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飛顔

2014.03.31 (Mon)
昼休みに芳美に声をかけられました。
「ねえ、秋葉(私のことです)。あの南口前に新しくできた○○○ってどうだった?」
〇〇〇〇というのは西洋雑貨とケーキのお店で、私も前から気になっていたとこです。
「どうだったって、いや、まだ行ったことないよ」
「えー、でも秋葉が入っていくの見たよ」「行ってない。いつのこと?」
「こないだの土曜の昼頃。電車で遊び行こうとしてあの前を通ったら、
ちょうど秋葉が入ってくとこだったんよ」
「顔も見た?」「見たよ、あんたその人だったよ」
「えー、でも変ね。行ってないよ。似た人がいるんだろね」
こんな会話をしました。

さらにその日、部活が終わった後、チームメイトの舞といっしょの帰り道で、
「秋葉。いつから石森先輩とつき合うようになったの?」
唐突に聞かれました。石森先輩というのは男子バスケ部の3年生で、
整った顔立ちであこがれてる人が多いんです。
「えー、何急に。つき合ってないよ」
「ホント?」「ホントだよ、何でそんなこというの?」
「見たって人がいるのよ。日曜日にあんたと石森先輩が手をつないで歩いてるとこ」
「えー、どこを?」「湾岸道路わきの遊歩道って言ってた」
「ないない、それ人違いだよ。日曜はずっと家でテスト勉強してた」

「あんたが見たわけじゃないんでしょ。だれに聞いたの?」
「・・・陸上部の美那」
「とにかくないから、そんなこと。それにしても変ねえ」
私は昼に芳美から聞いた話をしました。
「うーん、秋葉に似た人がいて芳美も見間違えたってこと?」
「いや、同じ人とは限らないと思うけど・・・私ってそんなどこにでもいる顔なのかな」
「そんなことないと思うけど・・・髪型とかはそうかも」
複雑な気分でした。実は石森先輩には私もちょっと関心があったんです。
それと、たまたまだと思いますが1日に2回も人違いをされるなんて、
何か気味が悪かったんです。

舞と別れ、「ただいまー」と言って家に入ると、
母がキッチンから出てきて、「えっ!えっ!」と言いました。
「お母さん、何驚いてるの?」
「だってあんた、さっき帰ってきてすぐ部屋に上がって行ったじゃない」
「さっきっていつ?」「ほんの10分くらい前だけど」
「・・・・」そんなことありえない、と思いましたが、
今日昼からの出来事があったため、かなり気持ちをかき乱されてしまいました。
部屋に行けば私がもう一人いるのだろうか。
その私と私が出会ってしまったらどうなるんだろう?私は消えてでもしまうんだろうか。

「えーお母さん、怖い。部屋にいっしょについてきてよ」
「今ちょっと料理の手が離せないのよ。ああ、隆あんた一緒に姉さんの部屋に行ってみて」
隆というのは中学生の弟で、剣道部です。
居間でテレビを見てたんですが、私たちのやりとりが始まってから興味津々で聞いてました。
「ねえちゃん、俺先に行くよ。今、竹刀取ってくるから」
そう言って玄関わきに立てていた竹刀を持ち階段を駆け上がっていきました。
私が後からついていくと、部屋に一歩入った状態で隆が固まっていました。
固まったというのは、言葉どおり立ったままビーンと硬直して白目をむいていたんです。

部屋は電気がついて、窓が開いていました。隆がそうする時間はなかったはずです。
机の上にお面が一枚、顔のほうを上にして置かれていました。
お面・・・にしてはいやに質感がはっきりしていて・・・
近づいて覗きこむと、それは私の顔でした。
顔はニャッと嫌ーな感じの笑いを浮かべ、それから表情が崩れました。
だんだんに色を失って紙粘土のような白になり、
私の顔形もなくなって石膏像みないな目鼻になりました。
フワンと浮き上がってひらひら宙を飛び、開いた窓からどこかに飛んでいってしまいました。

バタンと大きな音がして隆が倒れました。
駆け寄ると「うーん」と頭をさすりながら起き上がりました。
大きなコブができていたものの、それ以外に異常はないようでした。
あとで聞いたところでは、部屋に一歩入ったとたん目の前が真っ暗になり、
そこから先は記憶がないそうです。
「机の上のお面を見た?」と聞いたんですが、見てないとのことでした。
それからは特に何も変わったことは起きていません。
誰かが身に覚えのないことを言ったりすることもないし・・・
うまく言えないんですが、もしかしたらあの面は、
次々に顔を変えながらこの世を飛び回ってるんじゃないでしょうか。



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