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妖怪の話

2020.04.01 (Wed)
※ ナンセンス話です。

bigbossmanです。今回もまたKさんからうかがった話になります。
Kさんは全国に不動産を持っている実業家なんですが、ボランティアで
霊能者としての活動もされていて、ときどきお会いしたときに話を
聞かせてもらえるんです。いつもの大阪のバーでのこと。
「Kさん、これまでに妖怪がかかわった事件なんてあったもんですか」
「ないことはないよ」 「ところで、いつも疑問に思ってたんですが、
 幽霊と妖怪ってどう違うんです?」 「ああ、それは簡単な話・・・だった、
 江戸時代まではな」 「どういことですか」 「江戸時代には、
 現代の人間が想像もつかないほど仏教が力を持ってたんだ。
 無宿人でなければ、武士であれ農民であれ、必ずどっかのお寺の
 檀家にならなくちゃいけなかった。そうでないと転居や旅行もできない」

「ああ、お寺が役所みたいなものだったという話は聞きますね」
「人別帳って言葉も知ってるだろ。正式には宗門人別改帳、これが当時の
 戸籍がわりだった」 「そうですね。もともとはキリシタンでないことを
 証明する目的だったのが、身元照会に使われるようになった」
「で、仏教徒の最大の目的は成仏すること。逆に言えば、成仏できずに
 さまよい歩くのが幽霊というわけだ」 「ああ、そう言われると
 簡単な話ですね。お岩さんとかは、うらみをこの世に残して成仏できない」
「そうそう、うらめしや~って言うだろ。あとまあ、葬式をあげてない、
 坊さんに引導を渡してもらってない、墓に葬られてないということもある」
「なるほど」 「それが、明治の世になって日本は神道を国家の柱と
 することになり、仏教の力は急速に失われた。それと同時に、

 西洋から心霊主義の知識がどっと入ってきた。このあたりのことは
 お前のほうが詳しいだろ」 「ああはい。心霊主義ってのは、霊魂を
 自然現象とみなす考え方です。重力とかと同じ。人間が死ぬと、
 肉体と霊魂が分離して、霊魂のほうは霊界に行く。映画のリングの
 モデルになったとされる千里眼事件も、心霊主義の産物です」
「そうそう。で、幽霊が仏教と離れることで、だんだん何でもありになってって、
 今は心霊スポットで白いもやを見ただけで、幽霊だ!ってなる」
「じゃあ妖怪は?」 「成仏していない人間の霊以外のものすべてさ。
 例えば古くなった器物の霊である付喪神。から傘お化けとか提灯お化け」
「あ、お化けって言葉もありましたね」 「お化けってのは、幽霊と
 妖怪をひっくるめた言い方だな」 「で、Kさん、これまでに妖怪を

 あつかった経験あるんですよね」 「そう言ったろ。妖怪関係の事件は
 難しくはない。今は妖怪は力を失ってるからね」 「どうしてです?」
「決まってるさ、人間が妖怪を信じなくなったから」 「ああ」
「さっき話した分類で言えば、狐や狸に化かされるってのも、一種の
 妖怪現象。昭和になっても、田舎では狐に化かされたって話は
 いくらでもあった。でも、今の子どもはそんなの信じちゃいないだろ」
「そうですね」 「もちろん、狐や狸がほんとうに人を化かすかどうかは
 別の話で、多くは酒に酔ってたり、今でいう認知症だったり」
「なるほど、納得しました。じゃ、妖怪の事件を話してくれますよね」
「いいだろ。あれはもうだいぶ古い話になるな。昭和の50年代初め。
 東北のほうの鉱山町でのことだ。そこの鉱山はもうすでに
 
 採掘をやめててね。賑わってた街もすっかり人が減って・・・
 お前、赤線って知ってるか」 「公認の売春宿のことですよね」
「そう、あれがなくなったのはいつか知ってるか?」
「ええと、売春禁止法ができたのが1958年、昭和で言えば33年」
「詳しいな。で、その鉱山町でも娼家がつぶされて、建物は
 そのままに旅館になったんだよ。もともとが娼家だから特殊なつくりで、
 宿賃も安い。行商人とかが泊まる宿だな」 「はい」
「けどほら、街そのものがさびれてしまって、旅館もたちいかなくなり、
 建物を壊して、そこにビルを建てることになった。バーとかスナックが
 入った3階建てくらいの小さなビル」 「で?」 「それで俺のところに
 依頼が来たわけ。その旅館、幽霊が出るって言うんだな。

 それを客が怖がったこともあって廃業することになったんだが、
 ビルになればその幽霊は消えますかって話だった。もし消えないのなら
 お祓いしていただけませんかとも」 「ふーん、妖怪の話なんですよね」
「ああ、けど、そのときは幽霊って言われた」 「どんな幽霊なんですか」
「それがな、裸にパンツだけをはいた10歳くらいの男の子」
「ええ!? それってもしかして呪怨の俊雄じゃないですか。
 でも、呪怨のビデオが発売される以前の話ですよね」 「ずっと前だな」
「興味深いです」 「ただ、あの映画と違ってたのは、見た人の話では
 パンツが白じゃなく黒だったってこと。はっきりとした姿じゃなく、
 ぼうっとかすんでた。特に何かをするわけじゃなく、寝ている布団の
 足元にたたずんでしばらくして消える。

 ちゃんと足はあって、奇妙な足音もかすかに聞こえた」 「奇妙な足音?」 
「最後まで聞けばわかるよ。まだ、その元娼家だった旅館は解体されて
 なかったから、俺が泊まり込むことになったのよ」
「で?」 「その子どもの幽霊が出るのは、1階のトイレとその近くの部屋って
 ことだったから、夕方に入ってみた。それで、俺は幽霊が出る場所にいると
 何となく気配を感じる。ところが、すごい古い部屋で畳も焼けてて、
 いろんな臭いがこもってたけど、幽霊の気は感じられなかった」
「で?」 「その晩、そこに布団を敷いてもらって寝たが、朝まで何も
 起きなかった。これは長期戦になるのかって考えた。
 2日目の夜中、後で時計を確認したら2時頃だったが、
 ふっと目が覚めたんだ。指とかは動くので、金縛りってわけでもない。

 でな、足元に何かが立ってた。首だけそうっと持ち上げて見ると、
 かなり薄いが、人の形をしてる。言われたとおり、黒いパンツをはいた
 男の子のように思える。けど、細部がはっきりしない。
 俺はいつものように、そいつの中に精神を飛ばしてみたんだ。
 そうすると、ふつうは怨みとか悲しみが伝わってくるんだが、
 まったく何も感じない。さっきから話してるように、幽霊には成仏してない
 理由がある。ところがそれは、内面がまったくの空というか、
 無機質な感じだった。これは人間じゃないのではないか、そう考えた。
 そうっと布団をのけて立ち上がったんだ。そしたら、それは後退じさって、
 壁の中にふうっと消えたんだよ。俺が部屋から出たら、
 背中を向けて廊下を歩いてって、トイレの戸の中に消えた」

「トイレも確かめたんですよね」 「もちろんだが、何もいなかった。
 けど、これでだいたいのことはわかったと思った。さっき話した
 付喪神だろうって」 「器物の霊? さっぱり意味がわかりません」
「足音を聞いたんだよ。でな、旅館のトイレの大のほうは、和式で
 水洗になってるけど便槽がある。つまり、もとがぼっとんトイレだったのを
 上側だけ改装したもの。で、依頼者には、予定どおり建物を解体して
 くださいって言ったのよ。そのときに立ち会わせてもらいますって」
「どうなりましたか?」 「まず2階のほうから壊してって、トイレは
 埋める予定だったのを、建設会社に頼んで床板を剥がしてもらった。
 そしたら、便槽は石を組んだかなり古いものでな。その汲取口の
 横のほうに人形が一体はさまってた。15cmくらいの小さいもの」

「それ、まさか」 「やっと気がついたみたいだな。そう、♪空をこえて~
 ってやつ」 「鉄腕アトム!?」 「うん。出てたのはアトム人形が
 妖怪化したものと言えばいいか」 「うーん、信じられない」
「俺がその旅館に行ったのが昭和50年代の初めって言ったろ。
 鉄腕アトムの漫画連載が始まったのが昭和26年、アニメの
 テレビ放送開始が昭和41年から。おそらくかなり初期の人形だよ。
 プラスチックじゃなく布製で変色していた。たぶん、娼家時代に
 そこにいた子どもが持ってたのをトイレに落としたんじゃないかな。
 で、いろんな気が込もって付喪神と化した」  「うーん、そう考えると
 もの悲しい感じがしますね。その人形は?」 「有名な人形供養のお寺に
 持ってってお焚き上げしてもらった」 「いや、今回の話は予想外でした」
 




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