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塩の柱

2014.04.27 (Sun)
去年の秋のことですね。9月の秋分の日前の連休です。
私と主人と5歳の娘の3人でドライブに行ったんです。場所は長野のほうですが、
みなさんのお話を聞いていると詳しくは言わないほうがいいみたいですね。
山へ行ったんですけど、登山ではありません。長距離ロープウエーに乗るのが目的でした。
けっこう混雑していましたし、紅葉はまだ先のようでしたが、
天気はよく、予想以上に眺望は素晴らしかったです。
・・・その帰り、道に迷ってしまったんです。

主人の運転するレガシィのナビに従っていたはずなのに、どんどん山の中に入っていくんです。
道幅の広い舗装道路でしたので、最初は間違っていると思わなかったんですが、
道はだんだんに細くなり、やがて車一台やっと通れるくらいの砂利道に変わりました。
「おかしいなあ、抜け道を指示してるとも思えないし、これはやっぱり間違ってるんだよな」
主人が言いました。
方向転換しようと適当な場所を探していると崖下に舗装道路が見え、
それがどうやら正しい道のようでした。

「うーん、戻るのは時間かかりそうだし、こんなに近いんだから、
たぶん下に降りる道がこの先にあるんじゃないか」
主人がそう言って、そのまま前に進んでみることにしました。
砂利道を5分ほど行くと、急に周囲の林が開け、広い駐車場に出ました。
といっても下は土のままなんですが、たくさんの車が停まっていてどれも高級車でした。
奥のほうに平屋建てのわりと大きな建物がありました。
「何だろう、ドライブインのようにも見えるな。ちょっと降りて行ってみるか」主人が言い、
3人で車を降りました。

ちょうど昼時でしたので、もし食堂ならここで食べていってもいいと思ったんです。
歩いていくと、前に停まっていたBMWのドアが開き、やはり3人連れの親子が降りてきました。
50年輩の旦那さんに、だいぶ若い奥さん、それと娘と同じ年ごろに見える男の子です。
両親が黒い礼服のようなのを着ていて、男の子も半ズボンのスーツを着ていたので
もしかしたら建物は葬儀の会場なのかもしれないと思いました。
主人が少し前を行っていたその人たちに追いついて「あの建物は何ですか」と聞きましたら、
立ち止まってしばらく黙っていましたが、
旦那さんが「おソバ屋さんです」とだけ答えられました。

ああこれはよく耳にする、清流や湧水を使ってソバを打つ、
山の中の隠れ家的な店なのかもしれないと思いました。
その人たちは私たちをジロジロと見ていましたが、やがて踵を返して建物のほうに向かいました。
なんだか失礼な感じでしたが、私たちも後をついていったんです。
建物に近づいても店を表す幟などは立っておらず、正面に大きな木を削った看板があり
「蕎麦処」と彫られているだけでした。
「これはけっこう当たりの店かもしれないぞ」主人が言いました。
でも建物は真新しく、急いで作ったような感じにも見えたんです。

壁は黒っぽいガラス張りになっていて、はっきりではないですが中の様子が見えました。
4人がけのテーブルが奥まで続いていて、そのテーブルには3人ずつ人が座っていました。
両親と小学校前に見える男の子です。
テーブルは20以上ありそうでしたから、少なくても60人は人が入っていたはずです。
大人はみな礼服を着ていて、男の子たちも盛装と言える服装でした。
店の前に、毛皮のベストを着た背の高いがっちりした体格の30代くらいの男の人が立っていました。
先の家族の旦那さんが「くじを引く決心がつかなくて遅れまして・・・」というようなことを言い、
大きな男はうなずいて店の中に招き入れました。

私たちが近づいて、主人が「ここ入れるんですか」とその男の人に声をかけたら、
驚いたような目でこちらを見ていましたが「予約はある・・・んですか?」と聞かれました。
「いや、ありません」
「じゃあ申し訳ありませんが、お入れすることはできません」
それを聞いて車に戻ろうとしました。何か特別な催しが行われているのだと思ったんです。
そのとき入り口の奥から別の人の声がしました。
「ここに迷ってきたんだろうが、これも何かの縁だろうから入ってもらったらどうだ」
すると男の人は「いやでも、女の子ですよ」と店の中に向かって答え、
「・・・ああ、それはダメだ」こんなやりとりがあったんです。

あきらめた主人が男の人に道を聞いていましたが、どうやら来た道を戻るしかないようでした。
車に戻ると娘が「お腹すいた」と言いました。
主人が駐車場の中を見回していましたが、
「あっちに坂になってるところがあるな。あそこが道なら下に降りられるかもしれない」
そう言って車を出しそちらへ向かいました。
確かに細い道があり、下り坂になっていました。
でも、道はすぐに暗い森の中に入り、行き止まりに神社のような建物がありました。
とても小さなお社程度のものです。

お社の前は、大木と大木の間に注連縄が張ってあり、白に赤い筋の混じった高さ1mばかりの円柱が、
人が体をすり抜けられるくらいの間隔で2列に10本ほど立っていました。
「何だろうなあれ」なんとか草地の上に車を止め、主人が降りました。
私もついて車から出ると、主人が柱に指でさわって臭いを嗅いだりしていましたが、
「なんだかこれ塩みたいだぞ」と言いました。手につけてなめてみたのかもしれません。
そして柱の間を前にまわって「あっ」と大声を上げました。
私も前に回ってみましたら、柱の上部に顔が彫られてありました。
ものすごく写実的で、まるで生きているみたいにリアルでした。
全部別の男の子と思える顔で、どの子も目を閉じ、
うっすらと口を開けた穏やかな表情をしていました。

そのとき「おおい、あんたら!!」という怒鳴り声が後ろのほうから聞こえました。
振り向くと、さっき店の前にいた大男がこちらに向かって走ってきました。
手にナタのようなものを持っているかに見えました。
「まずいぞ、車に戻れ」主人が叫び、急いで車に戻って発進させました。
車とぶつかりそうになるぎりぎりまで男は道の真ん中に立っていましたが、
こちらがスピードを落としながらも止まらないのを見ると、脇の草地によけました。
ナタを振りかざし、目をむいて何かを叫んでいるのがわかりました。
さきほどの駐車場をかなりの速度で走り抜け、砂利道、舗装路と通って街へと出ました。
追いかけてくるものはありませんでした。

街では食堂などには寄らず、コンビニで弁当を買って娘には車内で食べさせ、
そのまま中央道に入って家まで戻りました。
・・・不思議ですよね。なんとも解釈のしようがありません。
店の中の家族連れ・・・男の子の顔が彫られた塩の柱・・・
あの店のことについてはネットで検索してみましたが、何の手がかりも得られませんでした。
地図とグーグル・アースでそれらしい場所をあたってもみたんですが、
細い道の両脇は森になっていて、駐車場も店らしい建物も見つけることができなかったんです。
もちろん塩の柱があった、あの神社もです。
・・・これで私の話を終わります。


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コメント
ブログの訪問ありがとうございます。
ブログを始めたばかりですのでよろしくお願いします。
占星術をやられていると拝見して私の名前から蟹座であることがばればれなのではないかと少し思ってしまいました。

怖い話好きなのでブログを拝見してゾクッとした感覚を体験していけたらなと思います。
月島海子 | 2014.04.28 19:19 | 編集
コメントありがとうございます
占星術が本業ですが何でもわかるわけではもちろんありません
自分のとこは怪談に特化したブログなんですが
気に入られましたらいつでもご訪問ください
よろしくお願いします
bigbossman | 2014.04.28 21:30 | 編集
 全編に不穏なキーワードがてんこ盛りでワクワクしますね。「決心」「女の子はダメ」「穏やかな表情(不穏ですよね、この場合)」「神社」。直接の描写は一切ないのに、男の子の顔は「彫られた」ものではないんだろうな…と想像させられるのが怖い。
 それにしても、塩の柱といえば聖書(または派生してナディアかエヴァンゲリオン)!と思わせておいて、まさか日本の山奥の蕎麦処とはw
| 2014.04.28 21:41 | 編集
コメントありがとうございます
これはまあ不気味な雰囲気を書いた話ですね
「ひとひ神」みたいに一日神の代役をするというような一発アイデアの話もありますが
そればかりだとショート・ショートっぽくなってしまうので
いろいろな方法論のやつを混ぜながら書いています
bigbossman | 2014.04.28 23:03 | 編集
追伸:
塩の柱自体は旧約聖書からの拝借です
うちはそれ系のなので聖書は子どもの頃から読んでます
bigbossman | 2014.04.29 03:35 | 編集
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