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幽霊は怖いか?

2020.02.10 (Mon)
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今回はこういうお題でいきます。カテゴリは怪談論ですね。
さて、どっから話していきましょうかね。
「幽霊」という言葉で連想ゲームをすると、おそらく1位か
2位に「怖い」という語が出てくると思います。
では、幽霊って怖いんでしょうか?

まあ、幽霊なんてもともといないから、怖いも怖くないもない、
こんなふうに答えられる方も、かなりの数おられるとは思いますが、
今回は文化的な話としてお読みください。「幽霊=怖い」という
連想が生まれた原因は、大きく2つあるかなと自分は考えます。

『呪怨』


一つは、「娯楽としての恐怖」が氾濫していることじゃないで
しょうか。ホラー映画は毎年、趣向をこらした新しい作品が
つくられますし、ホラー小説も同様です。
「恐怖」は商品になるんです。

ホラー映画に登場するのは、幽霊の他に、殺人鬼、悪魔、ゾンビ、
正体不明の怪物などもいますが、アメリカ映画はともかく、
日本ではあまり一般的ではありません。日本映画で恐怖の主役に
なるのは、やはり山村貞子や佐伯伽椰子のような、
一度死んで悪霊化したものが多いですよね。

ただまあ、ホラー映画や小説はフィクション、作り物ということが
最初からわかっています。だから映画館で見ても一種の安心感が
あるんですが、2000年代に入ってから、日本では「実話」と
冒頭に銘うたれた作品がどんどん出てきました。これは活字も
ありますし、怪談という形でライブで語られたりもします。

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実話であるからには、日本のどこかで「本当にあった」話なわけで
フィクションよりはずっと身近です。あるアンケート結果では、
「幽霊はいる」と答えた人は、全回答者の40%くらいでした。
(ここで注意しなくてはならないのは、「霊魂はある」という回答とは
違うことです。霊魂はある、と答える人はもう少し多いでしょう。)

ですから、現代の日本では、幽霊を現実的な存在としてとらえている
人もそれなりにいるんだと思います。そして、実話怪談の主流は
「怖い幽霊」です。中には、心温まる幽霊話というのも
ないわけではありませんが、それは箸休め程度ですね。

二つ目の原因は、日本は長く仏教国であり、仏教の因果応報的な
考え方が浸透していたことだと思います。うちの父はもう
亡くなりましたが、テレビで幽霊番組をやっていると、
「何も悪いことをしてないんだから、俺に化けて出てくるやつは
いない」みたいなことを言ってました。

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これが伝統的な日本の幽霊観なんです。あるところに非道い仕打ちを
されて殺された人がいて、遺体は川に流されたので、葬式もしてないし
墓もない。お経もあげてもらっていません。つまり成仏していない。
そのために怨霊化し、自分を殺した人間のところに化けて出る。
『四谷怪談』のお岩さんがそうですね。

鶴屋南北が書いた脚本が上演されて大ヒットしました。觀ている客は、
怖いけれども、祟りにあうのは舞台の伊右衛門であり、自分のところに
危害がおよんでくるわけではない。ですから、現代の映画みたいな感覚で、
幕間に弁当を食べたりしながら見ることができたわけです。しかし、
明治維新後、仏教はまともに信じられなくなっていきます。

1970年代のオカルトブームが一つのきっかけになっているでしょう。
テレビ番組『あなたの知らない世界』で最恐と言われてるのは、
通称「恐山の怪」とか「お歯黒お化け」と呼ばれている回で、
ご存じの方も多いと思いますが、青森の恐山でたまたま女の霊を
見てしまっただけなのに、幽霊は家までついてきて、

『恐怖の心霊写真集』シリーズより
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茶碗の中に出現。その人の家族は全員、歯を真っ黒にされて
しまうんです。これ、自分はビデオで見たんですが、歯が真っ黒に
なるのが唐突で意味不明、そして映像としてすごく怖いんです。
あとは中岡俊哉氏の『恐怖の心霊写真集』シリーズで、
霊は目に見えないが、どこにでもいるという考え方が広まった。

この流れが少しずつ形を変えながら現在まで続いてるんですね。
ただ道を歩いていたり、鉄道自殺を目撃したりしただけで、
何も悪いことをしてないのに霊障に遭うことがある・・・自分も、
先祖の因縁みたいなのはあまり好きじゃないので、この形で
書いた怪談はかなりあります。ただ、それだけだと底が浅い気もして、

最近は、「自分の生き方が怪異を呼び込んでしまう」系の話を
なるべく増やそうと思ってるんですが、これは難しく、書くのに
時間がかかるうえに、内容が普通小説やミステリに近づいて
くるんですよね。試行錯誤中ではあります。

怪談会
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さてさて、では「怖くない霊」はいないかというと、まあ
生きた人間と変わらず、幽霊とわからないケースは別として、
人を助けてくれる霊の話は世界中にあります。よく知られてるのが、
吹雪の山中で道に迷ったりしたとき、誰とも不明なヤッケの
男がピッケルにつかまらせてくれた、みたいな話です。

スマトラ沖地震で、明らかに生者ではないものが瓦礫に
埋もれて生きている人の場所を教えたとか、病院で看護師が
休憩してると、いないはずの古い制服を着た看護師が現れ、
窒息しかけている新生児がいるのを知らせたとか、
さがせばけっこうな数が出てきます。

ということで、「幽霊=怖い」の背景には、エンターテイメント
で売り上げを増やすという戦略が隠れています。
しかし、もし幽霊がいるとして、すべての霊が邪悪な存在とも
考えにくいですよね。では、今回はこのへんで。

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コメント
 「特に因縁もなく怪異に巻き込まれる」という条件なら、ネット怪談の「リアル」(題名)を推したいですね。初出は巨大掲示板ではなく怪談投稿サイトだったはず。
 内容がクソ長い上に小説的と、この記事で挙がった欠点をしっかり抱えていますが、「経緯の理不尽さ」「追い詰められる恐怖」「ショッキングなどんでん返し」と、恐怖娯楽として完成しています。
 ただやはり、これを短く纏めてしまうとクオリティは落ちてしまうんでしょうね。おっしゃる通り、長文の得意分野なのかもしれません。
| 2020.02.13 18:41 | 編集
コメントありがとうございます
リアルは自分も読みましたが、なんというか力作ですよね
よく書いたなあと思います

スティーブン・キングなんかが代表的ですが
ありえない怪異を出そうとすると、日常の細部を書き込んで
リアリティを出す必要があり、どうしても長くなってしまうんです
bigbossman | 2020.02.13 20:20 | 編集
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