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フロイトへの挑戦状

2020.04.03 (Fri)
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今回はこういうお題でいきます。記憶に関係した心理学の
内容になりますが、心霊体験などとも関係があります。
さて、記憶とは何か? 例によってWikiを引いてみると、
「ものごとを忘れずに覚えていること。また覚えておくこと。」
と出てきます。まあ、このまんまですよね。

では、古代ではどうだったでしょうか。ギリシア哲学者の
プラトンが「イデア(本質)論」を唱えたことは有名です。
例えば「美のイデア」というのがあるとすると、われわれは
生まれる前からそれを知っているが、生まれてから花などの
美しいものを見ることで思い出す。これがプラトンの想起説です。

プラトン
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つまり、プラトンの考えの根本として、記憶は完全なものでなくては
ならない。プラトンは人の心を鳥かごのようなものとし、
そこに入った記憶は鳥のように、いつまでも逃げていく
ことはないと考えました。事実がそのままに保管されている。

近代に入って、精神分析学の父と呼ばれたジグムント・フロイトは
記憶についてどう考えていたか。フロイトには「抑圧説」があります。
幼児期の記憶がその人にとってあまりに辛いものであった場合、
その記憶は意識の下に抑え込まれると説いたんですね。しかし、
ときおり頭をもたげてきてヒステリー発作などを引き起こす。

プラトンのイデア論
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つまり、フロイトにとっても、記憶は過去の出来事がそのまま
保存されたものでなくてはならなかったんです。
それはそうですよね。本当にあった出来事だから抑えつけられる。
こう考えたのには、フロイトの時代に起きた写真術や
映画の発明なども関係してるんだろうと思われます。

アルバムに貼られた写真は、年月がたって色褪せる(忘れていく)
ことはあっても、写真の中の人物が動いたりすることは
ありません。現代であれば、デジカメのメモリカードもそうですよね。
それこそ怪談話になってしまいます。ですが、はたして本当に
そうなんでしょうか。このことに疑問を持つ人も多かったんです。

ジグムント・フロイト
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写真のプリントは生きたものではないので、勝手に動くことはない。
ですが、記憶が保存されている人の心、つまり脳はつねに
活動しています。そんな疑問を持った一人が、カリフォルニア大学に
所属していた女性心理学者、エリザベス・ロフタスです。

彼女は記憶が変化しやすい(可変性と言います)ものであることを 
証明するため、実験心理学の研究を行うとともに、
裁判の法廷に数多く参考人として出席しました。そのほとんどが
弁護側です。犯人の側に立って、検察側の証人の記憶の不備をつく。
ですから、訴える側からの評判がひじょうに悪いんですね。

フロイトの抑圧説
キャプチャ

ロフタスの実験はそう難しいものではありせん。大学生から被験者を
24人選び、その家族から聞き出した幼少時の記憶を書いた
メモを用意し、それを見て面談します。ただし、その中には、
「ショッピングモールで迷子になった」という
嘘の出来事が一つだけ含まれていました。

実験の結果、なんと学生の25%が架空の記憶を思い出し、
それだけでなく、そのショッピングモールの構造や、不安だった心情、
助けてくれた老婦人、警備員、涙をふいたタオルの感触についてまで
語ったりしたんです。心理学雑誌「American psychologist」に
この論文が発表されると、大変な反響を引き起こしました。

エリザベス・ロフタス博士
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アメリカの精神医学界にはフロイトの信奉者が多く、批判も激し
かったんですが、実験ですので追試ができます。多数の心理学者が
追試を行い、ほとんどが成功しました。小さな出来事なら、
偽の記憶を信じ込ませるのは可能だったんですね。

さて、1990年代のアメリカでは、精神分析医、セラピストに
よる治療で、幼児期の虐待を思い出した患者が、自分の年老いた
親を訴えるケースが頻発していました。フロイト理論では、
その幼児期のトラウマが原因で、現在の自分に精神の不安定が
現れていることになります。

精神科医がわざと偽の記憶を信じ込ませたのではなくても、
「子どもの頃に怖かった、嫌だった記憶はありませんか」
この質問だけでも偽りの記憶が生み出されてしまう。
まあ、幼児期にそばにいるのは親ですから、ほとんどの場合、
親の虐待ということになります。

ショッピングモールの迷子
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ロフタスが裁判の証人台に立った裏には、こういう事情があったんです。
そして、上記の実験以後、裁判所は考えを変え、記憶頼りの
裁判は行われなくなり、客観的証拠のない告発は却下されることに
なりました。現在では、当時、自分の子どもに訴えられて有罪になった
親の7割程度までは無罪だったと考えられています。

ただ、ロフタス自身は、訴えた側から恨まれました。ロフタスが
悪魔的儀式で子どもを虐待している。児童誘拐などの犯罪組織の
一員として、それを隠蔽する仕事をやっているなどなど、
たくさんの中傷があったんです。脅迫も相つぎ、
一時期はボディガードをつける生活を送っていました。

さてさて、今回はフロイト学説に戦いを挑んだ女性心理学者の
お話でした。怪談の場合も、子どもの頃の体験、記憶というのは
あてにならないものですよね。いつかどこかの時点に、
何かの理由で改変されてしまっている可能性があります。
では、今回はこのへんで。

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