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知能と50ポンド紙幣

2020.05.05 (Tue)
アーカイブ263

イギリスの新しい50ポンド紙幣の肖像に、コンピューター科学の先駆者で
暗号解読者のアラン・チューリング(1912~1954年)が採用される
ことが明らかになった。イングランド銀行総裁が15日発表した。

チューリングは第2次世界大戦中、ナチス・ドイツの暗号解読に
多大な役割を果たし、連合国の勝利に貢献した。イングランド銀行の
マーク・カーニー総裁は、マンチェスターの科学産業博物館で
新50ポンド札の顔を発表。「アラン・チューリングは傑出した数学者で、
その業績は現在の私たちの暮らしに巨大な影響を与えた」と述べた。

(NEWS JAPAN)

sssdert (6)
紙幣の顔になるアラン・チューリング

今回はこういうお題でいきます。なるほどねえ、アラン・チューリングが
紙幣の顔になるわけですか。イギリスも思い切ったことをしましたねえ。
自分が思うに、これは彼の業績に対する評価とともに、
贖罪の意味もあるんじゃないかと思います。
どういうことなのかは、おいおい書いていきます。

多くの顔を持つ人物でしたが、基本的には数学者、論理学者ですね。
仮想的な計算機で、現在のコンピュータの基礎になったチューリングマシンを
設計したことで知られ、「人工知能の父」とも呼ばれます。
また、機械が知的であるかどうかを判定する「チューリング・テスト」も
考案しています。それについては後で詳しく述べます。

有名な業績としては、第2次世界大戦中、ナチスドイツの暗号、
「エニグマ」の解読に取り組み、解読機ボンベを作成して成功したこと。
これにより、連合軍側の勝利が2年早まったとまで言われ、
戦争の英雄としても評価されています。

ナチスドイツのエニグマ暗号機
sssdert (3)

今回の選定にあたっては、近年亡くなったスティーブン・ホーキング博士など
12人の候補者の中から選ばれたんですが、選考理由として、
「現在のわれわれの生活に大きな影響を与える研究をおこなった、
非常に優れた数学者」との声明がイングランド銀行から出されています。

ちなみに、イギリスの通貨の正式名称は「スターリング・ポンド」で、
50ポンド札は最高額ですね。日本円にして6400円くらいです。
これまでの50ポンド札はジョン・フーブロン、
日本では知られてない人物で、自分も初めて名前を聞いたんですが、
イングランド銀行の創始者のようです。

さて、たいへんな天才であったチューリングですが、晩年は不幸でした。
1952年、自宅に泥棒が入ったことがきかっけで、
18歳の青年との同性愛関係が発覚し、逮捕されてしまうんですね。
窃盗の被害者だったのに、これは運が悪いとしか言いようがないです。

チューリングを取り上げた2014年の映画
sssdert (1)

当時のイギリスでは同性愛は違法で、刑務所に服役するかわりに、
大量の女性ホルモンの強制投与を受けることになります。
これにより男性機能が失われる、化学的な去勢措置です。
うーん、でもこれ、人権的に問題があるんじゃないでしょうか。

その2年後の1954年、41歳で自宅で死去。検死の結果は青酸カリ中毒で、
自殺と断定されます。イギリスで同性婚が法律で認められたのは
2005年、これとともに、チューリングへの政府の公式な謝罪を
求める運動が高まり、2009年、当時の首相が「非人道的な扱い」
を謝罪、2013年には、エリザベス女王が死後恩赦を与えています。

イギリスのLGBTデモ


おそらくですが、チューリングが最高額紙幣である50ポンド札の
顔に選ばれたのは、このあたりのことも関係してると
自分は思うんですよね。社会的少数者に対する配慮があったんじゃ
ないでしょうか。さて、ここから本題に入っていきます。

チューリング・テストとは、「ある機械が知的かどうか
(人工知能であるかどうか)を判定するためのテスト」で、一人の人間と
一つの機械が、それぞれ別の部屋の人間の判定者と文章によって会話をし、
判定者が人間と機械を区別できなかった場合、
その機械はテストに合格したことになります。

ただ、このテストについて、哲学者の間から批判が続出しました。
有名な哲学者のジョン・サールが、「中国人の部屋」という思考実験を
つくって反論しています。中国人の部屋とは、「ある小部屋に小窓があり、
中に中国語を理解できない人物がいる。外から小窓を通して中国語を
書いた紙が差し込まれてくるが、部屋の中の人物はそれに対して

「チューリング・テスト」
sssdert (2)

どう答えればいいかすべてが書かれたマニュアルを持っている。
彼はマニュアルにある中国語をそのまま紙に書き写し、部屋の外に
出してやる。すると、中の人物はまったく中国語を理解していないのに、
外の人々は、部屋の中には中国人がいると思いこむ」こんな感じです。

これだと、中の人物が中国語で考えることができなくても、
外からは知能を持ってるように見えてしまうんですね。同じことが
コンピュータでも成り立ち、知能を持たなくても会話ができるのではないか
という反論になっているわけです。これ、みなさんはどう思われますか。

さて、この他にも、チューリング・テストには、判定するのが人間なのは
おかしい。人間の判断はあいまいであり、客観的な評価とは言えない
といった反論もあります。ちなみに、2014年イギリスで行われたテストで、
ロシアのAIが30%以上の確率で複数の判定者たちに人間と間違われ、
史上初めての「合格者」となりました。

思考実験「中国人の部屋」
sssdert (4)

ただ、どうでしょう、基準が甘い気もします。7割近い人が「人間ではない」と
見破ったわけですからねえ。最後に、これについての自分の考えを述べると、
「知能とは何か」という定義がはっきりしていないと思うんです。
人間が会話するとき、完全に知能だけで行ってるはずがないですよね。

「この人に気に入られるように話したい」とか「自分をよく見せたい」、
「相手をやり込めたい」など、そこには、個人の感情が入ってるんじゃ
ないでしょうか。人間の場合、知能と感情は切り離せない気がするんです。
そしてその感情は、自己保存や種保存の本能などから
きているものが多いと思います。

さてさて、ということで、人間は本能があり、感情があり、その上に
知能が構築されている。ですから、コンピュータが知能を持つためには、
前提として、自我を持ち、本能を持っている必要があるんじゃないでしょうか。
ま、素人の考えたことですので、話半分で聞いておいてください。
では、今回はこのへんで。

sssdert (1)




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コメント
確かに現在のAIと呼ばれているのの多くは、リアリタイムなセンシング技術で判断して制御するだけのコンピューターですね。少し進んでるものは学習機能を持っているが、単に記憶しているだけで、思考、類推する機能とはほど遠い。
大きな壁は自我を持つか否かというところですね。現代技術とその領域の線引は難しいでしょう。
また、現代の多くのノイマン型コンピュータでは実現は難しいんじゃないでしょうか。いくら複雑な条件判断を仕込んでも正確で早いと言うだけで、人間の脳の仕組みとはちがいます。曖昧さや間違いを許容するようなタイプのコンピュータでないと人間のシナプス回路に近い、想像、飛躍、憂慮が実現できないような気がします。
形名 | 2020.05.05 11:26 | 編集
コメントありがとうございます
AIがどう進化していくかはなかなか難しいところで
人間に似せる、人間の思考形態をまねるという発想が
よいとも言い切れないんですね
シンギュラリティが進み、AIがAIを開発するようになってくれば
何か新しいものが出てくるのかもしれません
bigbossman | 2020.05.05 20:54 | 編集
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