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蚕の夢の話

2020.04.20 (Mon)
bigbossmanです。みなさんはよく夢を見られるほうですか?
自分はあまり見ません。寝て起きるとすぐ朝になっているという
感じです。占星術師なので、晴れていれば夜中に天測をします。
ですから、まとまった睡眠時間は取れないので、そのことと関係が
あるのかもしれません。今回もまた、実業家にして霊能者であるKさんと、
大阪市内のバーで一杯やりながらうかがった話です。
「なあ、bigbossman。夢というのは何のために見るんだ?」
「そうですね、心理学と脳生理学の分野から研究されて、
 いろいろなことがわかってきています。ただ、一番の問題である
 何のためにということは、決定的な結論は出てないみたいですね。」
「でも、仮説はあるんだろ」 「はい。よく言われるのは、昼に起きた

 出来事を整理するためということです。人間、生きてれば楽しいことも
 嫌なこともありますよね。その形を整え、記憶として脳に
 取り込みやすくする」 「ふうん、じゃあ、俺らの記憶ってのは、
 現実と違うってことか」 「いや、そういうわけじゃなく、
 重要な事実が書き換えられることはありません。うーん、どう説明
 したらいいですかね。あ、精神的勝利って言葉がありますよね。
 ひどい目に遭ったとしても、その結果を心の中で都合よく解釈して
 自分の勝利として納得することです。中国の作家 魯迅が「阿Q正伝」
 という作品で書いてますが、それと似たことが夢の中で起きてる」
「わかったようなわからないような話だな。じゃあ、大勢の人間が
 同じ夢を見るなんてことはあるか?」 「うーん、あると思いますよ。

 それ、精神科医のユングという人が言い出した集合的無意識に関係してる
 みたいです。人間一人ひとり、個性や立場は違っていても、
 心のなかには共通した領域がある。それをユングは集合的無意識と呼んだ。
 例えば、男の子だったらいつか父親を乗り越えて独立していかなくちゃ
 ならないですよね。それが怪物と戦って倒す夢となって現れるとか」
「ああ、何となくわかる気はする」 「あとまあ、世間に起きてる
 出来事に影響されることはあると思います。今、世界はコロナウイルス
 流行の騒ぎで一色でしょ。ですから、各国の心理学者の共同研究で、
 悪夢を見る人が増えているという統計結果が出てます。ウイルスは目に
 見えないし、いつ自分を襲ってくるかわからない恐怖がありますから」
「なるほど、それもそうだろうな」 「何か夢に関した事件を

 解決されてるんですね。聞かせてくださいよ」 「いいけど、最近のこと
 じゃないからな」 「お願いします」 「あれは、だいぶ前の話だ。
 昭和の40年代。山間に人口1500人くらいの村があった。
 今はもう市町村合併でなくなったが。その村は良田がなく、江戸時代以前から
 養蚕で暮らしを立ててた。養蚕ってわかるか」 「それくらいわかりますよ。
 蚕を飼って絹糸を取るんでしょ」 「そうだ。でな、蚕は一部を
 のぞいて繭玉のときに煮てしまうだろ。殺生なわけだ。
 だから、村の奥にはオカイコサマをお祀りする古い神社があった」
「はい」 「ところが、村の暮らしは退屈だし、現金収入も多くはない。
 それで、若者がどんどん都会へ出ていってしまう」 「はい」
「そんなときに、村を突っ切って流れる渓流の水源をダムにしないかという
 
 話が持ち上がった」 「ああ、時代を感じますね。昔はその手の話は
 よく聞きました」 「それが実現すると、村はダム湖の底に沈んでしまうが、
 かなりの額の補償金が出る。引っ越して商売を始められるくらいのな」
「はい」 「当然、賛成する者と反対する者が出てくる。村の年寄は
 大方が反対。これは環境保護がどうこうということではなく、
 生まれ育った土地を捨てられないという思いだ」 「うーん、そうでしょうね」
「いっぽう、村で養蚕を生業にしていない者、あるいは養蚕農家でも
 若い世代はダム建設に賛成した。このまま山の中で朽ち果てていくより、
 街に出て一旗揚げたい。仮に失敗したとしても、そこには希望がある」
「ああ、それもわかります」 「ということで、村を二分して
 大揉めに揉めたわけだ」 「で、どっちが優勢でした?」

「ダム建設賛成派がやや有利ってとこだったが、その差はほんのわずか。
 そのうちに村長選挙の時期が来て、どちらの陣も候補を立てた」
「もとからの村長は?」 「70歳を過ぎてたんで引退したんだ」
「ああ、で?」 「村に数本しかない舗装道路を選挙カーが走り回り、
 家族でも賛成と反対に分かれる家があったりして、村中がとげとげしい
 雰囲気になってきた」 「で?」 「その最中に、夢をみる人が増えて
 きたんだよ」 「どんな」 「最初に見たのが誰かはわからない。
 蚕神社の神主だったとも、引退した村長だったとも言われてる」
「はい」 「自分が夜、蚕神社の境内に立っている夢。神社の社殿の
 後ろ側に大きな白いものがある」 「繭ですか」 「そうだ。
 はあ、でかいと思って見ていると、繭の上辺がほころび始め、

 繭の大きさに釣り合った巨大な蛾が産まれ出る」 「うわ、モスラ」
「こら、茶化すんじゃない。映画のモスラほどは大きくはないが、
 それでも人間の3~4倍はあったそうだ。それが立って見ている
 自分にぶわっと白い鱗粉をかけ、夜空に飛んで消えていく」
「うーん」 「どっちの陣営も選挙本部に集まるだろ。そのときに
 夢の話をする者が出てきて、あ、俺も見た、同じものを見たと
 皆が口々に言う。後で俺が調べたところでは、村の有権者の
 7~8割が同じ夢を見ている」 「1000人近いですよね」
「ああ。その話は、両派の間で持ちきりだったが、解釈が難しい。
 ダム賛成派は、あれはオカイコサマがこの地を離れるのだから、
 建設に賛成されていなさるとなったし、

 反対派は、そもそもダム建設に反対だから御神体が姿をお見せに
 なったのだと言う」 「うーん、たしかに、どっちの言い分も
 わからないことはありません」 「で、投票日まで1週間ほどのときに
 俺に調べてほしいと連絡が来た。依頼者は村の長老の一人だが、ダム建設に
 関しては中立。その殺気立った雰囲気の中に入っていったわけよ」
「大変でしたね」 「もちろん、俺も中立の立場で聞き取りはしたんだが、
 しょせん他所者だしな」 「で?」 「ダム賛成派の夢は、どの人も
 みな同じだったんだが、反対派の中に何人か・・・俺が調べた
 かぎりでは壮年の者が7人、飛び立つオカイコサマの翅が白ではなく、
 真っ赤だったという者がいたんだ。まあ、全員にはあたれなかったから、
 数はもう少し多かっただろう」 「どういうことです?」

「いや、そのときは俺にもわからなかったが、たぶんよくないこと
 だろうとは考えてた。聞いた話では、夢の中で真っ赤な蚕が頭上を
 飛び去るとき、鱗粉を浴びて全身が赤く染まったってことだったから」
「で?」 「投票日を2日後に控えた真夜中、賛成派の候補者の家が
 火事になったんだ。高台に一軒だけある昔の農家の屋敷」
「う」 「そういう場所だから消防車が近づけず、朝まで家は燃え続け、
 後に、一家5人と使用人2人の遺体が焼け跡から見つかった」
「うう」 「黒焦げだったか、そのうちの何人かに頭を割られた痕跡が
 見つかり、県警が入って殺人事件として捜査をした。
 これは大きな事件で新聞にも載ったから、当時のものを探せばすぐに
 見つかるはずだ」 「・・・どうなったんですか」

「捜査は難航したが、最終的に反対派の者が3名、放火殺人の容疑で
 逮捕され、裁判で有罪になった。その3人は赤い蚕を夢で見ている」
「ちょっと待ってください。Kさんが見つけただけで7人なんでしょ」
「そこはよくわからんが、夢を見ても行動を起こさなかった者がいるんだろう」
「で、選挙は?」 「延期になったものの、新しい候補者が見つからず、
 反対派の勝ちになった。結局、ダム建設は行われなかったんだ」
「うーん、すごい話ですね。それから」 「でな、養蚕のほうもダメになって
 しまったんだ。次の年、蚕の幼虫に病気が流行ってほとんどが死んだ。
 次の年も同じ。その村はダムもできず、養蚕も成り立たずでどんどん人が
 減っていき、3年目、オカイコサマの神社が不審火で焼けたが死傷者はなし。
 ただ、そのとき残った村の者の多くが、また同じ夢を見たということだよ」



 

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