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悪魔学入門「悪魔と山羊」

2020.06.02 (Tue)
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悪魔教会のバフォメット像

今回はこういうお題でいきます。悪魔学の続きです。
ここでの悪魔は、基本的にはユダヤ教、キリスト教での
概念を扱います。さて、悪魔はどうしてヤギと相関があるのか。
みなさんが目にする悪魔の図像は、ヤギのイメージを持った
ものが多いですよね。特に角が特徴的です。

これには複数の原因がからみあっています。まず、ユダヤ教は
パレスチナの地の宗教ですが、周辺一帯では、ヤギと羊は
一般的な家畜でした。ですから、身近にいたことが最大の
理由でしょう。また、ヒツジは臆病で大人しく、
いつも群れで行動します。これに対し、

ユダヤ教の悪魔、アザゼル
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ヤギのほうは気ままで攻撃的です。ヤギの角はぶつけ合うための
武器なんですね。こうした性格の違いから、さまざまな例え話
ができました。『旧約聖書』レビ記には、「7番目の月の10日は
贖罪の日であり、ユダヤの民から2匹の雄山羊を受け取り、
くじ引きを行う。そして一匹は屠るが、もう一匹は

みなの罪を背負って荒野に放たれる。アザゼルへの捧げものと
するためである」こういった記述が出てきます。このアザゼルは
堕天使の悪魔です。アザゼルは神に命じられて人間を監視する
ために地上に下りましたが、人間の女の美しさに惑い、妻にする
という禁を犯します。そして追放され、半獣身の悪魔になりました。

ヤギに従う悪しき人々
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絵を見てもらえばわかりますが、頭に短いヤギの角があります。
さらに『新約聖書』マタイ伝には、イエスの言葉として
「すべての国の人々が彼の前に集められ、羊飼いがヒツジを
ヤギから分けるように人々を分けます。そしてヒツジを自分の右に、
ヤギを自分の左に置きます」という一節が出てきます。

ここで、ヒツジは善きものの象徴、ヤギは悪しきものの象徴に
なっているんですね。このように、もともとパレスチナでは
ヤギには悪魔的なイメージがあったわけです。さらに、
ギリシア・ローマ神話からの影響があります。

アーサー・マッケン 『パンの大神』
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これらの神話には、ヤギの属性を持つ神が複数います。
まずはパーン。ヒツジと羊飼いの神であり、美少年を好むことで
知られていますね。イギリスの怪奇小説家にして魔術師、
アーサー・マッケンの中編『パンの大神』はあまりにも有名です。

次にサテュロス、パーンと同一視されることが多いんですが、
自然の豊穣と愛欲の神です。やはりヤギの角を持ちますが、
こちらは美少年専門というわけではありません。
ギリシア神話も古いものですので、中世ヨーロッパで悪魔の
概念ができあがっていったとき、これらも取り入れられました。

サテュロス
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さらに、パレスチナに近いエジプトからの影響もあります。
古代エジプトの太陽神アメン(アモン)は牡山羊の角を
持っています。下図では真っ直ぐですが、実際は曲がっており、
アンモナイトは、化石がその角に似ているところから
名づけられました。

ちなみに、永井豪氏の漫画『デビルマン』の主人公は、
ヤギとコウモリのデーモン、勇者アモンと人間の不動明が
合体したもので、悪魔王ゼノンに匹敵する力を持っていましたが、
最終回の描写では大魔神サタンには叶わなかったようです。

古代エジプトの神アメン
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さて、みなさんがイメージするヤギの姿の悪魔は、
バフォメットではないかと思います。最初にあげた画像は、
アメリカの悪魔教会が制作したバフォメット像です。
ただ、これはそう古いものではなく、文献に出てくるのは
12世紀の十字軍遠征の頃なんですね。

おそらくですが、イスラム教の預言者であるムハンマドの
フランス語読み、マホメットをもじったものと考えられます。
十字軍の記録にも、イスラム教のモスクを、バフォメットの
神殿とする記述が出てきます。これなんかは、異教の神が
悪魔化した例と言えるでしょう。

デビルマンはデーモンの勇者アモンと人間が合体したもの
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さて、魔女の集会とされたサバトには、ヤギの姿の悪魔が
中心になってることが多いんですが、これはバフォメットそのもの
ではなく、その姿を借りた淫行の下級の悪魔、レオナールです。
このあたりもよく混同されることが多いんです。

魔女の宴サバトに出くる悪魔レオナール
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こうして見てくると、ヤギの悪魔は豊穣を司り、性欲の象徴としての
一面があります。性欲は人間には不可欠のものだと思いますが、
宗教的な修行の妨げになる面は否定できません。仏教でも、
修行を妨げるものを魔羅(サンスクリット語のマーラ)と言い、
欲界第六天の魔王であるとされました。

さてさて、ヤギ姿の悪魔が出てくる映画はいろいろあります。
ざっと思い返しても、ダリオ・アルジェント監督の
『デモンズ3』、サム・ライミ監督の『スペル』など。
『スペル』に出てくる悪魔はヤギ型でしたが、たしかラミア
という名前だったような気がします。

『デモンズ3』
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あと、特筆すべきはSF作品、アーサー・C・クラーク原作の
『幼年期の終り』に登場する、人間を教え導く存在である異星人の
オーバーロードたちが、古来から信じられてきた悪魔の姿を
していることです。このあたりの皮肉は三島由紀夫も
激賞していました。では、今回はこのへんで。

『幼年期の終り』のオーバーロード
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