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目館

2014.01.20 (Mon)
その日は土曜日で、彼女を誘ってドライブに出てたんです。
自分は車好きだし、彼女もドライブが好きでして。
ああ、もしかしたら自分の趣味に合わせてくれてたのかもしれないですけど。
車はフェアレディZです、中古ですけどね。
で、休みのたびに県内の遠くの市や、近県の市まで高速をとばしてました。
とくにどこで何するとかの予定は立てず、
どっかで飯食って観光施設があれば入ったりして帰ってくる。それだけです。

その日は北のほうの県に向かいまして、峠道があるんで、
わざと高速を使わないで走ってました。
時間は10時ころでしたかね。11月らしい曇り空の天気でした。
そこらは山間の集落なんですが、カーブを曲がるときに、
左手の山の中に民家とは思えない建物が見えました。
三角屋根のログハウスみたいな感じで、
そこらはラブホテルがあるとかも聞かないとこなんです。

もう一度カーブを曲がると、建物が木に囲まれて山の中腹に建ってるのが
正面に見えて、手前の藪に「目館」という看板も見えました。
片目だけの、まつ毛がついた目玉の絵が描かれていて不気味な感じだったんです。
彼女が「ちょっと行ってみようよ」と言ったんで、「商業施設じゃないかも」と答えたんですが、
「そのときは戻ればいいじゃん」ということで、脇道をさがして山に入っていきました。

5分ほど登ると舗装路がとぎれ、そっから砂利道を少し行くと平らなところに出ました。
駐車場なんでしょうが、白線が引かれてるわけでもなく、
車も古いSUVが一台停まってるだけで、その奥に目館があったんです。
建物は三角屋根の、丸太を組み合わせた平屋のログハウス風なんですが、
縦に長くて、後ろのほうは山肌にぴったりくっついてるような感じでした。
その三角屋根が、なんとなく神社に似てるんですよ。
あの伊勢神宮みたいな昔の神社。屋根にもなにか神社風の飾りがありましたし。
2人で車から降りて正面玄関までいくと、建物は思ったより高さがありました。
丸木の階段を上っても、屋根がかなり高いところにあるんです。

入り口の両開きの戸は開いていて、2人で入ると横手の受付の窓口から、
女の人が出てきました。40代くらいだと思います。
なんか陰気な感じの人でした。自分が、「ここは・・」と聞くと、
「当館は目の展示館です、目は心の窓と申しますが、さまざまな目を見ることによって、
自分では見えなかったことがわかるときがあるものです」

このとおりではありませんが、こんな内容のことを、
暗記したのをそのまま話すような口調で述べ立てましたが、
何の展示をしてるのか全然わかりません。
女の人は最後に「入場は無料です」とつけ加えました。
自分がどうする?と彼女のほうを見ると、
「なんか面白そうじゃない、行ってみよ」と応じたんで、入ってみることにしました。

女の人につれられて奥に進むと、鋲を打った頑丈な鉄扉がありました。
自分が「すごいものものしいですね」と言うと、「目の生気を逃がさないためです」
ささやくように答えて、鍵を出して鉄扉を開けました。
「展示室が4つありますので、順々に見ていってください。
 後ろには戻れないようになっています。最奥に出口がありますので、
 そこから出て駐車場に向かってください。ごゆっくりどうぞ」

女の人は自分らの背中を押すようにして中に入れるとガシャンと扉を閉めました。
その部屋に入った途端に自動で照明がつき、10畳間くらいの広さでしたが、
壁はやはり丸太を組んだもので、その4面にびっしりと写真がピン止めされていました。
どれもA5サイズくらいで、モノクロの片目だけを写した写真です。
はっきりわかりませんが、フィルムカメラで撮ったもののように思われました。

全部が開いた片目の写真です。女も男も、老人も子供も、
外国人と思われる目もありました。どの目も極限いっぱいまで見開かれています。
あ、目が右か左かはバラバラだったと思います。
実際の目よりも拡大されていて、眉や鼻の一部が写っているものは少なかったんですが、
どの写真からも驚きの感情が読み取れるような気がしました。

「うへぇ、何だよこれ。趣味悪いな」自分がそう言うと、彼女は「いや、けっこう面白いよ」
「そうかなあ」などと言いながら5分も見ていたでしょうか。
自分は先ほど入ってきた鉄扉のノブを回してみましたが、
言ってたように鍵がかかってました。写真はざっと1000枚以上はあり、
すべては見きれないので先に進むことにしました。

さっきの鉄扉とは違って木の軽い引き戸を開けると、
次の間も最初とほとんど同じつくりをしていて、壁に目の写真が貼られていました。
ただ最初の部屋よりも数が半分以下になっていました。
写真はすべて閉じた目の写真です。まぶたの写真といったほうがいいでしょうか。
もうこのときには自分はすごい違和感を感じてたんですが、
彼女が熱心に見てるので、しかたなく写真を眺めていると、
さっきの開いた目のと雰囲気が似ているが何枚かありました。
同じ人かもしれないと思いました。まぶたの写真からは悲しみみたいなものを感じました。

次の間はやや小さい部屋で、やはり写真が貼られていましたが、全部で30枚くらいでした。
モノクロではなくカラー写真になっていましたけど、
写っているものがなんだかよくわからないんです。
全体的に暗いトーンで、赤と黒、緑と黒などの色合いの中に、
白っぽい丸いものが浮遊している。そういうモチーフが共通している写真でした。
「うーん、これ何だろ」と言うと、首をかしげて写真を見ていた彼女が、
「これ悪いものだよ、うまくは説明できないけど。ここ出たほうがいい」
切迫した声で答えて、自分の手をとって小走りに次のドアに向かいました。

ドアは会社などにある普通の一枚板のドアでしたが、
開けると二畳くらいのせまい空間で2人が入り込むとスペースはほとんどありません。
写真はなく、丸木の四方と低い天井にたくさんの四角い穴が開いていました。
どの穴の奥にもカメラのレンズが見えました。
それらが一斉にシャッター音をたてました。
「カシャ、カシャ、カシャ、カシャ、カシャ、カシャ、カシャ、カシャ、カシャ、カシャ、
カシャ、カシャ、カシャ、カシャ、カシャ、カシャ、カシャ、カシャ、カシャ、カシャ・・・」

呆然としている自分たちに向けて、
数十台のカメラは10秒ほど連続でシャッターをきり続けていました。
それが鳴り終わると「これで展示は終わりです。ご苦労様でした」
と機械の自動朗読のような声が響き、突きあたりの壁が上に持ち上がりました。
転げるようにそこを出るとバタンと大きな音を立てて板が戻り、
自分たちは目館の横に立っていました。
「最後のは何だ?アトラクションにしてはやりすぎじゃないか。
 写真は個人情報だろう。勝手に撮るなんて、文句をつけてやろう」
そう言いましたが彼女は押し黙ったままでした。おびえているように見えました。

目館の玄関まで戻ると、入り口が閉まっており休館の札がかけられてました。
ガラス戸とかはないので中の様子はわからないし、
叩いても反応がないんで不承不承車に戻り、発進させました。
彼女はがずっと言葉を発しないので、
「なんだよあれ、いかなきゃよかったな」と言ったら、
「三つめの部屋のあれ、心霊写真だよ。心霊写真の幽霊の目。・・・今考えると
二つ目の部屋のまぶたは亡くなった人のかもしれない」ぼそっとこう答えました。
「おいおい、不気味なことを言うなよ」

それから市内に入ったんですが、彼女の様子が変で楽しくないので、
その日は帰ることにしました。帰りも同じ峠道を通ろうとしたら、
彼女が「高速にして」と言いました。それから1か月くらいして、
彼女とは別れたんです。やっぱりあの目館でのことが尾を引いていたと思うんですよ。
で、その目館なんですが、もう一度そこを通ったときに探したものの、見つからないんです。
場所は間違えてません、同じところに看板がありましたから。
ただ、看板も内容が変わってって、市内にある総合病院の案内広告になってたんです。
わけのわからない話ですみません。





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