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広告塔の話

2020.04.28 (Tue)
あ、どうも山本と言います。北関東の県の〇〇市で、市民市場で
働いてます。よろしくお願いします。これね、俺じゃなくて、
俺の叔父さん、母親の弟なんですけど、その人の身に起きたことなんです。
けどね、何が何だかわけがわからなくて。全体像がつかめないって言うか。
ここの人たちは、その手のことに詳しいって聞いたんで、
話をしにきました。それでね、4ヶ月くらい前、その叔父さんから
電話がかかってきまして。あ、すんません、叔父さんは60代で、
高校卒業してからずっとJAに勤めてて、つい去年退職したばかりです。
で、用件は、ご馳走するから飲みにこないかってことで、
まあ、叔父さんとはそれまでもよく飲んでたんですけど、
居酒屋とかが多かったんです。それが、今 寿司屋にいるから、

好きなネタ、いくらでも注文していいぞってことで。そりゃ豪勢だ
と思ってさっそく出かけたんです。言われた先は駅前にある高級な店で、
そんなとこ俺、入ったことなかったです。おそるおそる暖簾をくぐると、
叔父さんがカウンターで一杯やってて、俺の顔を見ると、
「まあ座れ、何でも好きなもの頼んでもいいぞ、腹いっぱい食え」
「いいんですか」と答えると、「ああ、ウニでもアワビでも大トロでも、
 何でも」って。アワビなんてネタ書きに「時価」ってあって、
いくらするのか見当もつかない。「ご馳走になります。にしても、
 すごいじゃないですか。何か臨時収入とかあったんすか」
「それがなあ、ほら、〇〇橋の土手の横にうちの土地があるだろ」
「ああ、はい」 「あれが売れたんだよ。それもかなりの高値で」

こんな話だったんです。その叔父さんの土地のことは知ってて、
20坪くらいかなあ。建物を建てるにしてはせまいし、不定形だし、
川そばで湿気が多い、とうてい売れるような場所じゃなかったんです。
叔父さんもそれ知ってるから、ずっと寝かせてたんですね。
「へええ、誰が買ったんですか?」 「広告屋だよ」
「え? どういうこと」 「何でもな、広告塔を建てるらしいんだよ、
 看板のついた。〇〇までこの先、直進2kmとかってやつ」
「ああ」そんときは、なるほどなって思ったんです。そこの橋は
かなり車通りも多いし、川近くには高い建物もないからよく見える。
「いくらだったんすか」 「坪〇万」 「そりゃすげえ」 
「だろ。こないだ契約済ませてな。俺もな、まさか売れると思って

 なかったのよ。あんなことがあった近くだしな」 「ゴチになります」
あんなこと、というのは、その土地から上がった道路、橋の欄干のあたり
なんですが、そこで朝、集団登校中の小学生に車が突っ込んだんです。
子どもが1人亡くなって、4人が大ケガ。現場には長い間、花束なんかが
供えられてました。てことで、その日は腹いっぱい高級寿司を堪能させて
もらいまして。でね、そこの道、俺いつも通勤で通ってたんです。
しばらくは畑が残ってましたが、やがて鉄パイプ製の頑丈な柱が
4本立って、それが広告塔みたいでした。電信柱より高いくらい。
で、1ヶ月ほどして、塔の一番上にでかい看板が設置されました。
「〇〇セレモニーホール」って、冠婚葬祭業です。けどね、俺らの
市は過疎で、結婚式よりも葬式のほうが何倍も多いんだと思います。

そこの道をまっすぐ行って右に曲がってすぐ、そのホールはあるんです。
何かで叔父さんに電話したとき、その話をしました。
そしたら「ああそうか」程度の反応だったんです。俺もね、そんときは
何とも思わなかったんですが・・・ ほら、最初に俺、市場に勤めてるって
言ったでしょ。朝早いんです。6時前には家を出ます。でね、
その時間だとほとんど車も通ってなくて、軽トラから看板を見てたんですけど、
上にカラスがたくさんとまってたんです、何十羽も。そんときからですね、
何か気味悪いなあと思い始めたのは。それから2週間くらいして、
ホールのの下に別の看板を設置する工事が始まって、できたのは、
「〇〇胃腸病院」でした。その病院、地元の評判がよくないんですよ。
中には、〇〇に行けば殺される、とまで言う人がいるくらい。

実際、何年か前には医療事故の訴訟があって、病院側が敗訴してます。
それで、ホールの下に病院の看板ができると、カラスがそっちに移って
きたんです。これ、変ですよね。しかも、看板の裏側でしきりに何かを
突くような動作をしてる。あまり奇妙なんで、物好きだと思われるでしょうが、
1回だけ時間があるとき、車を停めて看板の下に入ってみたんです。ええ、
そこの土地フェンスに囲まれてるんですけど、低いので大人なら簡単に
またぎ越せます。中に入ると、カラスがいっせいに鳴き始めて、
かなりビビりましたが、塔の裏側に回ると、病院の看板の上辺から、
何かがヒモで10個くらいぶら下がってたんです。大きさは10cm
くらいかなあ。高くてよくわからなかったけど、大きな木の葉で何かをくるんだ
もので・・・ちまきに似てるって言えばイメージがつかめるでしょうか。

いや、それが何なのかはまったくわからなかったです。そうしてるうち、
上にいたカラスたちがだんだん下に降りて俺に近づいてきて。
一匹なんか、頭上のすぐそばまで来て、威嚇するように鳴いたんです。
慌てて退散しました。で、ですね、また2週間ほどして、
最下段に看板が設置され、それ「〇〇寺」っていうお寺さんのもの
だったんです。ええ、市に古くからある寺で、やはりその道沿いです。
ただ、さすがにお寺さんですからね、悪い評判とかはなかったと思います。
ええ、そうです。カラスの群れはその看板まで降りてきてとまってました。
もう見に行かなかったです。ちょうどその頃、叔母さんから電話があって。
この叔母さんってのは、最初に話した叔父さんの奥さんです。
内容は、「なんだかうちの人、この頃元気ないのよね。

 毎年やってる畑仕事も途中でやめちゃったし」というもので、
「え、そりゃ60歳過ぎてるんだから、どっか具合が悪いとこがあっても
 不思議じゃない。病院で精密検査してもらえば」
「うん、そう思って勧めてるんだけど」 「あ、〇〇病院はやめたほうが」
「とんでもないよ! あんなとこ行かせられない」こんな話になりまして。
でね、この頃になって、俺、奇妙なことに気がついたんです。
これと同じ広告塔が他にもあるってこと。いや、広告塔なんて
どこにもあるけど、ついてる看板の順番が、上から「〇〇ホール」
「〇〇病院」 「〇〇寺」と同んなじで。まあねえ、同じ広告会社のだから
なのかもしれないんですけど、気にはなりますよね。
俺が見つけたかぎり、そこの道をはさんで、あと2つあったんです。

で、ほら、今は簡単にパソコンで地図見れるでしょ。市場のパソコンで
地図を出して、その3ヶ所の広告塔に点をつけてみました。
そしたら、細長い二等辺三角形になり、その中心にあたる場所に
〇〇寺があったんです。これもね、道案内をかねた広告なわけだから、
不思議なことはないのかもしれないですけど・・・
1ヶ月前です。朝にいつものようにその道を通ってたら、お寺の看板の
下が真っ黒になってました。上手く言えないんですが、
黒い、人間くらいの大きさの蓑虫が下がってるような感じ。何だろう?
車を停めて近づいていくと、黒いのはカラスが集まってるからで、
その間からかろうじて見えるのは人の体。こりゃ大変だ。
そう思ったものの、カラスに襲われそうで近づけない。

道の脇に落ちてたコンクリ片を拾って投げたんです。それは蓑虫の
中心にあたり、ギャーギャー言いながらカラスが散りました。
やはり人でした、首を吊った。カラスはまたすぐ集まってきたんで、
これはダメだと思って警察と救急に通報しました。
「その場にいてください」って言われて待ってたら数分で到着し、
警官2人が警棒を使ってなんとかカラスを追い払い、救急隊員がヒモを
切って下に降ろしたんですが・・・それ、叔父さんだったんです。
あちこちカラスに突かれて肉が破れ、目は両方とも失くなってましたが、
叔父さんだとわかりました。その前日、看板とは別の病院で末期癌を
宣告されたってことでした。それで、叔父さん、菩提寺の〇〇寺の
住職が来て、〇〇ホールで葬式をあげたんですよ。





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