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露天風呂

2014.03.16 (Sun)
休みが2日とれたんで、仕事の仲間4人と温泉に行ったんです。
場所は奈良の奥のほうですね。
男ばっかりで温泉行って何が面白いのかと思うかもしれませんが、
IT関係の仕事でして、一日中根を詰めて座ってると目と肩にくるんですよ。
そういう疲れをいやすというのがいちおうの建前で、
あとね、妙にアナログが恋しくなるんですよね。具体的には麻雀です。
今はネットでオンライン対戦とかもできますけど、
やっぱり自分の手で牌に触れる感触ってのが懐かしくなります。
といっても手積みではなく、宿の自動卓を借りましたけどね。
そんなわけで、体のリフレッシュをかねて、
一泊二日で仲間と麻雀をしに行ったわけです。

旅館は、まさに秘湯というような一軒宿で、
玄関の軒先に赤い人形が吊るしてあったのが印象に残ってます。
自分らの他に客はいなかったんじゃないかな。駐車場には宿の車しかなかったし。
着いて早々にひと風呂浴びて浴衣に着替え、夕食を食べてすぐ麻雀を始めました。
戦績は・・・まあぼちぼちでしたよ。この時までは大負けってことはなかったです。
で、11時頃にいったん小休止して、また風呂に行ったんです。
屋内の風呂でしたが、源泉掛け流しでした。
そのあたりはちゃんと調べて行ったんですよ。白濁したお湯で、ややぬる目でした。
他のやつらは20分くらいで上がりましたが、
自分は長湯が好きなんでまだ湯船につかってたんです。

すると、湯気でくもったガラス戸の外に、露天風呂があるのを見つけました。
あれ、と思いました。旅館をネットで調べたときには露天があるとは載ってなかったし。
そういえば脱衣所のほうに外へ通じるらしい木戸があったなと思い、
そこに行って引っ掛け式の簡単な鍵を開けると、下駄が一足だけありました。
いったん体をふいて、浴衣だけはおった状態で出てみたんです。
葦の生えた草地を通っていくと、立派な石風呂のようなのがありましたが、
手前に膝ぐらいの高さに縄が張ってあり、紙の御幣がいくつかついていました。
それをまたぎ越えると、内湯より広いくらいでした。
中ほどに大きな岩がつき出ていてその先は見えませんでしたが、
風呂は岩陰のほうまで続いているようでした。
お湯は乳白色で、手を入れてみると内風呂よりさらにぬるかったですが、
入れないというほどではありませんでした。
もったいないなあ、と思いましたよ。なんでこれを宣伝しないんだろって。

で、入ってみることにしたんです。
簡単につくった木の棚があって、そこに脱衣籠がいくつかのってました。
いや、服とかは入ってませんでしたねえ。
照明はなかったですが、内湯の窓からの光で十分明るかったです。
入ってみると、これが深いんです。お湯が胸のあたりまできました。
これじゃ子どもははいれないし、お年寄りも危ない。
それで使ってないんだろうかと思いました。泳げるくらいなんです。
底は砂利のようで熱かったです。お湯が湧き出ているんだと思いました。
その風呂の中をゆっくり歩いていって、大岩を曲がると、あっと思いました。
数m向こうに、女の人が岩にもたれるようにして入ってたんです。

マズイかな、と思いました。ここは従業員用か、
さもなければ旅館とは別のこの地域の共同風呂とかなのかもしれないなと。
・・・女の人は20代後半くらいでしょうか。
見事な日本髪を結っていて、うつむきかげんにお湯を見つめてました。
いや、体は見えませんでした。出てるのは肩より上だし、湯が白いですからね。
・・・こっちが入ってきた音は当然聞こえてるだろうから、身を固くしてると思ったんです。
それですぐ戻ろうとしたんですが、妙なことに気づきました。
女の人の手前に丸い毛玉のようなのが浮かんでるんです。
何だろうと思ったら、それがクルッと回ってこちらを向きました。
サルです。生きた子ザルの頭でした。気持ちよさそうな顔でしたよ。
大人のサルでも背が立つ深さじゃないんで、女の人が手に乗せているんだろうと思いました。

背を向けようとしたとき、女の人がこっちを向いて、ニッと笑ったんです。
白粉なんでしょうか、真っ白な顔でした。
そして日本髪の頭からずぼっとお湯にもぐったんです。白い背中と尻が湯の外に出てきました。
子ザルは支えを失って少しもがきましたが、女の人の背に上りました。
するとね、女の人の背中が裂けたんです。肩の真ん中から尻まで縦にぱっくりと。
叫び声を上げてしまいました。数十センチの裂け目は中は赤黒いんですが血も出なくて、
そこからサメの歯のようなのが何本もせり出してきました。
一本が三角定規くらいもあったかもしれません。
その裂け目の中に背中にのってたサルが落ち込んだんです。
今でも耳に残ってますよ。「イヒーッ」という子ザル叫び声と、
骨が折れ砕かれるボキボキという音が。
白いお湯が赤く染まり、猿の毛があたりに浮いてきました。

とんとんとつま先で飛ぶようにして、深いお湯の中を逃げましたよ。
浴衣をひっつかんで裸で内湯まで逃げ戻り、戸に鍵をかけました。
追ってくるような気配はありませんでしたが、浴衣を着て急いで浴場を出ようとしました。
仲間に知らせようと思ったんです。
浴場の戸を開けると、年配の旅館の女将が平伏していました。
女将はそのまま顔を上げずにこう言いました。
「見てしまったものはしかたありません。ぜったいに口外しないでください。
申しわけありませんでした。もう十年以上出ておらなかったので油断がありました。
お願い、お願いいたします」で、足にしがみついてくるんです。
どう答えていいかわかりませんでした。
案内に載ってなかったところに勝手に入っていった自分も悪いのだし、
それに言っても信じてもらえるようなものじゃない。
「わかりました、わかりました。言いませんから」そう言うと、女将は顔を上げ、
「それがよう御座います。言えばアレが追いかけていくでしょうから」

部屋に戻って・・・仲間には言いませんでしたよ。
麻雀を再開して、結果はさんざんでした。
気持ちが動揺してただけじゃなく、早い順目で役満に振り込んでしまうとか、
運もすっからかんになっているようでした。
翌日昼ころに起きて、出立する前に仲間が一度風呂に行きましたが、自分は入りませんでした。
廊下のガラス越しに昨夜の露天風呂のほうを見ると、四方に竹ざおが立てられ、
大きく注連縄が張りめぐらされていました。
旅館を出るときに、女将が近寄ってきて目配せをすると、
軒に吊るされていた人形をはずして自分に渡してよこしました。
そしてこうささやいたんです。
「これをお持ちなさい。しばらく運気が悪いでしょうし、何より魔除けになりますから」
それがほら、これなんです。

『庚申猿』
*この人形は「さるぼぼ」といい、
猿の赤ちゃんという意味です。
自分の身代わりになって災いを受ける
魔除けの一種です。
庚申信仰と深いかかわりがあります。
庚申信仰については、
道教の「三尸説」と陰陽五行説の
入り交じってできたもので、
ここで一口に説明するのは
難しいです。









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コメント
妖艶な女の妖怪がうかんできました^^
くわばら、くわばら。
真樹海 | 2014.03.16 20:17 | 編集
コメントありがとうございます
これはおそらく妖怪なんだろうと思います
「さるぼぼ」の写真を見てるうちに思いつきました
bigbossman | 2014.03.17 00:13 | 編集
確かに怖い話。
つい全部読んでしましました。
通りがかり | 2014.03.17 12:41 | 編集
コメントありがとうございます
たいへん励みになります
bigbossman | 2014.03.17 14:35 | 編集
青いテントの話しなかなかです。
もう少し妖艶な、男女の絡みのあるような
怖い話しないですか。
通りがかり | 2014.03.22 10:30 | 編集
コメントありがとうございます
男女のからみを入れろという感想は実はよくいただきます
入れてもいいんですが、怖い筋に関係させるとなると難しくて・・・
四谷怪談みたいになっちゃうんですよ
bigbossman | 2014.03.22 16:21 | 編集
話しの筋はいいので是非妖艶なやつお願いします。
通りがかり | 2014.03.24 00:38 | 編集
妖艶・・・
bigbossman | 2014.03.24 01:03 | 編集
前回のコメント、チョット紛らわしい書き方をしましたが
話しの筋は、落ちもあって気に入ってます。
あとは、読んでいてもうひとつ引き込む何かがあればと
思ってコメントしました。
通りがかり | 2014.03.24 11:04 | 編集
いえいえ別にかまわないんですが・・・
他のFC2ブログの皆さんの影響に染まってきたので
BL系に行こうかと(けっこうマジ)
bigbossman | 2014.03.24 18:35 | 編集
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