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陳腐な話を改変する

2020.07.30 (Thu)
怪談には、テンプレな話ってありますよね。誰でも知ってる
有名なパターンと言ったほうがいいでしょうか。
例えば、引っ越した部屋で夜、寝ていると金縛りになり、
胸の上に何かが乗っている。なんとか目を開けて見ると、
髪の長い血まみれの女。「うわー」と思って、

必死で「南無阿弥陀仏」とお経を唱えると、女は笑い、
「そんなものは効かないよ」と言う。あるいは、
カーナビに目的地をセットして、その音声の通りに車を
動かしていたら、全然知らないところに来てしまい、

もう少しで崖に落ちるところだったとか、危ないところを
急ブレーキで止まったら、「もう少しだったのに」という声が
聞こえた・・・ こういうのを友人の前で話してもシラケてしまい
ますよね。怪談というのは生物(なまもの)で、鮮度が大切です。
なるべく斬新なのを語りたいものです。

あと、自分なんかは、使い古されて陳腐化した怪談のパロディを
書くことがあります。最初の部分を読み始めて、
「あれ、これ、どっかで聞いたことがあるなあ」と思わせておいて、
いきなり話の骨格がゆがみ始める。読者を「え、え?」と
戸惑わせるのが楽しいんです。

で、今回はそういう話をご紹介したいと思います。
「田舎の祖父母」というテンプレの話があります。
主人公の少年は夏休みには毎年、祖父母の家に預けられる。
祖父母はたいへんに優しく、何でも言うことを聞いてくれるが、
少年に、「裏の納屋にだけは近づいちゃダメだよ」と言う。

でも、退屈でしかたがなかった少年は、祖父母が留守のとき、
その納屋に入ってしまう。納屋の床は藁が敷かれ、なぜか赤黒く
濡れている。気味が悪くなって出ようとすると、奥の暗がりから
祖父母が出てくる。祖父は右手に鎌を持っており、2人とも満面の
笑みをたたえ、「見てしまったんだね」と言う・・・

また、こういうバリエーションもあります。祖父母には、裏の山に
行ってはいけないと言われ、しかし少年はいいつけを破って登り、
そこで恐ろしい物を見てしまう。祖父母の家に戻ってそのことを言うと、
祖父にさんざん叩かれたあげく、寺の住職のところに連れて行かれて
ご祈祷を受ける・・・ 

時空の山の話
俺が子どもの頃の話だよ両親が共働きだったもんで、
夏休みは田舎のジジババの家に長期間預けられてた。ジジババは
優しかったが、やはりガキには田舎の生活はヒマでならなかった。
ジジババは、表を散歩するくらいはいいが、裏の山は危険だから
絶対に登っちゃいけないって言ってたんだ。
ジジババは年寄りだから夜は早く寝るし、田舎家には漫画本もない。
低学年のうちはまだよかったが、高学年になるとヒマを持てあましてな。
で、あれは5年生のときだ 少し曇りの日の午後、
登るなと言われてた裏山に行ってみたんだよ。

そこは山とは言っても、高さはせいぜい100mちょっと。
けっこう広い道もあって、すぐに登れそうだった。
ややしばらくいくと、急に道は細くなって、足元に縄が張ってあった。
そのときは気にせず、縄をまたぎ越えてさらに進むと、
道の両側の林がなくなり一面の草地になった。
20mほど先に丸くなった頂上が原っぱのようになってたんだ。
今考えると、あれは誰かが短く草刈りをしてたんだろうな。
なんだこれだけか、危険なことは特になかったし、
何でジイさんは登るなと言ったんだろう。

そう思いながら原っぱの中央まで来ると、そこは直径3mほどに
くぼんで土がむき出しになってた。で、子供一人なら入れる大きさの、
半分ほど埋まった大きな箱がある。近づいてくとコンコンとかすかに音がする。
箱の中から誰かがこぶしで叩いてるような音。「あ、人が入ってるのか」
と思った。大声で、「誰かいるんですか」と言ってみたが、返事はない。
音は断続的に続き、よく見ると箱の蓋は重そうな木の一枚板で、
上に乗っかってるだけで釘なんかは打たれてないようだった。
それで端のほうを少しズラそうとしてみた。

子どもの力ではどうにもならない重さで、かなりの時間がかかって
ほんの少しだけずれた、斜め2cmくらい。
そしたら中に日の光が入って、人間の肌が見えたんだよ。
足、子供の足だと思った。「大変だ、人が中に閉じ込められてる!」
大人に知らせなきゃと思って走って山を下りたんだ。
すると、道の縄を張ってたところにジイさんが立ってた。

うつ向いてた顔を上げると、ジイさんはとても悲しそうな表情で
両目から涙をしたたらせていた。「見たなあ」とジイさんは言った。
続けて、「あああ、見てしまったんだな なんて不憫な子だ。
 すぐに寺の住職のとこに行かねばならん」ジイさんは俺の手をがっしとつかみ、
下まで下りると、登り口に停めてあった軽トラに乗せた。
運転中、ジイさんは何も口をきかなかった。寺には墓参りで何度か
行ってるが、俺が登った山の裏側のほうで、車で10分ほどしかかからない。

寺の門の手前に車を停め、ジイさんはまた俺の手をつかんで
どんどん中に入っていった。本堂ではなく、住職の住居になってるほうの
呼び鈴を押すと、ややあって住職が出てきた。
ジイさんよりは若い、たぶん50代くらいの住職に、ジイさんは、
「大変だ、この子が山に登ってあの箱を見ちまった」
すると住職は驚いた顔で、「ええ、もう そんなに早く世界の終わりが」
と言い、俺は中に連れ込まれた。ジイさんと住職に両側から手を取られ、
本堂の後ろ、長い暗い廊下を通って行ったんだ。

その廊下は途中からせまい階段に変わり、
俺は住職とジイさんにはさまれて、かなりの高さを登ったと思う。
やがて、頭の上に木の板が見え、そこに扉がついていた。ジイさんは、
「スマンな、ここに入ってもらう なに、ときどき来て話をしてやるから」
そして俺は腹を殴られ、うっと体を二つ折りにしたとき、
住職が扉を開け、俺はジイさんに抱えられてその中に押し込まれたんだ。
素早く底の扉は閉められ、中は真っ暗だった。左右どっちに動いても
体がぶつかり、上は体を起こせない位置に固い板があった。

俺は泣いて、「助けて、ごめんなさい、もうしません、助けてください」
そう叫んだが返事はない。泣きながらずっと上の板をこぶしで叩いてた。
すると、どのくらいの時間がたったか、人の声のようなものが
上から聞こえたが、何を言ってるかわからなかった。
やがて足のほうの板が少しだけズラされ、光が射し込んできた。
「あ、助かるのか」そう思ったが、それっきり気配が消えた。
板のズレたとこを足で蹴って動かそうとしたがダメだった。

俺は泣き疲れ、いつの間にか眠ってしまった。
さらに時間は過ぎ、気がつくと足のほうの板は閉まって、
かわりに頭の上が少し開いてた。そこからジイさんの声がした。
「この世界のお前は閉じ込められてしまった ゲームオーバーだ。
 あれほどこの山に登るなと言ったろう。・・・大丈夫、
 この箱の中では腹も減らないし、死ぬこともない。
 ずっとそのままで、ジイちゃん、バアちゃんのほうが早く死ぬだろう。
 退屈だろうがじきに慣れる。箱の中もいいもんだぞ」

「助けてよう」と、すがるように言うと「ダメだ! こんなふうに
 別の世界で箱に入ったお前が、何千、何万人もいるんだ。
 お前だけ助けては、その子らに申しわけが立たないから」
・・・俺は今でもこの箱の中にいる。あれから何年たったかもわからない。
ジイちゃんはときおり来ては、こんな話をしてくれる。
「たくさんある世界の中では、裏山に行かなかった良い子のお前もいる。
 その中には就職して結婚し、もう子どもができたお前もいるだろう。
 もしかしたら、こういう怖い話を思いついて、どっかに
 書き込んだりしたお前もいるのかもしれないな」なんて言うんだよ。






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コメント
bigbossmanさん、おはようございます!!^^

>左右どっちに動いても
>体がぶつかり、上は体を起こせない位置に固い板があった。
怖いっす。絶対嫌です。棺桶に入るとこんな感じなのかなあ。m(__;m
くわがたお | 2020.07.31 07:30 | 編集
コメントありがとうございます
これと似た「早すぎた埋葬」というテーマをずっと
追求したのがエドガー・アラン・ポーですね
そういう恐怖を持っている人は多いと思います
bigbossman | 2020.07.31 10:26 | 編集
 やはり「祟り・因果ものと思わせてからの時空・SFもの」は管理人さんの得意技なんだなーと。このお話については、「じゃあお前は誰なんだよw」と突っ込みたくなるシュールさがミソですかね。
 そういえば、かつて「テンプレ話を改変して怖くする」的なスレがあった気がします。正直なところレベルは残念な感じだったのですが、当時のオカ板事情を象徴する存在ではありました。
| 2020.08.02 13:11 | 編集
コメントありがとうございます
うーん、この話はたぶん平行世界にいる少年の一人が
どっかの怖い話サイトとかに創作のつもりで書いたものか
あるいは自分(bigbossman}が平行世界にいる
無限のこの少年の一人なのかも
bigbossman | 2020.08.02 18:00 | 編集
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