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ロウソクを消す

2014.03.13 (Thu)
ここ十何日も続けて、奇妙な夢を見ていました。
夢というのはおおかた奇妙な内容には違いないでしょうが、妙にリアルです。
自分は、玉砂利が敷かれた神社の参道にいて、拝殿のほうへ向かって歩いてるんです。
現実の世界で、見覚えのある場所じゃありません。
神社はお祭りでもあるのか、たくさんの幟が立っていますが、
何と書いているかは読めませんでした。
ピントがぼけたようになっていてはっきりしないんです。遠くから笛の音が聞こえていました。
そういう賑やかな雰囲気のわりには、自分が見える範囲には誰も人がいないんです。
ああ、日中です。参道にはまぶしいくらいの白い光があたっていましたから。

玉砂利に影を落としながら最後の鳥居をくぐると、
拝殿は真新しい白木で、木の香さえ漂ってきそうなほどです。
丸い柱だけが丹塗りになってました。
自分は手水鉢で口をすすぐと、鈴を鳴らし、礼をして手を打ちます。
その手の打ち方が変わっていて、肘を張り指先を下に向けた窮屈な形で4回拍手するのです。
・・・誰に教えられたというわけじゃなく、
夢の中の自分は自然にそうしてるとしか言いようがないです。
それから財布を取り出してお賽銭を投げます。
なぜか財布に入っている束になった紙幣なんですが、
見たことのないものです。昔のやつじゃないでしょうか。

拝殿の戸は大きく開いていて、木の階段を上ると戸のすぐ内に細い横木が渡してあり、
そこに小さなロウソクがずらっと並んでいます。
ここが不思議なんですが、
左右を見ると暗い中をどこまでもずっとロウソクが連なってるんですよ、
そんなに広い社殿の幅はないのに。
・・・夢を不思議だといってもしょうがないんでしょうけども。
自分は何かに導かれているように、
左右どちらかに進んでロウソクを選んで一本だけ釘から外すんです。
そして片手であおいで消す。そのときにシュンと空気がゆらぐのを感じるんです。
どう説明したらわかってもらえるでしょうか・・・
リモコンでテレビを消して瞬時にまたつけたような感じ、といえば近いかもしれません。

こんな夢ですね。だいたいこのあたりで目が覚めます。
ときには鳥居をくぐって神社から出ようとするところまで覚えていることもあります。
目が覚めると夜中の2時から3時の間ですね。
何かとても難しいことをやりとげた、といった達成感と、
それにも増して空しいような感じがあります。
急にこういう夢を見るようになったんです.
・・・さあ、きっかけといっても特にないんですね。
最近どこかにお参りにいったということもないし。
とにかくこんなような夢を2週間くらい続けて見ているんですよ。

3日前の日曜日のことです。
自分は中学校で剣道部に所属してるんですが、
隣の県で大会があって町のバスで出かけてたんです。
団体戦の午前の予選リーグを勝ち抜いて、昼食休憩になりました。
その日は天気がよかったので武道館の外の芝生に敷物をしいて仲間と弁当を広げました。
すると道の向こうのまばらな木立の中に神社があるのが見えました。
それが、夢の中でお参りをしているところによく似ているような気がしたんです。
仲間に「ちょっと向こうを見てくる」と声をかけて道着と袴のまま道路を渡りましたが、
神社に出る道が見つからず大回りしなくてはなりませんでした。

民家の中に参道に続く道を見つけて進んでいってみると、
細部は違ってるとこもあるんですが、おおかたは夢の中と同じでした。
ただ、夢の神社は砂利もきれいだし鳥居や社殿も新しいんですが、
目の前にあるのは、相当に古ぼけているんです。
参道の終わりまでくると、ちょうど拝殿の正面の戸が開いて、
神官と黒い着物の女の人がそろって出てきたところでした。
神官はきちんと装束をつけ、眼鏡をかけたかなり年配の人でした。
女の人は神官よりだいぶ背が高く、
自分の母親より若いように思えました。20代の後半くらいでしょうか。

二人はうつむいて出てきましたが、顔をあげるとまっすぐに自分のほうを見ました。
そして、まるで自分がそこにいるのがわかっていたように、
こちらに向かって手招きしました。
どっちの人の顔からも、感情のようなのは感じませんでしたね。
自分は変に思いながらも、呼ばれたのだろうと素直に近づいていきました。
階段の上から神官が声をかけてきました。
「あんた、ここに呼ばれて来たんだろう。今おつとめをしている人だよね。中学生かい?」
意味がわからなかったのですが「そうです。剣道の大会に来てるんです」とだけ答えました。

神官はうなずくと「夢で見るんだろう、ここのこと?」と重ねて聞いてきたときに、
「はい。何であの夢のことを知ってるんですか?おつとめって何ですか?
ここは何の神社なんですか?」たくさんの疑問が今度は自分の口をついて出ました。
神官は顔をゆがめて下を向きました。笑ったようでした。
「あんたは選ばれたてお役目を果たしているということだ。
神様の御使いのようなことをしている」
神官は地面まで下りてきて自分の肩に手を置くと、
「神様はちゃんと見てくださるから、あんたの剣道の成績もあがるよ。
これからは何もかもよくなるだろう」とささやきました。

続けて「今夜も夢を見るだろうが、いつもと少し違うかもしれない。
印がついているロウソクがあるだろうから、それを消しておくれ」と言いました。
自分がけげんな顔をしていたからでしょうか、
女の人が急に口を開いて「お願いします!よろしくお願いします」と叫びました。
目の焦点があわず、視線があちこちにさまよっているようでした。
神官は肩に置いた手にぐっと力を込め、高齢とは思えぬ素早さで階段を駆け上がりました。
そして女の人といっしょに社殿に入って戸をぴしりと閉めました。
最後に女の人が自分に向かって深々と礼をしたのを覚えています。
結局、疑問はまったく解決しないまま不承不承武道館へと戻りました。

大会は午後も勝ち進み、自分たちのチームは見事優勝することができました。
・・・その夜も夢を見ました。いつもと同じでしたが、
うろうろと消すべきロウソクをさがしていると、
中に一本、胴に赤い筋が入ったものがありました。
ははあ、昼に言ってたのはこれだなとわかりました。消すことに迷いはありませんでした。
むしろ今日の昼の出来事から、
神様のお手伝いをしているのだという誇らしい気持ちがありました。
それを抜き取ってあおぎ消した瞬間、夢の画像が大きくゆがみ、
耳元で絶叫が聞こえたと思いました。自分は布団に起き上がり、荒い息を吐き続けました。
びっしょりと汗をかき、心臓の音が耳に響いていました。

翌日、関東に単身赴任していた父が急死したという知らせが届きました。
布団の中で冷たくなっているのを、同僚に発見されたのです。


*「天(あめ)の逆手」というのは『古事記』に出てくる呪詛の法です。
国譲りを天孫族に迫られた大国主命の子、事代主命が国譲りを承知した後、
自らの乗っていた船を踏み傾けて沈め、
そこに青柴垣を作って隠れた(死んだ)という記事によります。
『伊勢物語』にも、この故事に倣い、
身分の高い女に振られた男が天の逆手を打って呪う場面が出てきますね。
 古神道家によって再現が試みられていますが、頭の上で打つ、背中に手を回して打つ、
手の甲を打ち合わせる、指先を下に向けて打つなど諸説あって判然としません。
自分でやってみた感じでは、指先を下に向けて手の甲を打ち合わせると
特に禍々しい雰囲気が出るような気がしました。



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