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幽冥の絵

2020.08.09 (Sun)
bigbossmanです。つい先日、大坂市内のホテルのバーでKさんと
一杯やりました。Kさんはご存知だと思います。本業は貸しビルや
飲食店を手広く経営してる実業家ですが、それとは別に、霊能者と
しても活動していて、この世界では有名です。もちろん謝礼などを
とることはありません。ボランティアとしてやってるんですね。
なんせ年収は数億ですから。で、このKさん、自宅は東京に
あったんですが、そこを売り払って、2ヶ月ほど前に沖縄に
移住しちゃったんです。まあ、前々からそんな話はされてたんですが、
本気にしてませんでした。仕事があるときには飛行機で本土に
出てくるそうですが、かなりの金額になるんでしょうねえ。
いえ、まだ石垣島の新居には訪問していません。

誘われてはいるんですけど、自分は貧乏暇なしで。こんな話になりました。
「Kさん、石垣島はどうです」 「いや、夏場は大阪よりかなり涼しい。
 スコールもあるしね」 「ああ、そうでしょうねえ。うらやましい
 かぎりです。ところで、最近何か霊障事件とかありましたか」
「またブログネタか。まあ、ないこともないが」 「ぜひお聞かせ下さい」
「うん、いいけど、最終的には俺が解決したわけじゃないんだ」
「ぜひぜひ」 「・・・お前、冥婚って知ってるか」 「あ、わかります。
 もともとは中国の風習ですよね。向こうでは、男性が未婚で
 亡くなった場合、冥界で一人前と見なされず片身のせまい思いを
 するため、葬式の前に形だけの結婚式を挙げさせる」 「そう、
 ただ、それには段階があるんだ」 「ええ、知ってます。一番軽い形が、

 実在しない女性の名前を入れた婚姻届をつくる。もちろん役所じゃ
 受理してくれないので、道士のとこへ持ってって焚いてもらう。
 次がもう少しハードで、同時期に死んだ独身の女性の遺体を買い、
 実際に参会者を集めて式を行う。いちばん非人道的なのが、女性を
 殺して冥婚の相手にする。これは女性が、故人の男性の知り合いの
 ことも、そうでない場合もあるようです。もちろん殺人事件に
 なりますが、冥婚を行うような家は、その地方の実力者ですから
 もみ消されちゃうんでしょうね」 「ああ、さすがはオカルト研究家、
 基礎知識は十分だな。じゃあ、ムカサリってのは知ってるか」
「はい、山形県の風習です。独身男性が亡くなった場合、架空の結婚式の
 様子を描いた絵馬をつくってお寺に奉納する。形としては冥婚の

 もっとも軽いものです」 「見に行ったか」 「はい」
「そうか、絵の感じはどうだった」 「いやあ、自分は霊感ゼロなので、
 何も感じなかったというか、悪いものとは思えませんでした。
 今回の話は冥婚に関係があるんですね。早く聞かせてくださいよ」
「うん、ただな、ストレートな冥婚とはちょっと違う。30代前半の
 前衛華道家の独身女性がいてね。1ヶ月前に亡くなってる。それが
 高層マンションの自室のベランダからの飛び降りなんだ」 「で」
「多量の睡眠薬を飲んでたんだな。その薬は部屋から発見された。
 部屋の表ドアは施錠されてたし、パソコンには、遺書とまでは言えないが、
 疲れたという数時間前の走り書きがあった。司法解剖でも、遺体の損傷は、
 落下のためについたものだけ。ということで、警察は自殺と判断した」

「ああ、そうなるでしょうね」 「でな、その女性の実家は、四国某県の
 旧家なんだが、今どき珍しいことに4女なんだそうだ。さらに兄も
 2人いる。女性は、華道家として十分な収入を得ているし、実家の 
 ほうとはあんまり連絡を取ってなかったんだな」 「ははあ」
「とはいえ、やはり身内だし、警察の連絡で両親と兄弟たちが出てきて、
 東京で火葬し、葬式もやったんだよ」 「はい」 「そしたら
 火葬のときに、画家と名のる、女性より若いと思われる男がやってきて、
 かなり大きなキャンバスに描かれた絵を2つに折り割ったものを
 持ってきた」 「で、で?」 「そうせっつくな。男はその女性と
 つき合っていて、すでに婚約していたと両親に言ったんだな。
 両親のほうは、娘とは没交渉だったので、そんなものかと聞いていたが、
 持ってきた絵は、結婚式の記念写真のように新郎新婦が立って

 並んでる姿が描かれてた」 「うーん、で」 「男は、それを半分に切った
 新郎、つまり自分が描いてあるほうを、棺に入れていっしょに焼いてくれと
 両親に涙ながらに訴えたんだ。まあ、燃えるものだし、両親は承知し、
 まだ大きかったから、さらに小さく切って棺に入れ、火葬したんだ」
「それで」 「燃え残りはなかったそうだ。男は、絵のもう一方、
 花嫁姿の娘さんが描かれたほうを記念にと両親に託し、悄然と帰って
 いったそうだ」 「で」 「ま、ここまでならいい話にも思えるんだが、
 じつはその火葬場の施設長が俺の古い知り合いで、連絡が来た」
「どんな」 「これは職業上の秘密ではあるが、Kさんと見込んで話をする。
 火葬時、係員が炉の小窓から見ていたら、火が回ったとたん、娘さんの遺体が
 半身を起こし、口から大量の真っ黒い体液を吐いたと報告したんだ」

「う」 「まあ、それ自体はよくあることなんだが、その係員、10年以上
 勤めてるベテランなのに、その日から原因不明の高熱で寝込み、
 まだ入院している。もしや何か障りがあるのか、俺に調べてほしいという
 ことだった」 「すごい話ですね。で」 「石垣島から東京に
 出てきていろいろ調べたさ。まずその男の身元、売れない画家なのは
 間違いなかったが、華道家の娘さんと同棲していたのが、2ヶ月前に
 別れてる。それも周囲の話だと、男が甲斐性なしなのに愛想をつかされ、
 叩き出される形だったって」 「うーん、ということは、自殺ではない
 可能性が?」 「ああ、それをつきとめる前に、四国の娘さんの実家に行った。
 もちろん、地元の有力者からきちんと紹介してもらってな。出てきた
 両親は困惑してた。俺が訪ねてきたことじゃなく、絵についてだ」

「で」 「両親は娘の絵を細長い額に入れて、遺影とともに仏間に飾ってたが、
 だんだんに娘の表情が恐ろしく変わってきた。旦那寺の住職に相談したが、
 ただ長々とお経を唱えるだけで埒が明かない。そのうちに、娘の表情が
 あまりに鬼気迫って怖くなり、絵は外して物置にしまい込んでいたそうだ」
「見せてもらったんですね」 「ああ、憎しみの塊のような、二度と見たくない
 ものに変わっていたよ」 「それで」 「その絵の処分を俺にまかせて
 もらえるように言い、東京に戻って画家の男をとっちめようとした矢先、
 男が逮捕されたんだ」 「お、警察ナイス。でもどうして?」
「さっき大ざっぱに飛び下りの現場の状況を説明しただろ。じつは、
 娘さんのスマホが見つかってなかったんだよ」 「ああ」
「そりゃ怪しいだろ。華道家の仕事にも使うものだし」

「で、聞き込みをしたところ、画家の男が浮かび上がってきた。
 ケンカ別れをして女性を恨んでいる・・・だけじゃなく、その後もストーカー
 まがいのことをしていたらしいんだな。どうやら男は部屋の合鍵を持ってて
 返してないらしい。しかも、飛び下りの当日、男の姿がマンションの
 防犯カメラに写ってた。もう容疑は十分だろ」 「確かに」 「で、男を
 逮捕し家宅捜索したところ、娘さんのスマホが見つかった。仲違いの
 状況が手にとるように記録されてたらしい」 「なるほどねえ」
「男は現在、起訴されて拘置所にいる。裁判はこれからだ」
「うーん、Kさんが動く前に決着がついたわけか。珍しく警察もやるなあ」
「ただほら、実家の絵のことがあるし、娘さんは行くべき場所に行ってない」
「どうしたんです?」 「絵はただ燃やすとマズそうだったんで、

 専門家に頼んだ。女流の日本画家で、西田先生という人がいる」
「あ、名前は知ってます。すごい有名な方ですよね」 「その人に、つてを頼って
 絵と娘さんの供養を託したんだよ。で、興味があったんで、その現場を
 見学させてもらった」 「どうでしたか」 「西田先生、もうかなりの年配の
 人だったが、気品があった。日本画の材料を用意してきて、花嫁姿の恐ろしい
 絵を塗りつぶし、実家の両親から写真を借りて、その上に、子ども時代の
 娘さんを描いたんだ。中学校に入学するあたりの。そしたら、凍りついた
 場の空気が溶けたんだよ。ああ、娘さんはこの世を離れたってすぐにわかった。
 ・・・ああいうやり方もあるんだな。絵の世界は奥深い。今回のことは
 俺もいろいろと勉強になったよ」 「この話、ブログに書いてもいいですよね」 
「ああ、だが、公判前だし、場所や職業、状況はボカしてな」
 
キャプチャ



 
 
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