FC2ブログ

「免疫力」信仰は危ない

2021.02.13 (Sat)
xx (6)

今回はこういうお題でいきます。科学ニュースのカテゴリですね。
この記事、おそらく読んで反発される方もいるんじゃないかと
思いますが、まあ、あくまでbigbossman個人の考えですので、
そこはご承知おきください。

さて、ネットには「免疫力アップで健康に」とか「免疫ががんを
やっつける」とか、そういう記事が多いですよね。免疫治療を
しているクリニックの広告も目立ちます。最近は youtubeなどの
動画サイトの広告にもかなり進出してきていて、
儲かってるんだろうなと思います。

では、免疫って何なんでしょう。ネット辞書を引くとこう出てきます。
「体内に病原菌や毒素その他の異物が侵入しても、それに抵抗して
打ちかつ能力。また、異物と反応する抗体を作って発病をおさえる
抵抗力を持つこと。転じて、物事がたび重なるにつれて
慣れてしまうこと」なるほどね。

これ自体はたいへん正しいですが、あたり前ですよね
xx (1)

「転じて」以下の部分は、「最近、妻の小言に免疫がついた」
みたいな感じで使われるんでしょう。みなさんが風邪をひいたとき、
くしゃみや鼻水、発熱をしますが、これは風邪のウイルスが
症状を起こしているというより、自己免疫が風邪のウイルスと戦った
結果、起きるものです。体温が高いほうが免疫が有効に発揮されやすい。

こう書くと、免疫ってすごくいいもんだと思われますよね。たしかに
そうです。もし免疫がなくなると、そこらにありふれてる常在菌に
感染して、すぐに死んでしまいます。免疫不全におちいった場合、
無菌室で厳重に管理されなくてはなりません。

でも、免疫が諸刃の剣であることは、医学的には常識です。
今回のコロナ禍ではワクチンに注目が集まっていますが、外から
抗体を注射して自己免疫を働かせ、ウイルスを撃退するための
ものです。また、コロナが重症化する原因の多くは
サイトカインストームで、いわば自己免疫の暴走です。

xx (4)

これはハチに刺されたときなどにも起きます。1度目に刺されて
体内に抗体ができ、2度めに刺されたときに免疫が暴走を始める。
アナフィラキシーの症状が出てから心停止までの時間は15分という
報告もあり、それだと助かるのは難しいですよね。

自己免疫性の疾患はたくさんあります。軽微なものとしては
花粉症。体内に入ってきた花粉を自己免疫が攻撃することで起こる
アレルギー反応の一つです。さらに、アトピー性皮膚炎や
関節リウマチなどもそうですね。膠原病の一つで、
炎症性自己免疫疾患です。辛く苦しい症状が特徴ですね。

正常細胞とがん細胞はここまで違いはないので、誤解をまねきやすい
xx (2)

また、自己免疫性肝炎、すい炎などは、死にいたる可能性もあります。
で、これらについては、どうして発生するかの機序はほとんどわかって
ないんです。原因が不明なので、対処療法を行うしかない。全体として、
自己免疫性の疾患で亡くなる人は、かなりの数がいると思われます。

人間の持つ免疫機能は複雑系の最たるもので、仮に全体像が100
だとすれば、現状の科学、医学では3か4程度しかわかっていないと
自分は考えています。自然科学の中でも数学が適用できない分野の
歩みは遅々として、試行錯誤をくり返しながら少しずつ知見を
深めていくしかありません。医学は人体実験ができませんから。

さて、上でも少し書きましたが「免疫力を上げてがんを撃退する」
これって本当にできるんでしょうか。自分はきわめて懐疑的です。
がんは遺伝子の突然変異によって起こります。こう書くと、
まったく違った細胞ができるように思われがちですが、がん細胞は
正常細胞とほとんど変わりません。ほんの一部が違うだけ。

xx (1)

細菌やウイルスなどの外部からの侵入者は、人間の細胞とは
まったく違うものです。ですから、リンパ球などが敵と認識して
攻撃できる。ところが、がん細胞はほとんど同じですので、
免疫細胞が認識できない。まあ、がんにかからないようにするため、
免疫力を高める生活をするというのなら、ありかもしれません。

ですが、いったんがんができてしまった場合、自己免疫で治癒に
持ち込むというのは不可能だと思います。だって、がんはゼロから
できるわけですが、免疫ががんを治すんだったら、そのときに
どうして消してしまえなかったんでしょうか。また、がんは
免疫細胞をごまかすさまざな手練手管を持っています。



オブジーボ、キートルーダなどの免疫チェックポイント阻害薬は、
このがん細胞が免疫をだます仕組みを破壊するものです。
自己免疫ががん細胞にたぶらかされて攻撃のブレーキを
踏んでしまっているのを解除する。ですから、効く人には
劇的に効くんですが、副作用で免疫暴走が起きたりもします。

医師の近藤誠氏は、がんの免疫治療に批判的で、「体内で毎日がん化が
5000例は起きていて、それを免疫細胞が殺しているというのは
根拠がない」と著書で書いています。自分は、近藤氏のがんもどき理論は
馬鹿げていると思いますが、この発言は評価しています。がん細胞で
できてすぐ死ぬものが多いのは事実ですが、

xx (3)

おそらくその手のがん細胞は、遺伝子変異により初めから生きられない
ようにできている。あ、かなり長くなってきました。以上のような理由から、
自分は「免疫力を高める」という考え方には批判的です。もちろん、適切に
運動し、バランスのとれた食事、ストレスをなくし よい睡眠をとるのは
大切なことですが、有効に免疫力を高める方法は現状ではわかっていません。
たんにリンパ球の数が多ければいいというような、単純な話ではないんです。

さて、年齢を重ねるにつれて免疫力は落ちてきます。加齢によって低下する
機能は、獲得免疫系の方が著しいことがわかってきました。一説によると、
獲得免疫の能力は、20代頃がピークであり、40代ではすでに
その半分に低下するとされています。また、高齢者の体は、低レベルでは
ありますが、あちこちで炎症が起きている状態です。

xx (1)

顔や手にしわ、シミができるのも炎症の結果と考えていいでしょう。
そのため、自己免疫では対処ができなくなる。まあしかたのないことです。
ほとんどの生物で、繁殖、子育て期には体がよく働くように機能しますが、
それが過ぎると、役目の終わった個体として死に向かうように
プログラミングされているという説もあるくらいです。

さてさて、ということで、この記事で自分が言いたいのは、免疫については
ほとんど何もわかってないこと。「免疫力アップでがんを治す」などの
ネット上の文言の多くには根拠がないこと、下手に免疫にちょっかいを出すと、
おそろしい自己免疫疾患を引き起こす可能性があることです。
最近あまりに、怪しいインチキ業者が「免疫力」という言葉を使っているのを
危惧して本項を書きました。では、今回はこのへんで。



関連記事
スポンサーサイト




トラックバックURL
http://scoby.blog.fc2.com/tb.php/3097-4cab266e
トラックバック
コメント
管理者にだけ表示を許可する
 
back-to-top