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こをとろ

2014.02.20 (Thu)
1週間後に小4の娘の学校で一泊のスキー教室があるため、
押入にしまってあったスキーウエアを1年ぶりに出してみました。
サイズが合うかどうか心配だったんですが、着せてみるとなんとかもちそうでした。
ただ少しかび臭く感じられたので、ベランダに干すことにしました。
その日はめずらしく気温が高く、
屋根からずっと雪がとけた水がしたたり落ちるほどでしたから。
夕方、冷え込んできたので他の洗濯物といっしょにウエアをとり込もうとしたところ、
ピンクのつなぎのウエアの背中から腰のあたりにかけて、
赤黒い染みがついているのに気がつきました。

ピンクの地と重なったためか、赤というより黒と褐色のまだらになっていました。
手でさわると、カサブタをこすったときのように、黒い固まりがこぼれ落ちました。
血がついているかのようでした。他の洗濯物も確認しましたがなんともありません。
・・・ここはマンションの6階で、外から人が近寄ることなど当然できませんし、
家族でケガをしているものもいません。・・・その染みはかなり大きく広がっていて、
クリーニングに出してもとれるとも思えませんでした。染みがついたことも不気味でしたが、
「ああ、新しいのを買わなきゃいけない」と考えて、腹がたってきました。

ウエアを洗面所に持っていき、
濡れタオルでこすってみるとタオルが真っ赤に染まりました。
中の綿にまで赤い液体が染みこんでしまっているようでした。
そのとき同居している母が外出先から帰ってきましたのでこのことを話すと、
母はウエアの汚れを手にとって見ていましたが、
「まさか今どき、子とろなんてないよねえ」とつぶやきました。

「子とろ」という母の言葉を聞いて、私もこの地域に伝わる昔話を思い出しました。
漢字で「子鳥」あるいは「子獲ろ」と書くのだと思いますが、
幼い子どもを亡くした女の無念が鳥の形をとった化け物のことです。
女は子どもの死を信じられずにさまよい、子どもの着物が干してあるのを見つけると
自分の血をつけて目印にする。
血をつられた子どもは数日のうちに体も魂も獲られてしまう、そんな言い伝えです。

「まさかそんな、迷信みたいなこと」
「でも、スキー教室は◯◯山でやるんだろう。この話はそこいらの集落の言い伝えだよ。
・・・お休みさせたほうがいいんじゃないかい」
母はこう言いましたが、そんなことができるはずはありません。
都会からムコにきたダンナが信じるとは思えませんし、
なによりも楽しみにしている娘が納得するはずがありません。
それにここ何十年も、行方不明になった子どもの話などもなかったのです。
それがわかっているから、母も強くは主張しませんでした。
結局ウエアの汚れはどうにもならず、
学校から帰ってきた娘を連れて新しいのを買いにいかざるをえませんでした。

でも、それもムダになってしまいました。
娘がインフルエンザにかかり、
またスキー教室自体もインフルエンザの蔓延で中止になってしまったからです。
母は◯◯山に行かずにすむということでほっとしてるように見えましたし、
娘も自分だけがいけないわけではないので、
ダダをこねるということもありませんでした。

娘は薬のおかげか、それほど高い熱が出ることもありませんでしたが、
気分はよくないようで、居間に布団をしいてずっとうつらうつらしていました。
インフルエンザにかかった子どもの異常行動については、
テレビの報道等で知っていましたし、話題になっていた薬は処方されなかったのですが、
医師からも注意を受けたので、
母か私が必ずそばについているようにしました。

娘が学校を休んで2日目、ちょうどスキー教室があるはずだった日のことです。
母は老人大学があって出かけていました。
私はずっと娘についていましたが、昼におかゆを食べさせた後、
娘の布団の脇に横になって少しうとうとしてしまいました。
・・・冷たい風が顔にあたって目が覚めました。
布団に娘の姿がありません。
ベランダのサッシが開いていてそこから風が吹き込んできていました。

「きゃはははっ」という笑い声が聞こえました。娘の声でした。
ベランダの手すりの陰にしゃがんでいた娘が急に立ち上がり、
上に向かって両手を広げました。
ザバッ、ザバッという音がかすかに聞こえてきました。
走ってベランダに出て、娘を抱き上げましたが、
娘は奇声を発して手足を振り回し暴れ、取り落としそうになりました。
娘を抱いたまま、サッシの間から部屋の中に倒れ込みました。

そのとき冬空が見えました。大きな鳥が輪を描いて飛んでいました。
鳥の頭はぼさぼさと広がっていて、人間の髪が風になびいているようでした。
娘を部屋の奥に突き飛ばし、這いずっていってサッシを閉め鍵をかけました。
鳥は旋回しながらベランダに近づき、そのときに髪の間から開いた口がのぞきました。
口の中は真っ赤で、ぼろぼろになった歯が見えました。
もう一度娘を抱きかかえ、玄関へ走りました。
部屋から出るときに後ろを振り返ると、鳥の姿は遠く、小さくなっていました。

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