星見台

2014.05.06 (Tue)
今から15年前の話で、私は高校2年生でした・・・って齢がわかっちゃいますね。
うちは・・・女だけの5人姉妹だったんです。しかも年子の。
これって、今ほど少子化が進んでなかった当時でも珍しかったんですよ。
父をこのことでからかう人もいました・・・って今もたまにいるみたいですけどね。
男が生まれるまで頑張ったんだろう、残念だったなって。
父はある自動車メーカーのディーラーを経営してます。
地方都市でしたから、メーカーから派遣されてくる店長じゃなく自前の店だったんです。
それで、ちょっと郊外でしたけど大きな家に住んでたんです。
4畳半くらいなんですけど、姉妹の5人ともがそれぞれ自分の部屋を持っていたんですよ。

実家は庭も広かったんです・・・これは自慢じゃなくて、
やっぱり田舎で土地が安いせいだったんだと思います。
その庭の一角に、「星見台」というのがありました。
そこだけ土を盛り上げて富士山のような形の台状にしてあるんです。
高さは2階の屋根とそう変わらないくらいだから2mはあるはずです。
下は芝生になっていて鉄製のすべり台みたいな階段がついてます。
そこで毎年の7月に「星見の会」というのをやるんです。
日にちは決まってませんでしたが、七夕が終わった後なので7月の第2週のどこかですね。
別に大したことをするわけじゃなくて、
夜9時になったら家族みんな・・・両親と5人姉妹でその台に上って小1時間過ごすんです。

星は出てるときも、雲に隠れて出ていないときもありました。
小雨のときもあったんですが、土砂降りでできなかったというのは記憶にないです。
だから星見というのは口実みたいなもので、実はあんまり関係ないのかなと思ってました。
台の上でみなで浴衣を着て座って、ロウソクを数本立て、
何をするかといえば、まず最初に母がお祈りみたいなことをするんです。
ごく短いのを口の中でごにょごにょという感じで、儀式めいた感じはあまりなかったですね。
それから用意してあった餡入りの焼き餅を食べ、甘酒を飲むんです。
子どもでも飲みましたよ。白い陶器のコップに一杯。
ああ、言い忘れてましたが、この星見の会に出るのは5歳からなんです。
私もそうだったし、妹たちも5歳前は星見の晩は親戚にあずけられていました。

そして星が出ていれば星を見たり、
そうでないときは父が神話や科学の星に関した話をしてくれました。
そして10時前には台を下り、家に戻って早く休むんです。
会が終わると、なんとなく両親が残念そうな感じだったんです、「ハー」と溜息をついたりして。
そのときはどういうことがわかりませんでした。星見をやる意味も残念そうな意味も・・・
何度も聞きましたし、姉や妹たちも聞いたんですが教えてはくれませんでした。
「きっとそのうちわかるから」って・・・
これを毎年続けて・・・私が高2のときです。
姉妹は全員、家の方針で小学校から大学までの一貫校に通ってまして、
高3の姉から中2の末の妹までそろっていました。

台に全員が上り、餅を食べながら甘酒を飲んでいました。
その日はよく晴れてたくさん星が見えました。
父は眼鏡でしたが、姉妹は不思議と全員視力がよかったんです。
始まって20分くらいたった頃でしょうか、突然4番目の妹が立ち上がって叫んだんです。
「星が落ちてくる、落ちてくる、こっちに来る!」って。
見上げても流れ星なんか見えませんでした。
妹はもがくようにして台から降りようとしましたが、父が後ろからそれを抱きとめたんです。
妹が転げ落ちないようにしてるのだろうと思いましたが、
父は「そうか来たか、うちに来たか、やっと来たか・・・!」こう大声で言いました。
わけがわからなくて母のほうを見ると、顔全体で笑っていたんです。

その妹は父に抱きかかえられた状態で激しく手足をバタつかせていましたが、
「来る、来る、来たっ!!」と叫んで両手で頭を抱えました。
「◯◯ちゃん!」大声で名前を呼びながら、私や他の姉妹が回りを取り囲んでいると、
妹の頭の回りがボッと光りました。理科の実験で見た静電気みたいでした。
妹は白目を剥いてそのまま父の腕をすり抜けて台の土にへたりこみました。
水色の浴衣の下半身が黒く染まっていました。
「血だ、たくさん血が出てる!」と姉妹のだれかが叫びました。
ところが父も母も妹のことをまるで心配していない様子でニコニコしていたんです。
「よかった。頑張ったかいがあったわね」と母が父に言いました。

その妹は家の布団に寝かせられましたが、医者などにいくことはありませんでした。
いえ生理とかではありません。姉妹はとっくににみんなきてましたから。
翌朝、妹は意識が戻っていたようでしたが、姉妹はだれも会わせてもらえなかったんです。
午後に家に黒塗りの高級車が来てどこかに連れて行かれたようでした。
それから・・・その妹に会ったのは全部で4回だけです。・・・ある教団の教祖になったんですね。
会ったときには、山の中ですが、それは御殿のような施設の奥の間にいて、
金無垢の調度の中でたくさんの人にかしずかれていました。
私たち姉妹はもちろん両親も、妹に会うときにはひざまずかせられました。
有名政治家なども会見に来るし、信じられないような額のお金が入ってきているみたいです。

私は6年前に教団の人と結婚して、女の子が2人生まれました。
姉も結婚していてやはり女の子が2人、
すぐ下の妹は去年結婚しましたが、まだ子どもはいません。
3人ともムコ取りで、大きく建て増しした実家に今も住んでいます。
改築の費用はすべて教団持ちでした。
星見台はいったんとり壊されていましたが、数年前に教団の人たちが来て新たに築き直しました。
・・・私の下の娘が今年5才になるんです。
姉の長女は昨年初めて星見台に出ました。
来年は姉の子と2人で上ることになります・・・そして女の子の数はだんだんに増えていって・・・
これで終わります。


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