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ブラシ

2014.04.11 (Fri)
こないだ新歓があって、その帰りタクシーに乗ったんだよ。
こんな地方都市だと、飲み会シーズンも昔ほど派手ではなくなってて、
ぶらぶら歩いてたらすぐにつかまえることができた。
話好きな運転手で、景気のことなんかしゃべっているうちに2千数百円でアパートの前に着いた。
料金を払って降りようとしたら、ごりっという感じで尻に何かがあたった。
車外に出てから確かめると座席と背もたれの間に赤っぽい安物に見えるブラシがのっていた。
拾い上げると、ブラシの歯の間に綿ゴミと縮れた長い髪の毛がたくさんはさまってた。

うわ、キモと思ったが、「運転手さん、これ忘れ物かな」と助手席の上から差し出すと、
数秒ながめていたが、乱暴にこちらの手からひったくり、
「早く出て」と言うと、すぐに自動ドアを閉めて車を急発進させた。
あまりの態度の変わりようにあっけにとられてタクシーを見送ると、
少し行ったところで停まり、助手席側の窓が開いて何かが車外に投げ出された。
それはアスファルトをバウンドして街路樹の根元の草の中に落ちたように見えた。
暗かったのと遠かったのではっきりはわからなかったが、さっきのブラシじゃないかと思った。
「何だよ、今の!?」薄気味悪く感じながらアパートに入った。

時間は1時少し過ぎで、アパートの他の住人に気を使いながらそーっと部屋に入った。
中に入ってしまえばここは防音もしっかりしてるし、明日は休みだし、
なんとなく飲み足りない気分もあったんでビールを飲みながらDVDでも見ようかと思った。
先に風呂をわかそうと思ってバスルームに入ると、
風呂のフタの上にタクシーで見たのと同じブラシがあった。
目を疑った。そりゃ確かにさっきは暗かったし、気持ち悪いんでよくは見なかったけど、
チリチリした長い毛がはさまってるとこなんか同じものとしか思えなかった。
髪の毛の先にはすべて、毛穴のあいたフケのような皮膚の切れっ端のような、
小さな白いものがついていた。そのとき「ああ、これはよくないものだ」という気がしたんだ。

そのブラシには直接さわりたくなかったんで、新聞紙で上から包むようにして持ち上げた。
部屋のゴミ箱に入れる気はなかった。
どうしようかと思ったが、とにかく離れたほうがいいだろうと考え、
面倒だが200mばかり離れたコンビニのゴミ箱に捨てることにした。
コンビニの駐車場は明るく、店内にも数人客の姿が見えたんで少し安心した気分になり、
「えい」とばかりにゴミ箱の中に投げ込むと、
ついでに雑誌でも見ていこうかと店の中に入った。
さすがに立ち読みするような時間ではなかったんで、
パソコン関係の雑誌をとってレジに向かおうとしたら、コンビニの窓の外に人影が見えた。

カーキ色のコートを着て帽子を深く被った女で、
ずんずんガラスに近づいてくると前かがみになって視界から消えた。ちょうどゴミ箱のあたりだ。
目を離せないでいると女は立ち上がり、手に俺がさっき捨てた新聞紙を持っていた。
女はこっちから視線を外そうとせず、新聞紙をくるくるほぐしてブラシを取りだし、
片手にブラシ、片手で店内の俺のほうを指さしながらわめいてるようだったが、
ガラスごしで何を言ってるのかわからなかった。
これは店員に知らせたほうがいいかとも考えたが、女はひとしきりわめき終えると、
ブラシをポケットに入れ、くるりと踵を返して足早に去っていった。
・・・怖かったんでコンビニで少し時間をつぶし、雑誌の他にスナック菓子なんかも買って外に出た。

様子をうかがったが、女の姿は見えなかった。
アパートまでの200mは人通りも少なく、かなり怖い思いをしたが、
特に何事もなく部屋へ戻ってきた。
テレビをつけ、テーブルの前に寝そべって一連の出来事を思い返したが、何とも解釈のしようがなかった。
呪いのブラシ?まさかそんなマンガみたいなことが・・・ねえ。
しかしさっきの女といい、運転手の態度といい腑に落ちないことばかりだ。
それは何らかの説明がつくのかもしれないが、風呂のフタの上にブラシがあったのはありえないよな。
それでも冷蔵庫からビールを持ってきて飲み始めると気がまぎれてきた。
スナック菓子を食おうと思いコンビニの袋を逆さにすると、
さっき買ったものといっしょに、あのブラシがごろんと転げ出た。


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