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張る話 2題

2020.02.22 (Sat)
肉の木
保険会社に勤めている松本と申します。私、地下鉄で通勤して
まして、自分の部屋から最寄りの駅まで10分ほど歩きます。
1週間前、朝に大きな通りの交差点を通りかかったら、
横断歩道の向こう側のガードレールの下に、花束がいくつも
置かれてたんです。あ、誰かここで事故に遭って亡くなったんだな
と思いました。たいへん車通りの多いところなんですが、
信号機があるので、信号無視があったのかとも考えました。
横断歩道を渡っていくと、花束の中に埋もれるように何本かの
ジュースの缶が見えました。ああ、亡くなったのは子どもなんだろうか、
だとしたら気の毒だなあと思ったんですが、さすがに立ち止まって
手を合わせるようなことはしませんでした・・・

その日の帰りは飲み会があり、タクシーを使ったのでそこの交差点は
通りませんでした。で、翌朝です。よく晴れた日で、花束もそのままあり、
前日よりも数が増えているように見えました。それで、花束の中に
赤黒い木の枝のようなものがあったんです。え、あれは何だろう。
わざわざ近づいたりはしませんでしたが、そばを通るときによく見ると、
花に埋もれるようにして肉の固まりのようなものがあり、
そうですね、ひき肉機から出てきた肉をさらに赤くしたようなもの、
そこから、同じ色の枯れ枝のようなものが出てたんです。
枝は細かくわかれ、20cmくらいありました。うわ、気味が悪いなあ。
おもちゃか何かなんだろうか、それにしても・・・
このことはずっと頭に残っていました。

で、その日の帰りも外回りから直帰したので、そこの交差点は
通らなかったんです。また翌朝です。気になっていたので離れたとこから
花束のある場所に目を向けると、あの不気味なものはまだあり、
前よりも大きくなっているように見えたんです。はい、肉塊はそのままで、
枯れ枝のような部分が倍以上の大きさになってました。
・・・このときはまだ、それが他の人には見えないとは考えて
ませんでした。実際にそこにあるものだとばかり。
それでですね、あんまり不気味なので、帰りはその交差点は
通らなかったんです。もう暗くなってましたし、怖い気がして
やや遠回りになりますが、一本手前の道を通って帰りました。
その翌日は・・・その交差点を通りました。

朝で明るいですし、たくさん人が出ているので大丈夫だろうと
考えたし、好奇心がありました。それがどうなっているか、
見て確かめたかったんです。かなり離れた場所からも、すごく大きくなって
いるのがわかりました。木の枝のような部分が、数mにもなり、
街路樹が倒れたような形で道路に張り出してました。
はい、通っていく車はその枝にあたるんですが・・・信号待ちしながら
見ていると、それ、車がすり抜けていくんです。たわんだりせず、
車の中に埋もれるような形になり、車が通り過ぎると同じ場所にある。
それと、あんな異様なものなのに、私以外にそれに注意を向けている人が
いませんでした。このとき初めて、もしかして私にしか見えないものなのだ
ろうかって考えたんです。その日の帰りもそこは通らず、

また翌朝、それは道幅いっぱいに大きくなって道路を塞いでたんです。
肉色の網のようになってました。でも、車は何もないかのように
そこを通り過ぎる。信号が赤になれば、それに重なるようにして停車する。
それだけじゃなく、横にも広がって歩道にも張り出してきてて、
歩行者の中にはそれに触れていく人もいたんです。
呆然と立ち尽くしていると、「もし」と軽く背中を叩かれたんです。
びくっとして振り向くと、3人連れの黒い衣のお坊さんが立ってました。
その中で年配の方が私に、「ああ、あれが見える方ですね。
 だいぶ大きくなってますな。大丈夫、あなたに害はありません。
 これからわたしらで成仏させますからご心配なきよう」こんなことを
おっしゃいました。で、そのとおり翌日にはすっぱりとなくなってたんです。

ワナ
bigbossmanです。自分の知り合いにKさんという、本業は貸しビル経営などの
実業家で、ボランティアで霊能者をやってる方がいるんですが、
大阪市内のバーで飲んだ後、Kさんのマンションの一つに招待されたんです。
一つと書いたのは、Kさんはアジトと呼べるような部屋をいくつも
持っていて、自分で所有しているものも、借りているものあるみたいです。
なんでそんなことをしているのか、はっきりと聞いたわけではないですが、
たぶん過去の事件でKさんを恨んでいる人間がいるので、
居場所を転々と変えてるんじゃないかと思います。
で、その日、夜の11時を過ぎてたんですが、マンションの地下駐車場
入口前でタクシーを降りたんです。そっから駐車場内の通路を通って
警備員が常駐してるエントランスに出ます。

そのドアの前で、Kさんが奇妙な動作をしました。左手の指を中空に上げ、
何かを軽く持ち上げるような動作をしたんです。そして、
「ふん、問題ないな」って言いました。自分が物問いたげな顔をしてると、
「ああ、気になるだろう、部屋に入ったら教えるから」そう言いました。
Kさんの部屋はそのマンションの最上階で、広い窓からは海が見えます。
ソファでブランデーをいただきながら話をうかがいました。
「さっきのは?」 「うん、一種の結界というかワナに近いものだ」
「ワナ?」 「昔の村では、村に入る街道の道に道祖神を置いたり、
 高い木と木の間に縄を張ったりしてたのは知ってるよな」
「ああ、はい。最厄除けの結界ですよね」 「そうだ、最も怖れられてたのが
 疫病神だな。病気は街道を通って集落に入ってくる」

「そのあたりは聞いたことがありますが、面白い話ですよね。
 疫病神はわざわざ道を通ってくるんですね。山の中を抜けたりしてきても
 よさそうなもんなのに」 「まあ、そう考えるのは当然だが、
 道そのものに呪力があるんだ。よい気の流れも、悪いものも、
 そこしか通れないようになってる」 「あ、わかりました。あの場所に、
 Kさんを恨んでる人間が入ってこれないよう、目に見えない結界を
 張ってるんですね」 「いや、ちょっと違う。誰でもふつうに通れる」
「??」 「通れるが痕跡が残るんだ」 「ははあ、どんな」
「まあ様々だな。蛇の形をしていたり、15cmくらいの小鬼の形を
 してるものもある」 「通った人によって違うと」
「そう。俺はそれを見て、誰がそこを通ったかがわかるというわけ」

「でも、あそこはマンションの他の住人も通るわけでしょ」
「ああ、でも、何の邪気もない人は痕跡もないから」
「なるほどねえ。他にもあちこちに張ってるんですが」 「もちろん。
 正面玄関や裏手の通りなんかにもだ」 「用心深いですね。
 まあ、これまで関わった案件を考えれば無理ないですが」
「じゃあ、帰りに裏手のやつをちょっと見てみるか」
ということで、それから小一時間、ホームバーで高価なお酒をあれこれ
ごちそうになりました。それから、また駐車場のほうを通って
マンションの裏手の道に出たんです。そのあたりは高級住宅地になっていて、
高い塀が連なってました。「ここは私道なんだ」とKさん。
たしかに広くはない道で、数m歩いて、Kさんが頭の少し上あたりを

さっきと同じように左手の人差し指でひょいっと持ち上げ・・・
「ああ、かかってる」そう言って、目に見えない縄があるように
手探っていましたが、「ああ、いたな」と何かをつかむような形で
こちらに手を見せたんです。「何かあるんですか」 「お前は0感で
 まったく見えないんだよな。じゃあ、これでどうだ」
Kさんが手の中のものに息を吹きかけると、ハムスターくらいの
大きさの動物?がもがいているのが見えました。毛皮の色は青。
「何です、Kさんの敵の痕跡ですか」 「いや、ただの魍魎。どこにでも
 いるやつだよ。都会の悪い気が凝り固まったものだが、
 日本の中でも大阪は特に多い」Kさんはそう言うと、口の中で
何か短く唱え、アスファルトに落として靴で踏みつけたんです。






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