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悪魔学入門「ベルゼブブ」

2020.06.22 (Mon)


今回はこういうお題でいきます。さて、みなさんは悪魔ベルゼブブ
と聞くと何を思い浮かべられるでしょうか。自分は、
ウィリアム・ゴールディングの小説で、映画にもなった『蝿の王』
ですね。ジュール・ヴェルヌの『十五少年漂流記』は、児童文学として
みなさんも読まれた方が多いんじゃないかと思いますが、

その裏版とも言われてるんです。大戦中、疎開地へ向かう飛行機が
墜落し、乗員の少年たちは南太平洋の無人島に置き去りにされます。
少年たちは規則を作り、協力して生きのびようとしますが、やがて
派閥ができて争いが始まり、殺し合いにまで発展していきます。

純真な少年たちの物語ではなく、人間の持つ醜い本能的な面を
わざと強調して描いた内容なんです。題名になっている「蝿の王」とは、
少年たちに屠殺された、蝿の群がる豚の生首のことであり、
また悪魔ベルゼブブを表してもいるんです。この作品に影響を
受けたことを表明している作家やアーティストがたくさんいます。

映画『蝿の王』


さて、ベルゼブブはヘブライ語で、「蝿の王」あるいは「糞の王」
とされ、きわめて不潔なイメージがあります。悪魔としての姿は、
翅にドクロの印を持つ巨大な蝿として表されることが多いです。
以前の記事で、悪魔には大きく2つのでき方があり、
一つは堕天使、一つは異教の神を貶めたものと述べましたが、

ベルゼブブは後者で、カナン(地中海とヨルダン川・死海にはさまれた
地域一帯)で広く信仰されていた嵐と慈雨の神バアルのことでした。
姿も蝿とはまったく関係がなく、棍棒と稲妻の象徴である槍を持つ
人間の戦士の姿で表されることが多いようです。

本来のバアル神


その歴史は長く、今から4000年も前の文献に名前が登場します。
古い古い神なんですね。ただ、キリスト教の前身と言える
ユダヤ教の神とは対立しており、『旧約聖書』には、バアル神の
預言者が、ユダヤ教の預言者に雨乞いの儀式で負けた話が
出てきます。この当時からすでに邪神視が始まっていたようです。

それが、キリスト教が隆盛して、ついに悪魔とみなされるように
なりました。ベルゼブブの名前の由来は、バアル神の尊称である
「バアル・ゼブル」(気高き主人)だったのが、ユダヤ教の
ヘブライ人たちにより、語呂合わせで「バアル・ゼブブ」(蝿の主人)
と蔑んで呼ばれたところからきています。

バアル神は牛の姿で表されることも多く、赤子を生贄にしていたという説も
キャプチャ

では、悪魔化されたベルゼブブはどんな属性を持っているんでしょうか。
地獄においては、サタン(ルシファー)の次に罪深く、
権力と邪悪さでもサタンにつぐとされ、実力ではサタンをしのぐ
とまで言われます。つまり魔王のNo,2ということですね。

ベルゼブブを怒らせると炎を吐き、狼のように吼えるとされ、
蝿騎士団という騎士団をつくって神の軍勢との戦いに備えているという
話もあります。あまりに強力なので人間が召喚するのは不可能。
もし召喚したら、あっという間に破滅させられてしまうでしょう。

『新約聖書』では、イエスが奇跡を起こして病人を癒やしたのに対し、
ユダヤ教の人が「ベルゼブブの力で治したに違いない」と非難します。
イエスはこれに、「どんな国でも、内乱が起こればその国は成り立たない」
と返したという逸話が出てきます。意味がわかりにくいですが、
内乱というのは、悪魔の力を借りて何かを行うということでしょう。

奇跡を起こすイエス・キリスト
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さて、ここからは「ランの奇跡」の話をしていきます。日本では      
あまり知られていませんが、まさに悪魔憑きの話なんです。
16世紀、フランス北西部の都市ランにベルゼブブが実際に現れた
とされ、フランス国王の命令で事件の記録が残されました。

だいたいこんな経緯です。ランの町のニコール・オブリーという女性が
16歳のとき、一人で墓参りをしていると、「煉獄で苦しんでいるので
聖地を巡礼して欲しい」と、亡くなった祖父の声が聞こえました。
煉獄とは、罪を犯した人が天国に行けるよう業火で焼かれて
罪を清める場所です。1565年のことでした。

ベルゼブブとニコール
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ニコールの両親は、娘の奇行と痙攣で異変に気づき、修道士に
相談しますが解決せず、修道士はニコールを教会に連れて行きます。
翌1566年、ランのジョン・ルボー司教が祈ると、ニコールに
とり憑いているのはベルゼブブであることが判明します。
大評判となり、ニコールがラン大聖堂に運ばれるときには行列ができ、

それからは、毎日2000人もの見物人が詰めかけたそうです。
すると、ニコールが口を開いていないのに男の声がし、見物人たちの
秘密をつぎつぎと暴露していきます。ニコールの体に針を刺して
悪魔を追い出そうとしても、ベルゼブブは体の中を逃げ回り、
またニコールは針の痛みを感じず、体が宙に浮いたりしました。

ここでのベルゼブブは牛のような姿
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このときの悪魔祓いでベルゼブブはいちおう去ります。結婚していた
ニコールはこの年、男の子を出産し、ベルゼブブとの子どもと
推測されてニベルコルと名づけられます。この子がどうなったかは
よくわかっていません。さらに10年後の1577年、ベルゼブブはまた
ニコールにとり憑き、ニコールは失明してしまいます。

さてさて、この話、教会が仕組んだヤラセだったとする意見が
あるんですね。宗教改革の嵐が吹き荒れ、教会の権威が
地に堕ちていた時期ですので、その回復をねらった演出であった
とする説が出されていて、自分も、それは十分にありえるだろうと
考えます。では、今回はこのへんで。







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