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ネットロアと This man

2020.07.08 (Wed)
アーカイブ317

asde (6)

今回はこういうお題でいきます。わりと地味目のオカルトの話です。
オカルトジャンルとしては陰謀論に入るのかな。
さて、都市伝説(urban legend. urban folklore)については、
当ブログでも何度も取り上げていますが、その中で、インターネットを中心に
広まるものを、特に「ネットロア netlore」と言ったりします。

Internet と folklore を合成した造語なんですが、日本だけでなく、
世界的にも使われているみたいですね。簡単に言えば、
インターネットを通じて広まる都市伝説のことで、
その伝播の速度は速く、広範囲に拡がるという特徴があります。

まあこれは当然ですよね。口コミよりも地上波テレビで情報が流れたほうが
大きく広まります。さらにインターネットの場合は、国を越えて世界中に
広まっていくわけですね。英語など他国の言語で書かれていても、
その内容が面白ければ、翻訳する人が必ずいるはずです。

さて、では、みなさんは「This Man」というネットロアをご存知でしょうか。
ここ10年くらいの間にかなり広まったもので、日本でもフジテレビ系列の、
『世にも奇妙な物語』で紹介されて話題を集めました。
2006年、ニューヨークの有名精神科医のもとに一人の女性が訪れ、
夢の中にいつも出てきて、彼女の私生活について、
さまざまなアドバイスをしてくれる男がいると訴えます。

asde (3)

夢なのに、顔もはっきり記憶に残っているんですが、彼女はその男に
会ったことはありません。よくある話だなと、精神科医は思いました。
その男は、彼女は覚えていなくても、実際にどこかで会っていて、
それが潜在意識にとどまっていたのが、夢に出てきたのだろう。
精神科医は、彼女にその男の似顔絵を描いてもらって保管しました。

ところが、数カ月後。先の女性とはまったく関係のない別の男性が来院し、
同じ話を始めました。さらに、その男性にも描いてもらった似顔絵は、
女性が描いた人物と同じ特徴を持っていたんです。下の画像が、
その夢の中の男の似顔絵に共通する特徴を集めたものです。

asde (2)

うーん、どこにでもいそうな、さえない感じの人物ですよね。太い眉、
禿げ上がった生え際が特徴で、黒髪ですが、この画だけでは国籍はわかりにくい。
年齢も、年寄りではない、程度のことしかわかりません。奇妙に思った精神科医は、
その画像を知り合いの精神医たちに送って問い合わせをしました。すると、
なんと4人もの患者が、夢の中で同じ人物を見ていることが判明したんです。

その男は「This Man」と名づけられ、世界中から情報が寄せられるように
なりました。それによると、夢の中でThis Manに会った人の総数は
2000人以上、場所も、アメリカ、ヨーロッパ、中国、南米、東南アジアと
広範囲だった・・・というのが、This Man伝説の概略です。

これが本当にある話なら、すごい不思議ですよね。自分が書いている
怪談話みたいですが、じつは真相はとっくにネタバレしています。
すべては作り話だったんです。最初の部分で出てきた精神科医は
存在しませんし、もちろん女性患者もいない。ただ、この話を聞き、
This Manの似顔絵を見た人の中には、夢でその人物に会ったという
人はいます。でもそれは、暗示効果で説明がつきますね。

このネットロアを仕掛けたのは、アンドレア・ナッテラ(Andrea Natella)
というイタリア人です。彼は「KOOK」という広告代理店を経営していて、
その会社はヴァイラル・マーケッティング(viral marketing)を
得意としています。この単語を見て、はああと思われた方が
おられると思います。viral は「ウイルスの」という意味です。

Andrea Natella This Manはある程度 自分の顔をモデルにしたという
asde (5)

ヴァイラル・マーケッティングは、消費者がある商品を、まるでウイルスが
広まるように連鎖的に求めるようになることを目的とした手法で、
This Manのプロジェクトは、そのための実験だったんですね。
This Manについて解説した同社のサイトは、20億アクセス以上を
記録していますから、実験は大成功だったと言えるでしょう。

さて、ここまで読まれて「なんだ ただのステマかよ、
バカバカしい」と思われたかもしれませんが、自分の感想は
ちょっと違って、「怖いなあ」というものです。この手の情報操作が、
思想操作につながらないという保障はないと思います。
実際、グーグルなどの世界的な大企業、あるいはアメリカ政府などは、
このような情報操作を、さまざまな形で行っていると考えていいでしょう。

asde (1)

コロンビア大学などの研究では、ネットで広まり始めたデマは、
すぐに訂正が出ても、多くの人は訂正のほうを信じず、
かえって噂が広まりやすいという結果が出ています。例えば、
ネットで美容整形で3つめの乳房を作った女性の画像は爆発的に
拡散しましたが、それがくっつけることができるオモチャである
という記事は、最初の記事の何百分の1のアクセスしかありませんでした。

また、訂正が出ても、「これは政府が関与して火消しにつとめているのだ」
とか、「真相から目をそらすためのカウンターだ」みたいに言う人も
いるんですね。かといって、デマを訂正しないわけにもいかず、
当事者は困ったことになってしまいます。これがネット社会というものです。

さてさて、ということで、ますます情報リテラシーが求められる
世の中になってきたわけです。みなさんはどうでしょう。
ネットに洪水のようにあふれる情報を鵜呑みにしてはいませんか。
その中には、悪い目的をもって意図的に広められているものも
あるかもしれません。では、今回はこのへんで。

関連記事 『アメリカの都市伝説』 『都市伝説の成立条件』 『ベッドの下には?』

asde (4)




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