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不条理テイスト

2014.03.12 (Wed)
 自分が書く怖い話には不条理なテイストがかなり入っています。
例えば、前に書いた『ケンちゃん』でも、なぜ産休講師の先生が小学生の児童を
ヌイグルミの中に入れて願い事をするのか理由がわかりません。
ただ単に謎ということではなく、先生は何らかの意図があってやっていると思われるのに
読む人には理解しがたい。だから不条理感が生じるのです。
ただしこの答えは、書いた自分にもよくわかってはいません。
これによって何かを文学的に明らかにしようと考えているわけではないので、
あくまで不条理なテイストです。
いわば怖い話の味つけ的なものです。
関連記事 『ケンちゃん』

 一方、不条理文学と呼ばれるものは、作者の側に明確な意図があります。
不条理文学では、アルベール・カミュの『異邦人』やフランツ・カフカの『変身』などが
古典的な代表作と言われることが多いのですが、
自分はこの2人はだいぶ違う点があると考えています。
 カミュのほうは、明晰な知性を持つ人物は、世の中とは合致しない。
なぜなら世の中というものは多くの点で不条理であり、
すべてを見通せるものは、ギャップを感じて世の中からはじき出されてしまう・・・
こんなテーマだと自分は理解しています。
カミュはこのテーマに固執したあまり、文壇から孤立していきましたよね。

 これに対してカフカのほうは、不条理を描くことで、それまで当然と考えられていたことを
改めて問い直す・・・といった手法だと思います。
 例えば、主人公は、朝起きて「朝食」を食べようとする・・・すると家族のみんなが、
朝食って何だ?と言いだす。そんなものこれまで食べたことがない、そんなことしちゃだめだ、
と言われ、頭にきて無理矢理に朝食を作って食べてしまう。
すると家族が警察を呼び、主人公はパトカーに連れていかれてしまう。
この後、取り調べがあったり裁判があったりして、
その中で「朝食」というものの持つ意味が浮かび上がってくる。
・・・今考えたのであまりいい例ではないですが、こんな感じでしょうか。

 『変身』にしてもそうですよね。一家の稼ぎ手であるグレゴールは、
ある朝毒虫に変身してしまう。それまでグレゴールを頼りにしていた家族、父や母や妹は
彼を嫌悪し、自分たちで自立する手段を探し始める。
グレゴールは失意のうちに死に、残された家族は幸せになっていく・・・
という予感を感じさせるところで話が終わります。
毒虫に変身することによって、
家族にとってグレゴールとは、あるいは家族とは何だったのかが明確に浮かび上がってくると思います。
 もしこれが、単にグレゴールが重い病気にかかってしまっただけだったらどうでしょう。
家族は、肉親の情やら世間への体面から、グレゴールを傷つけたり、
つらくあたったりすることはできなかったでしょう。
この場合、どこにでもあるような貧しい家族のエピソードになってしまい、
作品に深い文学性は生まれなかったのではないでしょうか。
日本だと安倍公房なんかに、そういった作品が多いでしょうかね。

 怖い話の場合は、文学性が入ってしまうと怖さの焦点がぼけてしまう、
ということがあると思います。あくまで味つけとして用いるのがよいのではないでしょうか。
あと、すべてが不条理的な話だと、読む側が理解を放棄してしまうので、
つじつまが(オカルト的に)合う話と混ぜながら書いていきたいと考えています。

『Die Verwandlung』



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コメント
> 怖い話の場合は、文学性が入ってしまうと怖さの焦点がぼけてしまう

私は、むしろ「怖さ」にこだわらない怪談話が読みたくて、メルマガを始めたみたいなところがあります。
それでずーっと80話目くらいまでやってきたんですけど。
80話目前後くらいから、怪談話には、読者のアプローチとして「怖い」っていうことは必要なんだろうなって思うようになりました。

ただ、個人的な「好み」としては。
「怖い」ってことにこだわった(こだわりすぎた)お話(怪談話)というのは、いまだにどうなんだろうなーって気がしてしょうがないんですよねー。
ひゃく | 2014.03.15 19:59 | 編集
コメントありがとうございます
うーんまず、自分はホラー小説ではなくて怪談を書いているつもりなので
なるべく文学的な感じにならないようにしてます
シャーリージャクスンなんかはかなり文学的な要素があると思うんですが
そっちに近づかないように・・・
あと、怖さというのを意識しないと書く上での指針がなくなるというか
羅針盤なしに広い海に航海にのりだした感じで
どっちへ進めばいいかわからなくなります
bigbossman | 2014.03.16 10:27 | 編集
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