FC2ブログ

袋の中の話

2020.07.27 (Mon)
こんばんわ、三村ともうします。小学校の教師をしてるんですが、
現在、長男が産まれて育児休暇中です。よろしくお願いします。
今からお話するのは、私が教員養成大学の2年生のときのことです。
もう、7年前になります。私は郡部の出身で、大学は県庁所在地の
市にありましたので、アパートを借りて一人暮らししていました。
そのアパートは大学のすぐ近くで、学生相手の同じような
アパートがたくさんありましたが、その中でも小ぎれいなほうだった
と思います。新築で入居したんです。ですから、最近よく
耳にする「事故物件」というのではありません。
はい、最初の1年間はおかしなことは何も起きませんでした。
え、部屋の位置ですか。2階の、向かって右側の角部屋でした。

左隣は同じ大学の4年生の女の先輩で、気さくな人でしたね。
ええ、何のトラブルもなかったんですが・・・
1年の秋から、おつき合いする人、彼氏ができたんです。
でも、その人とは2年になった初めに別れてしまっていました。
これ、ひどい別れ方というわけじゃなく、お互い、性格が合わない
ことがわかり、よく話し合って納得ずくのことだったんです。
それで、最初にあの夢を見たのは5月です。私はある出版社で
配送のバイトをしていて、その日は雨の中、バイトから
帰ったのが9時頃でした。遅い夕食を済ませ、録画していた
ビデオを見て、11時過ぎには寝ました。そして夢を見たんです。
夢と言っていいのかどうかわかりませんが。

私、けっこう怖がりなほうなので、寝るときには電気は全部消さずに、
いつも豆電球だけつけてるんです。その他にも、家電のスイッチ類の
明かりなんかもあって、部屋の中は明るいんです。
それが、ふと気がつくと、自分が真っ暗な中にいました。
「え? 停電」と思いますよね。けど、私はベッドに寝てるはずなのに、
タオルケットも何もなかったんです。服は着ていました。
いつもパジャマ代わりにしているスウエットです。
それがぐっしょりと濡れてたんです。ええ、そこ、ほんの数cmですが
下に水がたまってました。嫌な臭いのする、さわると何だか
ヒリヒリするような水。わけがわからなかったです。
私、たしかバイトから部屋に戻ったよね。で、ベッドに寝た。

なにのここはどこ? 変なことを考えてしまいました。
もしかして、自分の部屋に帰ったというのは幻覚で、じつは私、
事故に遭って側溝にでも落ちてるんじゃないか、なんて。
手をついて立ち上がろうとしました。
ぬるぬると滑ってすごく難しかったんですが。それに真っ暗なので、
自分の体がどうなってるのかもよくわからない。とにかく立って
数歩歩いてみると、足元でピチャピチャと音がしたんです。
すぐに壁に突きあたりました。やはりヌルヌルとしていて、
膨らんでるというか、平面ではないように思いました。片手をついたまま
その壁づたいに進むんでいきましたが、いつまでもきりがない。
これ、もしかして、私は壺のようなものの中にいて、

ぐるぐる回ってるだけじゃないのか。そんな気がしてきたんです。
ここでやっと、「これ、もしかして夢?」と思いあたりました。
すると、まわりのものが真っ暗なまま、どろっと崩れ、自分のベッドにいて
部屋の天井が見えたんです。「ええ?」眠っていたという感覚は
まったくありませんでした。とっさに時間を見ると明け方の4時・・・
やはり夢だったんだ、と納得するしかなかったんですが、すべてが
ものすごくリアルだったんです。体はどこも濡れたりはしてませんでしたが、
部屋の中がどことなく青臭いような気がしました。それでこの夢、
この後、4回見たんです。期間は3日後、1週間後とまちまち
だったんですけど、決まって雨が降っている夜でした。
まあ、実害はないと言えばないんですが、気味が悪いですよね。

それで、大学の同じサークルの佐藤さんという女子の先輩に相談して
みたんです。佐藤さんは児童心理学を専攻してまして、いわゆる
心霊みたいなことも詳しかったんです。学食で話をすると、佐藤さんは
顔を曇らせ「うーん、不思議な話ね。そんなの聞いたことがない。
 でもねえ、よくないってことはわかる。あなたの部屋に遊びに行っても
 いい」こう言ったので、「ああ、ぜひお願いします」と、
その日の夕方に来てもらったんです。佐藤さんが私の部屋に入るのは
初めてでしたが、部屋の真ん中に立ち、「何かある。それは
 間違いないけど・・・」と言って、部屋のティッシュボックスから
1枚とり出し、バッグからヒモのようなものを出して中に包み、
右手でつまんで高く持ち上げました。そして部屋中、お風呂やトイレも

回ったんですが、南側の窓のことろで、「ここ、何かある」と言い      
窓を開けて外をのぞいたんです。外は、隣のアパートの後ろの壁が
見えるだけでした。佐藤さんは身を乗り出し、上下左右あちこち
見てましたが、「えー、ここだと告げてるんだけど、変だなあ」
不満そうな声を出しました。私も見ましたが、特におかしなものは
見あたりません。佐藤さんは、「夢は雨の日に見るって言ってたよね。
 じゃあね、私、この次に雨が降った夜、泊まりに来てもいい」
それを聞いて感激し、「お願いします、助かります」って答えたんです。
次、雨が降ったのは2日後でした。その日、佐藤さんと大学から
いっしょに帰り、12時ころまでお酒を飲みながら話をして、
私は自分のベッドに、佐藤さんは毛布を敷いて床のカーペットの上に

寝ました。で、やっぱりあの夢を見たんです。変な水のたまった
壺の中のようなところにいる。反射的に立ち上がったとき、
体が何かに触れました。上から下がってる大きなもの。
それ、人の足だと思ったんです。グラグラ揺れて、地面から浮いてる足。
とっさに首吊りという言葉が頭に浮かび、「きゃー」と大声で叫んだと
思います。「起きて、起きなさい」佐藤さんの声がし、私の肩を
揺さぶっているとわかりました。もう部屋の電気はついていて、
佐藤さんは私に「大丈夫?」と聞き、私がうなずくと、
「やっぱ、ここなのよ」と、南側の窓に歩み寄って開けたんです。
ザーという外の雨の音が聞こえてくるだけでした。
翌日、晴れたので、日中サークルの男子何人かに来てもらい、

その窓の外を見てもらいました。男子一人が部屋で腰を引っぱり、
もう一人が窓枠に立ち上がって、あちこち見てましたが、
「あ、変なものがある」と、向かいのアパートの屋根の雨樋から、
そう大きくはない白い鉢をつかみ上げたんです。テーブルに上げてよく見ると、
15cmほどの観葉植物の鉢。植わっている植物も15cmくらいでしたが、
茶色くなって枯れていました。それで、その植物、袋のようなものが
いくつかついてたんです。佐藤さんが「ウツボカズラみたいね」と言い、
テイッシュを尖らせたのを、袋に溜まった雨水に漬けてみました。
すると、テイッシュの先のほうがうす赤く染まったんです。
「たぶん血だね。乾いた血が雨水で戻されたものみたい」
「どうしてそんなものが・・・」わけがわかりませんでした。

それから、男子には礼を言って帰ってもらい、佐藤さんと話をしました。
誰かがその観葉植物を、私の部屋の窓に向かうアパートの屋根に置いた。
どうやって置いたのかわかりませんが、佐藤さんは「あそこなら、
 身軽な人は物置を足がかりにして登れるかも」と言いました。
それから「ウツボカズラの捕虫袋に自分の血を入れたのね。
 もしかしたら、血以外のものも。〇〇、誰かにうらまれてる心あたりある?」
こう聞かれたんですが、私は首を振るだけでした。「ふーん、けど、
 夢の中で上からぶら下がってる人の足にさわったって言ったよね。
 じゃあ、これをやった人間はじきにわかるよ」とも。
ここからのことはあまり話したくはないんですが、そうもいかないですよね。
大学で、私の周囲に首を吊った人はいません。それで、

実家のある町の、仲のよかった高校時代の同級生に電話してみたんです。
そしたら、私が2年のとき同じクラスだった男子生徒が自殺してる
ことがわかったんです。ただ、自殺の方法までは誰も知らないようでした。
そして、亡くなったのは、私が最後にあの夢を見た、佐藤さんが部屋に
泊まってくれた雨の日だったんです。その男子生徒は、高校卒業後、
進学も就職もせずに引きこもっていたということでした。私はその人とは、
つき合うどころか、話もしたことはなかったと思います。目立たない生徒で、
顔もよくは覚えていません。ただ、そういえば、家がわりに近かったので、
帰り道で何度か見かけたことがあったような気がします。あの子が
ウツボカズラの鉢を隣のアパートの雨樋に置いた!? そのとき急に、
その男子生徒が生物部だったことを思い出したんです。

キャプチャ



関連記事
スポンサーサイト




トラックバックURL
http://scoby.blog.fc2.com/tb.php/2622-fa73d59d
トラックバック
コメント
管理者にだけ表示を許可する