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祝くんの話

2020.05.22 (Fri)
南田って言います。よろしくお願いします。仕事はIT関係で、
今年32歳になります。あ、なんで年齢を言ったかっていうと、
この後の話と関係があるんです。小学校を卒業してから、
今年の3月でちょうど20年になったんですよ。
どっから話したらいいものか・・・あ、じゃあまずその小学校の
説明から。もうないんですけど、いちおう学校名と地域は
仮名にさせてもらいます。僕の出身は、新山町っていう
〇〇県の過疎地域で、人口はこの間 調べたら1500人を
切ってました。ろくな産業がないので、しょうがないんですよ。
若い人はみな町外に出てしまう。だいたい高校もないんですから。
それで、僕が出た新山第三小学校は、さっきちょっと言ったように

もう廃校になってるんです。僕が卒業して4年後ですね。
いや、よくもったほうだと思います。当時ね、6年生のクラスは
僕を入れて7人しかいませんでしたから。5年生も少なかったんで、
本当なら複式学級になるはずだったのを、町の予算で
まかなってくれてたみたいです。その7人の内訳は、
男子が4人、女子3人でした。ずっと幼稚園から同じだったし、
当然クラス替えなんかないんで、お互い、知りすぎるほどよく
知ってたんです。だからケンカすることなんてなかったと
記憶してました。けど・・・でね、その7人のうち6人とは
中学校でもいっしょでした。一人は別の市の学校に行ったんです。
高校は、女子2人が同じ普通高校だったかな。

それ以外はみなバラバラです。僕は広島市の高校から大阪の
大学に行って大阪で就職しました。それで、僕が就職してから、
両親は町を離れまして、今は広島に住んでます。そのときに
先祖の墓も移したんで、町にはずっと帰ってなかったんです。
小学校の同級生とは、一人だけしか連絡を取ってませんでした。
石川って言うんですけど、他のやつらがどうしてるかは、
そいつを通して少しだけ耳に入ってはきてました。
あ、スミマセン、なかなか話が前に進まないで。で、今年の3月の
はじめの週ですね。スマホに連絡があったんです。三沢っていう、
6年のクラスの学級委員長だったやつからです。
びっくりしました。三沢は中学前に転校したんで、

話をするのは20年ぶりだったんです。だから最初は誰か
わからなくて。僕の携帯番号は石川から聞いたってことでした。
「ああ、この番号で合ってた。久しぶり、元気にしてるとは
 聞いてたけど、声もあんまり変わんないな。それで、用件だけど、
 小学校の卒業式の後にタイムカプセル埋めただろ。
 20年後に掘りだすってことで。今年がほら、ちょうどその年だろ。
 だから同級生7人に連絡を取ってるとこだ」これを聞いて、
一気に懐かしさがこみ上げてきたんです。三沢の話では、
7人とも元気で、それぞれ多方面で活躍してるが、地元の町に
残ってるのは一人もいないってことでした。集まるのは3月末の
土曜日、後で正式な案内を送るから都合つけてくれって。

ここまで聞いて、気になることが2つあったんです。一つは、
僕らの小学校ってもうないんですよ。タイムカプセルはグランドの
バックネットの後ろにあるイチョウの木の近くに埋めたはずだけど、
それがまだあるかどうか。聞いてみたら、グランドはそのまま
残ってて、朝市の会場になってるってことでした。
イチョウの木もまだある。もう一つは、クラスの担任の先生です。
増村先生っていう女の先生で、僕らが4年生からずっと担任。
当時すでに退職間際だったんで、どうされてるかと思って。
そしたら、先生はご健在で、今もあの町に住んでる。
僕らはタイムカプセルをどこに埋めたか記憶があやふただけど、
先生はちゃんと覚えてて当日来てくださるって、三沢が言いました。

でね、それから3日してハガキで案内が届いたんです。
懐かしい、みんなと会えてうれしい、そのときはそれしか頭に
浮かばなかったんですが・・・ その夜に夢を見たんです。
6年の同級生が集まってて、みんな子どものときの姿でした。
だから僕もそうだったと思います。午前か午後かもわかりませんが、
下の地面にはイチョウの枯葉がたくさん落ちてました。
僕らが輪になって囲んだ真ん中で、スコップを持ち、背中を丸めて
穴を掘っている人がいたんです。ええ、担任の増村先生。
僕らは突っ立ったまま、ただ先生だけが動くのを見てました。
おかしい、これはタイムカプセルを埋めるときのことか。
けど、あのときはみんなにスコップを回して、一人ひとりが

少しずつ穴を掘ったはず。それと、先生が掘ってるのは すごく深い穴で、
人一人が横になって入れるくらい。そうしてどのくらい時間がたったか、
身じろぎもせずにいると、穴の底にスコップを突き立て、
腰を伸ばした先生は、ぐるっと首を回して僕らの顔を見渡し、
「どの子のせいでこうなった、どの子を埋めようか」と言ったんです。
背中がゾッとしました。先生の顔は無表情で、眼鏡に光が反射して
眼が見えませんでした。そして急にスコップを抜いて持ち上げると、
穴から半歩出て、一人の子の頭を横薙ぎにしました。
その子は悲鳴も上げず、前のめりに穴に転げ落ちたんです。
「何で、どうして?」わけがわかりませんでした。先生は落ちた子の
頭をスコップで一突きすると、上から土をかけはじめたんです。

誰が落ちたんだ? その場で一人ひとり顔を見て名前を思い出しながら、
数を数えたんです。1、2、3・・・6人いる。僕を入れて同級生は7人。
じゃあ、今穴に落ちたのはいったい? そこで目が覚めました。
3月に入ってだいぶ気温は暖かくなってたんですが、
歯がガチガチするほど寒気がきて震えてたんです。今の夢は・・・
穴に落ちたのは・・・祝?? そのとき、唐突に祝という言葉が浮かんで
きました。祝? けど、祝って誰だ? わからないけど知ってる、
でも思い出せない。ものすごくもやもやした気分でした。
祝というのがもし名字だとしたら、けっこう珍しいですよね。
そんな子に覚えはないはず、小学校6年間で転入生なんて来てませんし、
下の学年にもいない。でもね、それが何か知ってるんです。

夢を見たのはその1度きりでした。祝という名前について、
電話で石川か三沢に尋ねてみようかとも考えたんですが、夢のことだし、
なんだか気後れしてできなかったんです。小学校のときの卒業アルバムは
どっかにいってしまって、見ることはできませんでした。そして
3月の末の土曜日、当日4時にグランド脇に集合ということでしたので、
大阪から車で3時間以上かけて行ったんです。着いたのは4時ぎりぎり。
もうすでにみんな集まってました。男子3人、女子が3人。それと
増村先生も。長年会ってませんでしたが、面影が残っていて、
誰が誰かすぐわかりました。先生はご自宅から歩いてこられ、
すぐ近くに住んでいるということでした。いや、先生が年取ってるのは
そうだけど、こんな小さい人だったとは・・・まあ、僕らが大きく

なったせいなんですけど。挨拶をし、それぞれ近況を報告し合いました。
スコップは三沢が持ってきていて、先生が指示した場所に漬物石くらいの
石が置いてあり、木からはかなり離れた場所でした。「あなたたちのはここ、
 他の子たちのもあるのよ」先生がそう言いました。石をのけて、
三沢がそっと少しずつ掘り出したんです。そうですね、20cmほどで
金属の四角い缶が出てきました。映画のキャラがついたものです。
その中に、それぞれが20年後の自分にあてて書いた手紙と全員の
寄せ書きの色紙が入ってる。缶は修学旅行で大阪に行ったときの
誰かのお土産のもの。そこまで思い出して、あっと思いました。
祝が何かわかったんです。マイクロバス1台で行った僕らの
修学旅行で、2泊したのが「祝旅館」という小さな日本旅館。

その帰りのバスの中で、旅館での出来事でもめたんです。いや、ほんの
ちょっとしたことで、ここで言うのもバカバカしいような原因なんですが、
男子3人と女子3人が対立し、それは学校に戻ってからも続いてたんです。
先生はすぐに収まると思ってたようですが、どんどんエスカレートしていって、
とうとう男女で口もきかなくなって。「男子のせいよ」 「女子のせいだろ」
そんなときに、三沢が家から人形を持ってきたんです。それもお土産の
スパイダーマンのフィギュアです。三沢はおどけた口調で、「みんなの
 仲が悪くなったのはこいつのせいだから」そう言って大きく人形を
掲げて見せたんです。まあ、最初からたいしたトラブルじゃないので、
それでだんだんに収まっていったんです。人形はずっと教室のロッカーの
上に置かれてましたが、いつしか「祝くん」って名前をつけられて。

ええ、その泊まった旅館のことが頭にあったんですね。三沢は缶を取り出した
後も少し穴を掘り、「ほらあ、これ覚えてるか」そう言って、土まみれの
スパーダーマンを昔のように掲げてみせたんです。その後、場所を近くの
居酒屋の座敷に移して簡素な同級会になりました。ビールで乾杯し、
町に実家のある人は飲みましたが、僕はその日のうちに車で帰るつもり
だったので、ずっとウーロン茶でした。祝くんのことを覚えてたのは半
分くらいでした。自分が何で思い出せなかったのかはわかりません。
僕の他に夢を見たって話も出ませんでした。会では、まず先生から
一言いただいて乾杯し、自分あての手紙を読みました。子どもらしい
夢のようなことが書いてましたが、その中に「祝くんごめん」という言葉も
ありました。怖くなくて申しわけありませんが、まあ、こんな話なんです。

キャプチャ




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