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ビセンシブル

2014.05.10 (Sat)
俺は大学でオカルト研究会のサークル長をしてるんズよ。
もう3年なんで今年いっぱいが任期ですけどね。
ここ2ヶ月で変なことがあったんで話します。
・・・ここはオカルトに詳しい人がいろいろ来ているみたいなんで、
何かわかることがあったら教えて欲しいっス。
1月ばかり前のことです。
オカルト研究会に新入生が6人入って、男ばっかりでしたけど、
その中の一人に酒の席で質問されたんです。
・・・ああ、ここは未成年に酒飲ませちゃいけないなんて言う人はいないっスよね。

オカルト経験則のようなもんでした。
「ねえ先輩、幽霊って目には見えないで鏡にだけ映るってことはあるんスか」
「うーん難しいこと聞くなよ。俺は霊能があるわけでもないし、わかんないけど・・・
 映画なんかだと2パターンあるよな。鏡を見ると自分と一緒に霊が映ってて、
 後ろをふり向くと誰もいない、ってやつと、
 もう一つは、鏡には自分しか映ってなく、安心してふり向くと幽霊がドンといるってやつ。
 どっちもあるし、どっちもそれぞれ怖い。ただ鏡の中は異界という説もあるから、
 鏡の中だけに住んでる幽霊ってのがいてもおかしくはないと思う」
「それともう一つなんスが、幽霊はすき間にいるってのはどうですか」
「それはよく聞くな。家具のすき間とか、カラーボックスに入れた本の上とか、
 そういうせまい空間に霊は出現するという話はあるよ」

「やっぱりそうスか」
「・・・んーでもな、それって、
 すき間に顔を入れるのはフォトショで心霊写真が作りやすいからって話もある。
 すき間部分に小さくぼんやり埋め込めば粗が見えにくいとかな。
 ところで、どうしてこんなこと聞くんだ?」
「いやそれが、俺アパート暮らしを始めたばかりじゃないすか。で、風呂に鏡があるんスよ。
 こないだ洗面所の戸を開けっ放しにして歯を磨いてたら部屋の横のほうが映ってたんです。
 んで、ラックとラックの間に小さい顔が見えた気がするんです」
「スゲえ心霊体験じゃないか。で、どんな幽霊だったん?」
「幽霊かはわからないんですが、人の姿だったとは思います。
 そうスね、15cmくらいか20cmくらいの小さい人・・・」
「なんだよ、小さいおじさんの話か」

「いや、女の人だったと思います。スカートはいてるように見えましたから」
「女の幽霊か、まー小さいおじさんよりは信憑性が高い気がするな。で、美人だったか?」
「それが小さくて顔まではわからなかったんです」
「何回見たんだ?」「まだ一回だけですし、そのとき寝不足だったから見間違いかもしれないです」
「いやでも心霊アパートならすげえな。もう一度見たら必ず報告しろよ。
 みなで霊検知器を持って探索にいくから」
こんな話をしたんスよ。
いや、はっきり言って信じてはいなかったというか、
後輩が自分で言ってたように何かの見間違いじゃないかと思ったんス。
でなきゃ、テレビ画面の人がガラスに映ったとか、とにかく何か原因のあることだと。

俺らオカルト研究会といっても、実際に霊を信じてるやつなんてあんまりいないんス。
みなでホラー映画見たり、心霊スポットに行って写真撮ったりするサークルなんス。
で、このことはその場かぎりですっかり忘れてました。
そしたら1週間くらいして、その後輩から続報があったんスよ。
「また見ました。時間は前と同じ夜中12時頃でした。今回は余裕があったんでじっくり見ましたよ。
 この前みたいにすぐ消えませんでしたし・・・けっこうきれいな若い女の人でした」
「ああ、そういえばそんなこと言ってたな。でも今回も小さいんだろ。よく顔わかったな」
「それが部屋を少しもよう替えして、ラックの間を広げてたんス。
 そしたらその間にぴったりはさまるようにいたんス。30cm・・・この間の倍くらいに見えました」
「ふーん、じゃすき間を広げればその分大きくなるのかな」
「なんか遠近法が関係ある気がするんです。実験して詳しいことがわかったら知らせます」

・・・さらにこういうやりとりをしたんス。
でね、幽霊が見られると思ってワクワクしたとかそういうことじゃないんス。
それよりも、後輩があまりに真顔で話してるんで大丈夫かコイツと思ったほうが大きかったスね。
その後、この後輩はだんだんサークルに出てこなくなりました。
大学にもあんまり出席してないみたいなんス。
俺らにしてみれば貴重な新人メンバーだし、ちょっと心配したんです。
で、みなでそいつのアパートに行ってみようかとか話してた矢先に、
大学の近くの道でばったりそいつに会ったんス。
それが奇妙なことにホームセンターの台車を押してるんス。
その上には杉を小さくしたような観葉植物の鉢が10個ほどと、レンガが20個ばかり乗ってたんス。
「なんだよ、園芸でもやるのか?庭なんてないだろ」って聞いたら、
「・・・いや、第三の男をやってみるんス」と、わけわからないことを言って、
そそくさ行ってしまったんです。

「第三の男って?・・・映画か?」これはやっぱ一度アパートに行ってみようと思いました。
そいつは翌週も大学全休でした。で、土曜日の午前に一人で行ってみたんス。
チャイムを押しても、ノックしても返事がないのでノブに手をかけると鍵はかかってませんでした。
一歩部屋に入って「あっ!」と思いました。
そいつの部屋の中に街路ができてたんすよ。レンガを並べて両側に塀をつくり、
観葉植物を街路樹見みたく等間隔に並べて・・・レンガは台車で見たときよりたくさんあったから、
何回も買ったんだと思うス。
レンガはラックのあるあたりから手前側に開くようにならべてありました。
観葉植物も高さを調節して小さいものから手前に大きくなるようにしてあるんス。
「遠近法・・・とか言ってたよなあ。これのことかいな」
そう思いながら、浴室のドアを開けました。鏡の前に立つと、見下ろすような形で映ってましたが、
背後に斜めに曲がった街路があるように見えないことはなかったんス。

「んーこれをやりたかったのか。やっぱ変だし、病院を勧めるのが一番だろうなあ」
そう思ったときっス。鏡の奥にちらっと人の姿が見えました。
小さな男女がラックの間にいました。顔ははっきり見えませんでしたが、
1人は後輩、1人は女じゃないかと思いました。
2人は並んで立ち、こちらに手をふると、
くるっと後ろを向いて手をつないでラックのすき間に消えていきました。
後ろを見ましたが何もいなかったんス。もちろんラックをよけて裏側も調べました。
映画の話をしてたんでプロジェクターとかないかも探したんス。
もちろんそんなものはなくて、それ以後後輩は行方不明なんス。
いや・・・霊と一緒どっかに行ってしまったとは思いたくないスよ。
そんなことが・・・ねえ。
でも人の姿を鏡の中に見たのはたしかなんス。幻覚ってことは・・・



*題名の「ビセンシブル」は「Be sensible, Martins 」という、
映画『第三の男』の中のセリフです。下の写真の場面になる前に、
ジョゼフ・コットン((マーティンスは役名)が警察署長に
「Be sensible(理性的になれ)」と言われます。
あまりにもの名場面をこんなしょうもない話に使用して申しわけないです。

『第三の男』



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コメント
 都市伝説やテンプレ怪談も、ひねり方しだいでまだまだ面白くなるという見本ですね。個人的には、幽霊ものより時空ものに近い気がしますが。彼は「鏡の中」に消えて行ったんじゃないかな…と。しかし、タイトルだけで映画ネタが通じる先輩後輩ってすごい、私は「第三の男」を知らずにググりましたよw
 あと、「かるかや」の「ギリシア神話の髪の毛がヘビになってる怪物」は、むしろ嫉妬された側ですよね。知識の曖昧さとか、作文っぽい文体とか、かなり「中3の少女らしさ」が意識してある印象を受けました。確か、この辺も普段から気を使っておられたような。
| 2014.05.11 20:17 | 編集
コメントありがとうございます
ネタ不足のあまり、自分でもかなり不自然な感じのひねり方になってるのもあります
時間があれば大ネタに挑戦したいんですが・・・
あと、1人称の文章ですので、できるかぎり語り手になりきって書こうとは思っています
中学生女子になりきるのはかなりの難易度ですが
低年齢の語り手の場合は語彙や考え方もなるべくそれに会う形で書いてます
bigbossman | 2014.05.11 22:00 | 編集
一人称での語りということで、語彙に関して個人的にちょっと気になったのは、どの文章でも常に同様の言い回しがされている単語です。
ぱっと思いつくところだと「フアン」「大規模校」などがそれにあたるかなと。
語り手によっては「ファン」「マンモス校」といった表記揺れがあってもいいのかなと思います。
細かい話ではありますが……
| 2019.05.29 07:36 | 編集
コメントありがとうございます
うーん確かに、それぞれの語り手によって口調は変えてるんですが
そこで使われる語彙は自分のものがそのまま出ていると思います
気をつけていきたいですが、なかなか難しそうです
bigbossman | 2019.05.29 23:44 | 編集
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