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アーカイブ ネットの墓の話

2021.02.14 (Sun)
前に「悪魔の話」というのを書きましたが、あれに登場するKさんに、
昨夜、いつものバーでお会いしていろいろお話をうかがいました。
Kさんは、貸ビルやアパレルの店などを手広く経営されている実業家ですが、
霊能者としての活動もしてるんですね。ただし、
すべてはボランティアで、謝礼などは一切もらっていません。
「Kさん、最近、何か面白い話とかありましたか?」
「bigbossman、お前なあ、ブログに書くネタを探してるんだろ」
「まあそうです」 「でもな、ブログって怖いんだぞ」
「どんなとこがですか?」 「お前、去年大病しただろ」
「あ、はい。12時間の手術をして、一時は死も覚悟しましたよ」
「で、もしあのときお前が死んでたら、今書いてるブログはどうなったんだ?」

「え、それは大丈夫です。共同事務所の仲間にパスワード教えてるんで、
 消してくれるはず。あと、自分のパソコンの処分も」
「だったらいいけどな。お前のやってるブログなんて、
 特に霊障のかたまりみたいなもんだから」 「・・・・」
「でな、人が生きていく世の中には、喜びも悲しみもあるよな」 「はい」
「それは人間の歴史が始まって以来、ずっとそうだったんだが、
 ネット社会になって、その喜びや悲しみが不特定多数につながるようになった」
「そうですね」 「ネットのことを電脳空間とも言うよな」 「はい」
「けど、実際にそこにあるのは人間の思いなんだよ」 「はい」
「ところで、ネットの墓って知ってるか」 「いえ」
「管理人が亡くなって、ネット上にそのまま放置されてるブログのことを言うんだ」
「ああ、なるほど。言いえて妙ですね」

「だろう。ただまあ、ブログをやってる人でも、自分のブログに対する思い入れは
 さまざまだ」 「はい」 「だからほとんどのネットの墓は無害だが、
 中にはマズイものもあるんだ」 「そうなんでしょうねえ」
「お前、闘病ブログって知ってるか?」 「あ、わかります。病気になった人が、
 病状の経過や治療のことを書いたりするんですよね。上位になってるブログは、
 自分のより3桁くらいアクセス数が多いです」 
「あれなんて、かなり危険な要素がいろいろある」 「ははあ」
「まず、書いてる本人の思い入れというか、念のこもり方が強い」
「そうでしょうねえ」 「ホスピスの病床で、スマホで記事を投稿して、
 そのまま中断してしまってるものもある。おそらく、その記事を書いた直後に
 亡くなったとかだろう」 「はい」 「身内がいれば、死去したという報告を

 ブログに上げたりすることもあるが、今は独身の人も多いし」
「そうですね」 「で、重い病気の場合、仕事をやめてしまったり、症状が重くて
 出歩けなかったり、医師との関係がうまくいかなくて病院を転々としたり、
 外の世界とのつながりが、そのブログだけって場合もあるんだ」 「はい」
「それと、詐病ブログって知ってるか?」 「いえ」
「病気を装った嘘のブログってことだよ」 「何のためにそんなことを?」
「さっき、アクセス数が多いって自分で言ったじゃないか。末期がんとか、 
 難病のふりをしてブログを立ち上げれば、大勢の人に注目してもらえるし、
 アフィリエイト収入にもなる」 「ああ」
「アナウンサーの小林麻央さんが乳がんになって、すごいアクセス数だったろ」
「はい」 「あれ以後、かなり増えたらしい」

「でも、詐病なんてすぐわかるでしょうに」 「それが、そうでもないんだな。
 今は病気に関する情報なんてネットにいくらも出てるし、
 ずっと前に書かれてた他人のブログをその部分だけパクったっていい」
「うーん」 「それに、詐病ブログを書いてる人は、悲劇の主人公になりきって、
 すごく真に迫ったものも多いんだよ」 「・・・・」
「あとは、ブログを見るほうの問題もある」 「どういうことですか?」
「そのブログの読者が、必ずしも治療を参考にしたり、
 病状が軽快するように応援してるわけじゃない」 「・・・・」
「中には、自分より不幸な人を見て楽しみたいってことで、
 アクセスしてる人もいるわけだ」 「うーん、それは嫌ですねえ」 
「でも、実際そうなんだよ。お前、こないだ病気してどんなことを考えた?」

「いや、それは、健康って大事だなあ、生きてるだけで丸もうけなんだな、って」
「だろう。例えば、余命宣告なんかされた人のブログを見て、
 自分は何もないけど、まだ死ぬ心配がないだけ、この人よりはマシだってわけだ」
「うーん」 「まあ、そんな感じで、人間の嫌な部分がブログの周辺に渦巻いてたり
 するんだな」 「でも、病気がよくなるよう、心から応援してる人もいるんでしょう」
「まあな、むしろそっちのほうが多い。しかし、それはそれで、
 因縁の元になったりするんだ」 「どういうことですか?」
「Sさん、としておこうか。まだ20代の女性で主婦をしてる。その人が、
 偶然に、ある闘病ブログを見つけた。そのブログは5年ほど前に
 書き込みが途絶えてたが、まだネット上に残ってたんだな。ブログランキングからも
 外れて、意図的に探してもなかなか見つからないような」 「はい」

「でな、その管理人の女性が、たまたまSさんと同じ年齢だったこともあって、
 興味を持って読み始めた。ブログの管理人は生真面目な人だったらしく、
 病状や治療を細かく記してて、文章も上手だと思ったらしい」 「はい」
「で、それと同時に、管理人の境遇が不幸なことも知った。管理人は独身で、
 父親とは幼い頃に死に別れてたが、闘病中に母親まで亡くなってしまった」
「・・・・」 「それと、仕事を続けられなくなったんで、お金の問題もあった。
 あからさまにそういうことを書いてるわけではないが、そのあたりは読み取れた。
 で、Sさんは深く同情してしまったんだな」 「はい」
「ブログの書き込みは、病状が重くなるにつれて増え、それがあるときを境に
 がくんと減った。パソコンで書いてたのがスマホになり、とぎれとぎれになり、
 最後は、ブログを読んでくれた人へのお礼が2行書かれて終わってた」

「はい」 「それを何日かかけて読み終えたSさんは、
 あまりにつらい気持ちになったんで、ずっと何も書かれてなかったコメント欄に、
 管理人さんのご冥福をお祈りします、みたいなことを投稿したんだな」
「はい」 「それ以後も、ときおりブログを読み返したりしてたんだが、
 Sさんが夜中にうなされるようになった。毎夜、2時から4時ころの間に、
 悲鳴をあげて飛び起きる」 「はい」 「ご主人が心配して、心療内科に行かせたが、
 睡眠導入剤を処方されただけだった」 「はい」 「それで、飛び起きることは
 なくなったが、やはり寝汗をかいてうなされているし、悪い夢を見るって言う」
「どんな夢ですか?」 「黒い影がベッドに近づいてきて、体のある部分を
 なでる夢」 「黒い影?」 「姿形はわからなかったらしい。で、つてを頼って
 俺に連絡がきたわけだ」 「どうなりました?」

「Sさんからいろいろ話を聞いて、そのブログの存在を知った。で、読んでみたが、
 俺には陰鬱なだけの内容にしか思えなかった。おそらく、そのブログの管理人と
 Sさんの波長が合ったんだろうなあ」 「で?」
「でな、ブログの管理人の病気は、特殊な部位のがんだったんだが、
 Sさんが毎夜、黒い影になでられているのが、それと同じ場所だったんだよ」
「う」 「それに気がついて、知り合いのいる癌研の受診を勧めたんだ。
 よく頼み込んで、何種類もの検査をしてもらった。そうしたら、
 やはりその場所にがんが見つかったんだよ」 「うう」
「初期も初期のがんだったんで、Sさんは手術をして、経過観察になってる。
 幸い、再発や転移の兆候は出ていない」 「で?」
「もちろん、Sさんの手術と並行して除霊を進めた」

「上手くいったんですか?」 「たぶん大丈夫だろう。ただ、そのブログのほうは
 問題だった。悪い墓と化してるんだ。だから、またSさんのようなことが
 起きないとも限らない」 「でも、管理人の浄霊は済んだんでしょう」
「それとは別に、ブログそのものに命が宿ってるっていうか、
 悪霊化してるっていうか」 「で?」 「管理人に身内はいないし、
 難しかったが、なんとかブログサービスに連絡をとって、
 落としてもらった。これは、管理人本人を浄霊するより大変だったよ」
「うーん、ブログを書いた人が亡くなり、さらに浄霊されたとしても、
 ネット上に残ったものが霊障をまき散らすって場合があると」
「そう。命とはいえない命を持つんだ。これからのネットは怖い。 
 だから、bigbossman、お前も十分気をつけないと」 「お言葉、肝に銘じますよ」

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