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ある空手部の崩壊の話

2020.07.03 (Fri)
あ、どうもこんばんわ。横山って言います。仕事はフリー
アルバイターって言うと聞こえはいいけど、ただのプー太郎です。
今から話すのは、6年前ですね。俺がある大学の2回生で、
空手部に所属してたときのことです。どこの大学かは言わなくても
いいですよね。あんま有名なとこじゃないけど、何かの迷惑が
かかるかもしれないから。でね、そこの大学はどっちかというと
ゆるい気風だったんだけど、空手部は体育会系で厳しかったんです、
先輩後輩の上下関係が。ほら、よく言うじゃないですか、
4回生は神、3回生は天皇、2回生が一般人で、1年は奴隷って。
まさにあのまんまでしたね。もっとも、
4回生は就職活動でめったに部には顔出さないんですが。

で、俺もやっと奴隷を終了して一般人になれた矢先、4月の
上旬のことでした。俺と、同じ2回生の近野ってやつが
3年の先輩から、心霊スポットに行かないかって誘われたんです。
いや、誘われたっていうか、絶対断れないんで、命令されたって
言ったほうが正しいですね。最初、心霊スポットて言われたときは
イヤーな気がしました。いやいや、幽霊が怖いからとかじゃ
ないです。そんなのいないと思ってましたから。それより
心配だったのは、先輩方から悪ふざけを仕掛けられることです。
前にもあったんですよ。1回生のとき、心霊スポットと
言われる地下道に入らされて、外からロケット花火を連発で
撃ち込まれたことが。一発が俺の脇の下で爆発して、

そこ、今でも火傷の跡が残ってるんです。でね、話を聞いてみると、
大学のある市の郊外に廃墟になった雑居ビルがあって、
そこ1階がダンススタジオだったんです。2階はエステとか
マッサージとかの店舗が入ってた。それが、この話の4年前、
ゲリラ豪雨の被害に遭ったんです。1階が水浸しになって、
借りてる店舗はみな廃業。ビルのオーナーは破産したっていう噂で、
泥まみれのまま放置されたんですね。入り口の鍵が壊れてるから
入り放題。外壁も中もスプレーの落書きだらけっていう
典型的な廃墟でした。行くのは次の土曜の夜2時。そのあたりの
時間だと、警察も巡回してこないって言ってました。
メンバーは3回生の先輩が3人、俺と、さっき名前をあげた

近野ってやつ。まったく乗り気じゃなかったです。俺、次の
日曜にバイトが入ってたんで。でね、先輩の一人が、さんざん
幽霊話をした最後に、真顔になって「お前ら、靴だけはスニーカー
 じゃなく、頑丈なヒールのやつ履いてこい」って言ったんです。
なんでも、俺らの大学の別の部のやつが、前にそこに行って、
ガラス片を踏んで足を大ケガしたみたいなんです。
で、土曜日はそのメンバーで雀荘に行って、12時までマージャン
やってました。それから景気づけに近野の部屋で酒飲んだんですが、
俺は運転手って言われてたんで飲まなかったです。
2時ちょっと過ぎに廃墟の前に来ました。車は、部で共有してる
10年落ちの軽でした。いちおう全員、懐中電灯は持ってました。

廃墟のビルの前は国道なんですが、その時間だから車通りは
まったくなくて、ぽつんぽつんと街灯があるだけで、中は真っ暗。
先輩たちがニヤニヤし始めたんで、ああ来たなと思ったら、
案の定、一人が「お前と近野、一人ずつ順番に中に入れ。
 スタジオの壁は大きな鏡になってるって話だから、そこに自分を
 映して、これで写真撮ってこいや」って言われて、フラッシュつきの
デジカメを渡されたんです。あーあ、やっぱそんなことか、
バカバカしいと思いましたよ。で、最初に近野が入ったんですが、
10分たっても出てこないんです。1階だし、そんな時間かかる
わけないのに。「お前、様子見てこい」そう言われて、
ビルの中に入っていきました。受付や事務の部屋があって、

更衣室、シャワー室があり、その奥がかなり広い板張りのスタジオでした。
「おーい、近野、どした? いるか」そう叫びながら懐中電灯で照らして
スタジオに入ってくと、床の真ん中に近野が座り込んでたんです。
「何やってんだよ。先輩方が怒ってるぞ」そしたら近野は、
壁の方を指差して「足、足、足・・・」って震え声で言うんです。
「え、足?」照らしてみたら、その壁が全面鏡になってたんです。
あっちこちが割れ落ちてるようでした。「何もないぞ」
そう言うと、近野は持ってたデジカメのフラッシュを鏡に向かって
光らせたんですよ。ほんの一瞬だけだったんですが、はっきり見たんです。
鏡の中に足、足、足、そのときはよくわからなかったけど、
後で思い返してみると、膝から下の足が何本も何本も映ってたんです。

「わああ」俺は叫び、それでも何とか近野の手を引っ張って起き上がらせ、
そのまま2人で走って外に出たんです。先輩方はさすがに心配そうな
顔をしてましたが、俺と近野が鏡にたくさん足が映ってたことを言うと、
「バカかよ!」とさんざんに怒られました。けど、確かめに行こうとは
しなかったです。シラケた感じになって、その場はお開き。
と言っても、俺が先輩方それぞれを車で部屋に送り届けたんですけど。
でね、この話、まだ続きがあるんです。次の日曜ね、俺、バイトって
言ったでしょ。学習塾なんです。いや、俺が講師なんかできるわけ
ないじゃないですか、雑用係です。プリント印刷したり、
ダイレクトメールを発送したりとかの。中高生を対象にした大規模な
とこで、ビルの2階分がまるまるその塾でした。

で、その日は作業が少なくて受付にいたんです。そしたら、
授業が終わった中学生の女子生徒が俺のそばにきて「あの・・・」って。
「どしましたか」聞くと、もじもじした様子でしたが、
「うち、父が神社の宮司をやってるんです。そのせいか私、
 ときどき変なものが見えて・・・ 足、気をつけたほうがいいです。
 これ、うちの神社のお守りですから、持っててください」
そう言って、自分のバッグについてるお守り袋を外して、
俺に押しつけるようにして帰っていったんです。どういうことか
聞くヒマもありませんでした。でもほら、あの廃スタジオで見たのが
たくさんの足だったでしょう。何か関係があるのかもしれない
と思って、ズボンのポケットに入れといたんです。

その翌週からですね、始まったのは。何がって言うと、足のケガです。
月曜日、俺らをスタジオに連れてった先輩のうちの一人が、
練習中に足首を複雑骨折したんです。まあね、空手だからケガは
つきものなんだけど、現場見てました。先輩、ただね、上げた足を
下に降ろしただけだったんです。それが足首が変なほうに曲がって
そのまま板の間に倒れ、大声で泣き叫んだんです。
「いでえああああ いでええ」って。火曜日、もう一人の先輩が
大腿骨骨折。ここでね、ヤバイってわかりました。それでね、
俺と近野で、あの塾の中学生の女の子の神社に行ったんです。
お守り袋に名前書いてましたから。そこでわけを話して、
ご報謝料は少なかったけど、2人でお祓いを受けたんです。

翌日、3人目の先輩が膝の靭帯損傷。それも何でもない場面でです。
その先輩たちはみな大会のレギュラーでしたから、監督は棄権も
考えたようでしたが、代替のメンバーで出て1回戦で惨敗しました。
ホントは優勝候補だったんですけど。俺と近野は、お祓いのおかげか
何もありませんでしたね。まあ、こんな話なんです。
それにしても不思議なのは、あの廃スタジオね、少し調べたんだけど、
ゲリラ豪雨のときに死んだりケガした人っていなかったんです。
ひどい洪水だったみたいだけど、市全体でも死傷者はゼロ。
どういうことなんでしょうか。あの足、もしかしてダンスやってた
人たちの気が固まったものとか? けど、何で先輩たちがケガ
しなくちゃいけなかったのか、不思議ですよねえ。





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