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顔がいっぱい

2014.02.16 (Sun)
看護師をしています。
最近はないですが、まだ新米の頃に不思議な体験をしたことがあります。
深夜勤の日の午前0時すぎ、救急に胃潰瘍で大量吐血した患者さんが一人で運ばれてきました。
貧血のために意識がなく、そのまま内視鏡で検査をしたのですが、
胃の内部に大きな潰瘍があるものの、とりあえず現在は出血していないとのことでした。
なにぶん夜間ですので処置は明日行うことになり、
患者さんは心電図や脈拍、血圧を表示する機器をつけた状態で
ナースステーションの隣の、小窓で中をのぞける部屋に寝かせられました。
何か異変があったときにすぐに気づくことができるようにです。
ステーションから直接入っていけるドアもついています。

午前2時頃です。ナースステーションの窓口にふらりと患者さんが来ました。
長期入院している患者さんの中には、
深夜眠れず、救急の入り口のほうから外に出てタバコを吸ったり、
ロビーの自販機で飲み物を買ったりする方もいますので、それ自体は変ではないのですが、
「あのーちょっと」と声をかけてきたのは、さきほど緊急入院したばかりの患者さんです。
貧血のために顔が真っ白でした。
「意識がなかったはずなのに」と思い、病室の小窓のほうを見ると、
その患者さんは点滴をつけて横になっています。・・・同じ人が二人いるんです。
もう一度目の前の患者さんを見ましたが、透けたりもぜず普通の人と変わりません。
驚きで声が出ませんでしたが、少し間を置いてやっと「どうしましたか」と言いました。

その患者さんは「あのー、いいですか。部屋を替えてほしいんですけど」と
なんとか聞きとれるくらいのか細い声で話しかけてきます。
そのとき書類をピシッと指で弾くような音が後ろから聞こえたので、
振り向くと、一緒に深夜勤をしているベテランの先輩が顎をつんつんと動かして合図しています。
応対しろといっているんだと思いました。
それで「どうして部屋を替えたいんですか」と聞くと、
「足元のほうの天井の隅から、なんかが来るんですよ。顔のいっぱいある人です。
いっしょに来い、来いって言いながら、ベッドの上まで首を伸ばしてくるんです。
怖くて寝ていられませんから、部屋を替えてください」

これを聞いている間に、背後の気配で、
先輩がこの患者さんの病室に入っていったのがわかりました。
「顔のいっぱいある人って、どういうことですか」と聞き返すと、
患者さんはちょっと困った様子をしましたが、
「あのー、細い首にブドウの房みたいに顔がいっぱいついて・・・・」そこまで言ったときに、
ふっという感じで患者さんの姿が消えました。
思わず息を飲みました。小窓から病室をのぞくと先輩が手招きしています。入っていくと、
「脈拍がかなり弱くなってるようだから、先生を呼んできます。ここで見ていて」と言って、
先輩は小走りに出て行きました。

患者さんは青ざめた顔で目をつむっています。さっきのことが気になって、
患者さんの足の向いたほうの天井を見ると、
隅のほうに黒いモヤがかかって、しかも動いているような気がしました。
モヤは集まってきて風船の束のような形に・・・
先輩と当直の先生が入ってこられ、先生は容態を見ておられましたが、
また出血している可能性が高いということで、自動縫合器での内視鏡手術となりました。
緊急輸血もしたようです。
患者さんはなんとか一命をとりとめ、2ヶ月ほど入院して退院されました。

もちろん患者さんにナースステーションで見たことは言いませんでしたし、
患者さんのほうからも話は出ませんでした。
先輩にはどういうことか聞いてみました。
「私にはなんにも見なかったけど、あなたが窓口でだれかと応対してる様子だったから、
もしかと思って病状がよくないあの患者さんの様子を確認しに行ったの。それだけ」
と答えられました。
それから「顔のいっぱいあるもの」についての話もしてみましたが、
「さあ何のことかわからない・・・、その話、他の人には言わないほうがいいよ」
きつめの調子でこう注意されました。


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