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「太歳 たいさい」って何?

2020.01.20 (Mon)
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台湾にある太歳星君の像

今回はこういうお題でいきます。いちおう妖怪談義に入れて
おきますが、これは中国占星術においては、きわめて重要な概念です。
さて、みなさん木星はご存知でしょう。太陽系で内側から5番目に
位置する巨大ガス惑星です。英語名は Jupiter(ジュピター)。
直径が地球の11倍程度あります。

1610年、イタリアの天文学者ガリレオが、手製の望遠鏡を用いて
木星の衛星を観察したことは有名ですが、紀元前364年、
中国人の占星術師、甘徳が、木星のすぐ脇に暗い小さな星を発見して
いるという話があります。ただし、これが事実だとしても、甘徳の
ころには衛星という概念はありませんでした。

木星


で、今回は木星の話ではありません。天球上で、木星と対になる
(線対称の位置にある)太歳という星についてです。
あれ、でも、太陽系にそんな惑星はありませんよね。
これは古代中国で、ある事情から考え出された架空の星なんです。

なぜこれが考えられたのか、事情は複雑です。木星は12年で
天球上を一周します。これを1年ごとに分けたものを十二次といい、
木星は1年で一次ずつ「西→東」と進んでいきます。
ここで、中国には十二支がありますよね。みなさんご存知の
子・丑・寅・卯・・・というやつですが、この回りは「東→西」です。

十二支と方位
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木星の動きとは逆なんです。そこで、木星とは正反対の位置にあり、
十二支を司る架空の惑星、太歳が考え出されたというわけです。
しかし面倒な話ですよね。ということで、最初は太歳は天にあったん
ですが、時代が進むとともに、天にある木星と対比して、
太歳は地面の下にあると考えられるようになってきました。

そして、だんだんに太歳は災厄を受け持つ神とされるように
なります。道教で、太歳を神格化したのが太歳星君です。
最初の画像に出てくるように、三面六臂(頭が3つ、腕6本)の
像になっていることが多いようです。

太歳で出てきた中国の画像
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さて、太歳は1年ごとに動いていきますので、太歳が地面の下に
埋まっているのは、その年の十二支の方角です。
太歳が自分で移動してるんです。古来から中国では、
新しく宮殿の門をつくったり、庶民が家を建てるときでも
太歳の方角は避けるべきだとされました。災いを招くからです。

太歳の方角の地面を掘ると、不気味な肉塊が出てくる。
中国の古書『稗海』には、わざと太歳の方角に家を建てた
金持ちの話が出てきます。土台を作るために地面を掘ると、
やはりブヨブヨした肉塊が出てきて、みなが恐れたが、

これも中国の画像 食べたんでしょうか?
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金持ちは気にせず、金属の容器に入れて家の土台にしてしまった。
特に祟りのようなものはなかったようです。ここでついに、
太歳は妖怪化してしまったんですね。ただ、この太歳を
食べると、不老長寿になるという話もあります。

さて、この太歳の正体ですが、中国の画像を検索すると
いろいろ出てきます。まずは霊芝です。マンネンタケ科の
キノコでかなり大きくなります。それから、
アメーバ様単細胞生物である粘菌という説もあります。

オオマリコケムシ 太歳にはたくさんの目があるとも言われます
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また、オオマリコケムシという群体性のコケムシ説もありますが、
おそらくは、一種類だけでなく、さまざまな生物が太歳に
なぞらえられているんだろうと思います。
スペースが少なくなってきたので、先を急ぎましょう。

前にも書きましたが、この太歳が、まだ江戸時代になる以前、
駿河にいた徳川家康の前に現れたという話があります。
江戸後期の随筆『一宵話』では、背は小さく、腕はあっても指がない
「肉人」と表現されています。みな気味悪がって、
遠くの山に運んで捨ててしまいました。後に、ある学者が、

ぬっぺっぽう
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「あれは中国の白澤図にある封(ほう)というもので、食べれば
長寿の薬になる。捨てたのは残念なことだ」と言ったとされ、
ここでの封は、太歳と同一とも考えられています。
ただ・・・ 別の解釈によれば、これはある種の皮膚病、おそらくは
ハンセン病に罹患した人間だったんじゃないかという話もあり、

常識的に考えれば、そっちのほうが正しい気がしますね。
この「封」が出てくるのが、京極夏彦氏の『塗仏の宴』です。ネタバレに
なるので詳しい解説はしませんが、作中では妖怪 ぬっぺっぽう
(のっぺらぼう)とも言われています。のっぺらぼうは、
小泉八雲の『怪談』の中の「貉」という短編にも登場します。

塗仏 この絵では黒くて魚の尾があるところから、出目金との関係も考えられる
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最初は天文関係だったのが、ここまで話が広がりました。中国から
伝わった太歳や封が、日本でぬっぺっぽうや肉人になったのか。
そこまではわかりませんが、日本の妖怪には、中国から伝わって
日本的に変質したものが多いので、その可能性は否定できません。

さてさて、最初に中国で太歳などという架空の星を考え出さなければ
ここまで話が複雑にならなかったんだろうと思いますが、
そこが文化の豊かさというもので、妖怪研究にも深みを
与えているんですね。では、今回はこのへんで。





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コメント
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| 2020.01.21 14:28 | 編集
コメントありがとうございます
今後も当ブログの話を使われるのはかまいませんし
好きなように改変していただいても問題ありません
これからのご活躍を願っております
bigbossman | 2020.01.22 00:36 | 編集
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