どうしてカラスが鳥居を離れたのか、なんで車の屋根にとまって
つついてるのか、わけがわからなかったです。僕が立ち止まってると、
父親が「置いてくぞ」って言ったんで、あわてて後を追いながら
何回かふり返って見たけど、カラスはずっとそうしてたと思います。

でね、その意味がわかったのは2日後の新聞を見たときです。
いや、テレビのほうが先だったかな。地元の高校生のグループが
自損事故を起こしたんです。男女5人が海岸沿いの道を走ってて、
運転を誤って堤防から砂浜に転落したって出てました。
運転してた男子生徒は無免許で、即死だったみたいですが、
他の4人はフロントガラスを破って浜に投げ出されたりしたのに、
ケガだけで済んだんです。後の証言で、全員が飲酒してたとも
出てましたね。その事故車の写真が、新聞の地元版に出てたんですが、
それが僕には、駐車場でカラスがつついてたのと同じに思えたんです。
いや、違うかもしれないんですけどね。あと、もし同じ車だったとしても、
カラスが屋根をつついてたのが、事故のことを警告してたのか、

それとも怒ってたのか、そのあたりのことはわからないです。
運転者が死んでるので、やはり怒ってたのかもしれません。で、2度めに
カラスが鳥居を離れたのを見たのは、あの日の前日の夕方です。
僕は中学生になってて、吹奏楽部に入り毎日練習があったんですが、
卒業式が近かったんでその日の練習は早めに終わって、4時半頃に家に
向かってました。そしたら、頭上を何か大きなものが飛んでいることに
気がついたんです。そんなに高くないところでした。あのカラスです。
普通の鳥とは考えられない異様に大きい影が、ゆっくりと町並みから湾岸道路、
それと、夏は海水浴場になってる浜を、円を描くようにして飛んでたんです。
神社のカラスだ、とすぐに思いました。けど、誰も上を見上げたり
してる人はいないし、やはり見えてるのは僕だけなのか。飛んでいる姿を

見たのは初めてでした。あの車のときも、屋根にとまってたわけですし。
雄大な感じというより、すごく不吉な気持ちになったんです。何かが
起きるんじゃないかって。カラスは、僕が外にいる間ずっと、大きな弧を
描いて旋回してました。もうおわかりですよね。翌日の午後、あの地震が
起きて津波がきたんです。幸い、僕らの市は他のところに比べて被害は
少なかったです。海岸が長い遠浅の浜になっていたからかもしれません。
家族にも被害はありませんでしたが、津波で神社の大鳥居は倒れてしまい
ました。その後、3年くらいたって僕が高校生のときに鳥居は再建され、
見に行ったんですが、もうカラスはいなかったです。もしかしたら、
神社には神様もいないのかもしれません。あのとき・・・
僕に何かできることがあったんだろうかって、今でも考えてしまいますよ。





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