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小学校の机の中の話

2020.05.07 (Thu)
あ、ども、よろしくお願いします。俺・・・僕、百田って言います。
電気工事会社に勤めてます。工業高校出て就職して、
今年で10年になるんです。ほんとは電力会社に入りたかったけど、
僕、大学行けなかったし、それでその下請けの会社に。
何から話してけばいいのかな、あんまり人前でしゃべることないんで、
わかりにくいかもしれません。10日前からですね。
小学校のときの夢を見たんですよ。誰もいない教室で
一人だけ自分の机に座ってる夢。でね、机の中をペタペタ両手で
さわってる。中はひんやりしてて何も入ってないんです。
そうですね、それを10分以上は続けてる夢なんです。
変ですよね、夢ってふつう、もっと荒唐無稽なもんじゃないですか。

ところが、ストーリーも何もなくて、ただ同じ場面がずっと。
え、小学生のときの自分なのかって? それがねえ、よくわからないん
ですよ。あたり前だけど、自分じゃ自分が見えないし、
手もね、さっき言ったように机の中でしょ。うーん、教室は
見覚えがあります。たぶん小6か小5のときの教室だと、
そんときは思いました。というのは、そこの小学校は3階建てで、
1階が1・2年、2階が5・6年、3階が3・4年てなってて、
夢の中で窓から見える風景がね、どうも2階だったような気がしたんです。
過疎地だったんで、どの学年も単級で生徒は多くて20人、
田舎だったんですよ。あと、外の天気は晴れてた気がしますが、
午前か午後かもわからない。僕にしてみれば気がかりな夢で、

とにかく大事な物が机の中にあるはずなのに見つからない。
いや、怖くはなかったです。それよりなんか、もの悲しいような、
寂しいような気持ちで。それで、この夢、それから3日続けて見たんです。
まったく同んなじ内容を。ただごとじゃないですよね。
その小学校、もうないんです。僕が卒業して4年して、
廃校になったんです。一番大きい小学校に吸収されて、その地区の
生徒はスクールバスで送り迎えされてるみたいです。
それでも、町にしてみれば予算削減になるんでしょう。
もちろん実家はその町にあって、両親と兄夫婦が住んでます。
でね、3日目に同じ夢を見た翌日が土曜日で休みだったんで、
車で実家に帰ったんです。いや、盆と正月しか帰省しないんで、

親はびっくりしてましたね。帰らないのは別に親と仲違いとかしてる
わけじゃなくて、兄夫婦の子どもがまだ小さいんで遠慮して。
でほら、過疎の町なんで、小学校の同級生も多くはそこに住んで
ないんですよ。仕事がないんで、東京か仙台に出てます。
だから友だちに連絡するなんてこともなくて、土曜日は実家で
ゆっくりして、日曜に小学校の跡地に行ってみたんです。
ええ、建物はもうないです。フェンスで囲まれた公園みたいに
なってました。なんて言うかわかんないけど、犬とかのペットを
自由に走り回らせることができる。そんときも、何人か人がいましたよ。
でね、車停める場所に、派手なスポーツカーがあったんです。
ポルシェでした。あの田舎にそんなの乗ってる人はいないし、

誰のだろうって思いました。とにかく、なんの解決の糸口もつかめないまま、
学校があった裏手のほうに回っていきました。そこはススキがぼうぼうに
生えた草地で、川の土手につながってるんです。あ、こりゃ
ヤブ蚊だらけだと戻ろうとしたとき、「よう、百田じゃねえか」って
後ろから声かけられて。ふり向いてあっと思いました。
スーツ着て縁なしメガネかけたやつが立ってて、一瞬で誰かわかったんです。
小中と同じ学年だった岸和田ってやつです。そいつ、田舎では珍しい
不良で、いろいろ事件を起こしてました。そんときの格好も、
まともな仕事についてるようには見えなかったんです。「岸和田・・・か?」 
「そうだ。久しぶりだな。中学校以来か」 「そうだな」 「今何やってる?」 
「電気工事」 「底辺だな」こんな会話をしまして。

僕のほうは、岸和田の仕事は聞かず、「あのポルシェお前のか、すごいな」
「まあな」 で、2人して駐車場に戻りかけたとき、
岸和田が「ああ!」と言って草の中を指差したんです。何があったと思います。
机ですよ。小学生用の古い机がひっくり返ってたんです。
岸和田が近寄って上下を戻し、汚れるのもかまわずスーツの袖で
天板を払いました。「これ・・・なんで一つだけこんなとこにあるんだ」
「わからん」 「俺らが使ってたやつじゃねえよな」僕もそんなわけは
ないと思ったんですが、天板をよく見ると、すみのほうに浅い穴が彫ってあって、
ほら、授業中かったるいときに、消しゴムのカスを丸めたやつで
ゴルフやる穴です。僕もね、それやってたんですよ。けど、それ以外には
落書きとかはなくて、僕らが使ってた机かどうかはわからなかったんです。

かがみ込んで机の中をのぞいても、何も入ってませんでした。
それ見てた岸和田が、「お前、どうしてここへ来たんだ」って聞いたんで、
どう答えていいかわからなかったんですが、「じつは、変な話なんだが、
 小学校の机の夢を見てな、それも3日続けて」そしたら岸和田が
「俺もだ」って言ったんです。これにはびっくりしました。 
それから車で町の中心部に出てファミレスに入ったんです。
そこで互いの夢の内容を話しました。僕はほら、さっき言ったように
とにかく机の中を探してる夢。けど、探しものが何かわからない。
それ聞いて、岸和田の顔が少し歪んだんです。言いにくそうにしてましたが、
「俺、お前が探してたもんわかるぞ。転校の記念品だろ、
 畑山からもらった」 「あ・・・」岸和田がその名前を出したら、

いちどきに記憶がよみがえってきたんですよ。畑山ってのは、
5年生の父親の都合で県庁所在地の市から転入してきて、6年の夏休み明けに
また別のとこへ転出してった生徒です。つまり1年半、小学校で
同級だったわけで。・・・畑山はイジメられてました。言葉が僕らとは
違ってましたから。イジメてたのは岸和田を中心とした男子の
グループで、暴力沙汰はなかったけど、仲間外れって感じでしたね。
クラスの中では僕が一番話をしてたと思います。そのせいか、
転校するって担任がみんなに話して、帰りの会であいさつした日の
掃除のとき、畑山が僕のとこに来て、「これ」って言って、
デパートの包み紙の細長い箱を渡してよこしたんです。
「いっしょに遊んでくれたから」みたいなことを言って。

掃除の途中だったから「ありがとう」ともらって、自分の机の中に
入れておいたのが、帰るときに見たらなかったんです。夢で探してたのは
もしかしてそれなのか、でも、どうして岸和田がそんなこと知ってるんだ。
そう思ったら、岸和田が「なくなってたろ。とったのは俺だ。
 お前が畑山から何かもらってるのを見てたから、何気なく近寄って
 机から盗んだんだよ。中はレーザーポインターだった。
 赤い光の出るやつ。俺がずっと持ってたんだが、いつのまにか
 なくしてしまった。でな、俺が見た夢ってのは、お前の机から
 それをとる場面なんだよ。同じのを3日続けて」 「・・・」
なんとなく納得いったような気もしたんですが、どうして今になって
そんな夢を見たかがわからない。「お前、畑山が何やってるか知ってるか」

岸和田がそう聞いたんで首を振ると、「じゃあ俺が調べてみるわ」その場は
連絡先を交換して別れたんです。翌日すぐ、岸和田から電話が来て「畑山、
 死んでた。交通事故らしい。俺らが夢を見た最初の日みたいだ」続けて、
「住所もわかったが、もう葬式は終わってるようだから、日曜に俺らで
 家に行って仏様 拝ませてもらおう」って。夢のこともあったんで承知して、
岸和田のポルシェに乗せてもらって行ったんです。畑山の家は実家のある
町とは別の県で、2人でチャイムを押すと畑山の母親が出てきて、
小学校の同級生だって言うと、すごく喜んで奥に通されました。
小さい遺影が祭壇に飾ってあって、まだ独身だったみたいです。面影は
残ってましたね。でね、驚いたのは、線香をあげるとき岸和田がぼろぼろ
涙を流したことですよ。それ以来、夢は見てません。まあこんな話なんです。





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コメント
 この話、妙に感情移入するというか琴線に触れるというか…最後の岸和田氏のくだりを読んだら本当に涙が出てきました。歳食った証拠でしょうか。
 人間、誰しも少なからず心残りや後ろめたさを抱えて生きているものですが、防衛本能ゆえか普段は表層意識に上らないようになっています。それがこういう特異な形で突きつけられたら、ねえ。
| 2020.05.09 18:49 | 編集
コメントありがとうございます
そうですね、この話は怪異はつけたりで
普通小説に近いような内容かもしれません
あと筒井康隆氏の「鍵」の影響も多少あるかも
bigbossman | 2020.05.10 00:24 | 編集
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