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瞬間移動の話

2020.01.25 (Sat)
みなさんは、超能力についてどうお考えでしょうか。いわゆる心霊とは
違うものだと考えておられる方も、かなりいるんじゃないかと
思います。ですが、この2つ、線引きはあいまいなんです。
心霊については、超心理学のほうから「超ESP仮説」というのが
出されています。簡単に言えば、「死後生や霊魂の存在の証拠とされる
心霊現象も、ESPや超能力によるものだと見なすことで、霊魂を想定
しなくても説明可能になる」というものです。これ、どう思われますか?
例えば、幽霊を見るということは、超能力者が自分の力で過去のビジョンを
見ているというわけです。ただ、こう言えるということは、逆もまた
可能なんですね。すべての超能力は霊の力で生じている、と。まあ、
小難しいことはこれくらいにして、今回は瞬間移動に関するお話です。

小売業 小畑浩一さんの話
俺、青果市場で店やってる小畑って言います。よろしくお願いします。
これな、俺が小学校の5年のときに体験した話なんだ。
昭和のまだ40年代初めだった。当時はほら、ゲームなんてなかったから、
どこの家の子も外で真っ黒になって遊んでたもんだ。
でな、あれは夏休みだった。その日は遅く起きたんで、みなが集まってる
小学校の校庭には行かず、一人で川で魚採りをしてた。
釣りじゃなく、網ですくうやつ。しばらくそうしてたら、
土手から「おーい」って呼ぶ声がした。見ると、同じクラスの三原って
やつだった。そいつ、その頃の一番の親友だったんだよ。
家もすぐ近くだった。「なんだよ~」と返事したら、息せき切って
土手を駆け下りてきて、「おい、スゲえぞ、スゲえこと発見した」

って叫んだ。けど、こう言っちゃなんだが、三原ってあんまり頭よくなくてな。
こいつが興奮してるときって、たいがいくだらねえことだったんだよ。
「スゲえから」って言うんでついてったら、公園に人の糞が落ちてて
ウジであふれ返ってるとかだったり。あ、汚い話でスマン。
「どうした」って改めて聞くと、「ユリ・ゲラーだよ」って答えが返ってきた。
ああ、当時スゲえ流行ってたんだよ。超能力ってやつ。壊れた時計が
動き出したり、あとほら、スプーン曲げ。鉄のスプーンがくねくねに曲がる。
もちろん俺もやったけどな、成功したためしはねえ。
「ユリ・ゲラーって?」 「よくわからんが、テレポテーションってやつじゃ
 ないかと思う」・・・よくガキがテレポテーションなんて言葉を知ってた
と思うだろうが、マンガ雑誌の超能力特集で出てたばかりなんだ。

だから、三原もそれ見て騒いでるんだと思った。土手に上がると、
三原は俺の手をつかんで、「とにかく来てくれ。やってみればわかる」って
言うんだな。「やってみるって、何をだ?」 「オイサキ様だよ」
「え?」 このオイサキ様ってのは、運動公園の裏のほうにある
神社みたいなものだ。みたいってのは、鳥居も何もなくて、ただ小さい四角い
建物があるだけで、回りを大人の腰くらいの鉄柵で囲まれてる。
だから近くに寄れなくて、お参りもできない。賽銭箱もない。
ただ、落ち葉とかが掃き清められてたから、世話する人はいたんだろう。
「俺な、夏休みの自由研究でアリジゴクを飼ってみようと思って、
 あちこち探したんだよ。んで、オイサキ様の下な、砂地になってるのを
 思い出して行ってみた。そしたらアリジゴクの穴がいっぱいあったんだ」

オイサキ様も、俺や三原の家からは近い。「お前、柵、乗り越えて入ったのか」
「ああ、あんなのわけねえ」 「そら、わけねえだろうが・・・」
前にそのあたりで遊んでたとき、柵を飛び越えたりしてたのを大人に見つかって
こっぴどく叱られたことがあった。「でな、あそこ床下が広いだろ。
 もぐり込んで、アリジゴクをつかまえてたら、夢中になって立ち上がっちまった」
「で?」 「したら、頭あたったとこがボカッと抜けたんだよ。割れたって
 ことじゃなく、床に敷いてた板がずれたんだと思う」 「それでどうした?」
「子どもなら入れるほどの穴になったんで、手をかけてのぞいてみた。
 中は暗かったが、少しだけ光が入ってて、台の上に鏡みたいなのがあった」
「それ、御神体ってやつじゃねえか」 「ああ、たぶんな。でな、俺
 上がってみたんだよ」 「うわ、大人に見つかったらヤベえ」

「ああ、でも回りに誰もいなかったし。床は四角い板が並んでて、
 俺が入ったとこだけズレてた。中はガランとして、あるのはその丸い鏡だけ。
 鏡は光ってた。天井に小さな穴が空いてて、そっから光があたってたんだ」
「で?」 「鏡の面が、虹みたいに光ってて、ああ、きれいだと思って
 指でつついたんだよ。したら急に真っ暗になって、俺、地蔵様の
 頭をなでてたんだよ」 「?? どういうことだ」 「ほら、向こう辻の
 とこに地蔵様のお堂があるだろ、そこにいた」 「嘘つくなよ」
俺はすぐにそう言ったよ。地蔵様のお堂は戸がないんで誰でも入れるが、
オイサキ様とはかなり離れてる。「いや、俺も何がどうなったかわからんかったけど、
 これ、雑誌に載ってたテレポテーションってやつじゃねえかと思ったんだ」
「信じられん」 「まあな。だからもう一回やってみようと考えてお前さそった」

てことで、2人でオイサキ様まで行った。大人は周囲に誰もおらず、離れた
市民球場で草野球してる人たちくらいだった。2人で柵を越えると、
たしかに高床の下から入れるくらいの穴があった。最初に三原、俺は
少し躊躇したが、勇気なしと思われるのが嫌で後に続くと、
三原の言ったとおり鏡があった。まだ光はあたってて、水に油を流したように
七色に渦巻いてた。「じゃあ、いっせいので指でさわろうぜ」三原はそう言って、
「いっせいの!」ビビッと電気みたいなのを感じて目の前が暗くなり・・・
また明るくなって、地蔵様の丸い頭の上に手があったんだ。「な!」
俺のほうを見て三原が言ったんで「ほんとだ、スゲえ」俺はもう大興奮だったよ。
「も一回やんねえか」 「ああ、やろうぜ」このとき、歩きながら
三原とこんな話をした。「でもよ、地蔵様ってお寺さんのだよな。

 オイサキ様はあれ、神社のほうだろ。なんでつながってるんだろうな?」
「いや、わからんが、どうせ親戚みたいなもんなんじゃないか」って。
で、このときもオイサキ様のあたりに人影はなし。前より余裕があったんで、
鏡をよく見てみた。大きさは直径20cmないくらい。ガラスじゃなく、
金属を磨いたものだったと思う。裏は鉛色で、墨かなんかで大きく黒く
漢数字の「三」が書いてあった。「いっせいの!」ドンと爆発したような
感じがした。俺は吹っ飛ばされ、地蔵堂の前の舗装してない道に倒れてた。
見上げた空は真っ暗で雷が走ってたな。全身が痛かったが顔を動かすと、
横に三原がやっぱ倒れてたんだ。「うううう」うめきながら立ち上がると、
あちこち痛いがネンザとかはなかった。「大丈夫か」手を取って
三原を起こしたら、俺よりひどくやられてる感じがした。

不思議なのは、さっきまでは晴れてたのに、大きな黒雲が頭上にのしかかってて
今にも雨になりそうだったことだな。気味が悪かったんで「帰らねえか」と
言うと「ああ」三原も顔をしかめながらうなずいた。でな、田んぼに出ると、
道の脇で軽トラがひっくり返って用水路に落ちてた。「あ、事故だ」深い側溝を
のぞき込むと、作業着の初老の男性が泥の中に仰向けに倒れてたんだ。
頭から血が出て、目をつぶったまま小さく何か言ってた。
「助けてくれ」だと思った。俺が「誰か人、呼んできます!」叫ぶと、
その人がギッと目を開け、俺らのほうを見て「お前らのせいだあ!!」
って叫んだんだよ。「わああ」俺と三原は走って逃げた。ああ、もちろん
大人に知らせるつもりだったが、誰とも会わなかったんで、辻の公衆電話に
駆け込んで110番した。警察にたどたどしく事情を話すと、

今から行くからボクたちもそこにいて、ってことだった。わりとすぐ、
パトカーと救急車が来たんで手を振った。パトカーの後部に乗せてもらって
田んぼのとこまで行くと、やはり軽トラが転がってた。俺らも下り、
おそるおそる側溝をのぞくと、さっきの人はうつ伏せに姿勢が変わってて、
泥水の中に顔を突っ込んでた。ピクリとも動かず、生きてはいないと思ったよ。
そんとき、土砂降りの雨になったんだよ。俺らはまたパトカーに避難し、
応援のパトカーが来て、俺も三原も家まで送ってもらった。家には耳の遠い
バアサンしかおらず、しかたなく宿題をやった。やがて家族が帰ってきて、
夕食のときに警察から電話がかかってきた。電話に出た親父は、「いいことした
みたいだな、警察が感謝してるぞ」って言ったが、俺にはまったくそう思えなかった。
あれ以来、俺も三原もオイサキ様の話題は避け、俺は一度も行ってない。

キャプチャ





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