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モビール

2014.01.21 (Tue)
大学4年のときのことだ、ダチらと4人で心霊スポットにいったんだ。
夏休み中の7月の深夜だった。30か31日だったはずだ。
行った先は廃墟になってるパチンコ屋で、
経営難でつぶれて支配人が焼身自殺したとか、女が連れ込まれて殺されたとかの噂があった。
まあ真偽はわからないんだが、ガラスの散らばった店内に焼け焦げがあったのは確かだ。
そこに行って写真を撮った。それだけのことだったんだよ。
別におかしなものを見たり声を聞いたりもしていないし、スプレーで落書きとかもしていない。
後で見た携帯の写真にもおかしなものは写ってなかった。
ただ帰りがけに、ダチのうちの一人のTが頭が痛いと言い出したんで、そいつのアパートまで送った。
それだけだったんだ。

ところが、Tが次の日から連絡がとれなくなった。
休み中だからそれは別に不思議でもないんだが、
バイトも無断で休んでると同じバイトのやつから聞いたんで、
携帯にかけても電源が入ってないようなんだ。
Tはメールなんかもしょっちゅうしてくるやつで、帰省したとしても携帯を切ってるのが変だ。
それでTといちばん親しかった俺が、夜の9時頃に様子を見に行ったんだよ。
安い学生アパートの2階にあがってTの部屋のドアをノックしたが返事がない。
ただ中の電気はついているのが上の明かりとり窓から見えた。
ノブを回すと開いてるんで、いちおう「入るぞ」と声をかけてドアを開けた。

入ってみて驚いた。靴脱の先にもう一枚ガラス戸があるんだが、
そこも開いてて部屋の様子が一目で見えた。Tが一人で部屋の真ん中に座ってた。
まわりにコンビニ弁当の空やら飲み物のペットボトルが積まれてる。
そして天井からいくつものモビールが畳すれすれまで下がってた。
モビールって知ってるだろ。ヒモで上からつるして、いろんな飾りがついてくるくる動くやつ。
あれが10個ちかく下がって回ってるんだ。
「おい何してんだ、大丈夫かよ」と言いながら上がりこむと、
そのモビールがいろんな神社のお守りで作られてることがわかった。
中には破魔矢の端を糸でつないでバランスをとってる部分もあった。

「何だこれ、何やってるんだ」と座り込んでいるTの腕をとって聞くと、
Tは我に返ったような顔で「ああ、お前か」と言い、力なく立上った。
俺は部屋の戸締まりをしてTを連れ出し、近くのファミレスで話を聞いた。こんな内容だった。
「あの心霊スポットに行った夜に、頭が痛くなってお前らに送ってもらっただろ。
あの夜に寝てたら、幽霊が壁から顔を出すんだよ。どんなって・・・幽霊だよ、男かも女かもわからない。
髪が長いから女じゃないかと思うんだが、その頭が少しずつ壁から現れて、
部屋の中に髪をばしゃっと垂らすんだよ。それ以上は入ってこない。
幽霊は立ってるんじゃなくて、横になって頭の天辺から垂直に入ってくるんだ。
あと床からも生えてくる。でも額のとこで止まるんだよ。
天井からも生えてくることもある。それで怖いから幽霊を監視してたんだよ」

まったく意味不明で、頭がおかしいやつの話としか思えなかった。
俺が「あのモビールは何だよ」聞くと、Tは、
「俺は美術科だろ。それで卒業制作にモビールやろうと思って材料を買い込んで、
部屋に試作したのを吊るしてた。それが、壁から出てくる幽霊に微妙に反応することに気づいたんだ。
同調すると言ったほうがいいかも。その揺れを見てると次にどっから出てくるかが何となくわかるんだ」
完全にイカれてるなと思ったが、
「まさか最初からお守りモビールを制作するつもりじゃなかったんだろ。あれはどうしたんだ」と聞くと、
「幽霊には御札やお守りっていうじゃないか。それで護国神社から大量に買い込んできたんだ。
いろいろ調節して、そしたら次にいつどっから幽霊が出てくるかほとんど分かるようになった」

「何言ってるんだ。幽霊が怖いなら実家に帰ればよかったろ。
でなきゃ俺らのとこに泊まりにきたっていいし、何で幽霊の出る部屋にずっといるんだよ」
こう言うと、Tはしばらく考え込んでいたが、
「・・・そう・・・だよな。そうすればよかったんだな。
・・・だけど、幽霊が次にどっちから出てくるか気になってしかたがなかったし、
モビールで予測することに夢中になってた。
・・・それに、幽霊の顔が出てくるのも見たい気もしたんだ、少しだけど」
これは病院ものだと思ったから、Tをそのまま強引に俺の部屋に連れてって泊まらせることにした。
次の日はとにかくどっかの医者に連れてって診察を受けさせるつもりだった。
ところが、俺の部屋に寝かせて朝起きてみたら、隣で寝ているはずのTの姿はなかった。

その日は昼からバイトがあったんだが、Tをそのままにしておくわけにもいかず、
仲間にざっと事情を連絡して、バイトは休んでTの部屋に行った。
昨夜と同じく鍵は開いていて、入ったら目の前にTがぶら下がっていた。
玄関と部屋のしきりの鴨居に太い釘を打って、それにベルトをかけて首を吊っていた。
足が玄関のコンクリすれすれまできていた。
それだけじゃなく、Tのシャツの肩から左右に破魔矢がとび出していて、
どっちも、その先に糸で結んだお守りが揺れて回っていた。
あまりのことに俺は玄関先で尻もちをついたが、そのまま後じさって携帯で警察に連絡した。
長い調べがあって、Tの死は自殺ということで決着したが、
部屋中に吊るしてあるお守りモビールの説明に警察が納得したとは思えなかった。



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