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悪魔学入門「グリモワール」

2020.07.14 (Tue)
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今回はこういうお題でいきます。西洋魔術のお話です。
この言葉はフランス語で、日本では「魔導書」と訳されることが
多いですね。グリモワール(grimoire)の語源は、フランス語の
grammatica(文法)から来ているというのが定説になっています。

なぜ文法が魔術に関係があるかというと、ヨーロッパでは文法
という言葉はラテン語と同義だったからです。ラテン語は
上流階級の教養を示すものであり、またキリスト教会の聖職者が
使うもので、一般民衆にとってはチンプンカンプンでした。
そこで、文法は魔術と関係があると誤解されたんですね。

グリモワールの内容はさまざまです。天使・悪魔などの召喚方法や
呪文の詠唱法、薬の調合法や魔除けの作り方、医術、占星術に関する
記述など、その内容は多岐にわたっています。注意しなくては
ならないのは、キリスト教神学でも悪魔の分類などについての
著作があり、それらはグリモワールと呼ばれることはありません。

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次に、グリモワールはいつ書かれたのか。グリモワールの著者は
古代の偉人であることが多く、後述するソロモン王などが有名です。
ただし、実際にソロモン王の著作が筆写をくり返して伝わった
というのは論外で、多くはその時代の魔術師、錬金術師が
偽作として書いたものです。

十字軍遠征以後、中世のものと判明しているグリモワールも
いくつかはありますが、数は多くありません。ほとんどの
グリモワールはルネッサンス以降、17~19世紀に書かれて
おり、文体を分析すれば新しものであることがわかります。

ソロモン王
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あと、グリモワールは膨大な数が残っていますが、完本である
ものは少数です。その理由は、キリスト教会の異端審問から
逃れるため、わざといくつかの章に分けて発表されたりしている
からです。もし著者が見つかった場合、作者は火あぶりの刑に
なることもありえたんです。

次に、グリモワールはなぜ書かれたのか。ぶっちゃけた話を
しますと、当時の錬金術師が王侯貴族に取り入るためです。
グリモワールには、異性の愛を得るための秘薬の製法や、
隠された古代の宝を発見する魔術などが書かれており、
そういうの、みなさんが金持ちだったら買いたくなりませんか。

ソロモンの審判
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でも、実際にそんなことができるはずはないですよね。
そこで、秘薬の材料にはドラゴンの鱗が必要だなどと、絶対に
手に入りそうもないものを列挙し、詐欺がバレるのを
防いでいたんです。悪魔を召喚する方法などについても同じです。

さて、ではグリモワールの著者とされる人物にはどんな人が
いるか。ここでは代表的な2名を挙げておきます。まずは前述した
ソロモン王。古代イスラエル王国の前10世紀ころの王とされます。
イスラエル王ダビデの子で、実の兄など王位継承のライバルを
打ち倒して即位し、エジプトのファラオの娘と結婚します。

宗教はユダヤ教で、即位後、神に盛大な捧げものをします。
喜んだ神はソロモンの夢に現れ、何が望みかと尋ねると、
ソロモンは知恵と答え、神はソロモンに「知恵の指輪」を授けます。
ここまではよかったんですが、その後のソロモンは浪費をくり返し、
悪魔とも関わったため、最終的には地獄に落ちたと考えられています。

ヘルメス・トリスメギストス
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ここでちょっと余談。ソロモンの知恵を示す逸話として、2人の
女が一人の赤ん坊を取り合って、それぞれ自分の子だと言い張った。
そこでソロモンは、赤ん坊を2つに切って分けるからと剣を取り
出します。すると一人が、あまりに子どもが可哀想だ、相手のものに
してくれと言い、ソロモンはその女を本当の母親と認めた・・・

おや、どこかで聞いたことのある話ですよね。この話は世界中に
広まり、ちょっと形は変わりましたが、日本の大岡政談にも
取り入れられています。あ、また字数がピンチです。ソロモンが
書いたとされるグリモワールは悪魔関係のものが多いです。

『ソロモンの鍵』の魔法陣
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もう一人、グリモワールの作者に擬されることが多いのは、
古代ギリシアの神人、ヘルメス・トリスメギストスです。ただ、
こちらはソロモン王とは違って、実在の人物とは考えられて
いません。名前の意味は「3倍偉大なヘルメス」ということで、
歴史上存在した3人のヘルメスという名前の人物を

融合した存在であるからとも、錬金術・占星術・神働術(テウルギア)
という世界の3つの叡智を兼ね備えた人物であるからなどとも
言われます。ヘルメス・トリスメギストスは錬金術の祖とされ、
彼が作者となっているグリモワールは、悪魔関係ではなく、
錬金術、哲学関係のものが多いんです。

最後に、有名なグリモワールを2つご紹介して終わります。
まずは『ソロモンの鍵』。15世紀にはすでに書かれており、
内容は、降霊術のための魔法円、七惑星のペンタクル、祈祷文、
魔術道具の作成や清めの方法、魔術を行う日時を決める占星術
などで、ヘブライ語版が大英図書館に収蔵されています。

『エメラルド・タブレット』のもとになったエメラルド板(実在ではない)
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『エメラルド・タブレット』ヘルメス・トリスメギストスが書いたとされる
エメラルド板の碑文を写したもので、内容は数十行にわたる
短い暗示めいた文章です。原典は失われていますが、ギリシャ語から
アラビア語、ラテン語に翻訳されたものが残っています。

さてさて、魔術のやや専門的な話になりました。自分は
西洋占星術師なので、これ系の話題は得意ですが、ここまで読んで
いただけた方がどのくらいおられるでしょうか。ヨーロッパでは、
グリモワールの研究は盛んですが、日本ではあまり知られて
ないんですよね。では、今回はこのへんで。

『グラン・グリモワール』(大奥義書)
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