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土管2

2014.05.15 (Thu)
中2のときですね。もう10年以上前のことになります。
僕は転校生だったんですよ。親父が転勤族で、
小中の頃は長くて2年、短くて3か月くらいで転校をくり返してました、
だから・・・記憶も混乱してて、少し親しくなったやつなんかがいても、
どの学校でのことだったかとっさに思い出せなかったりするんですよ。
ただ、中2の4月から行ってた学校と、山口というやつのことははっきり思い出せます。
強く印象に残る体験をしたんです。

僕は転校慣れしてまして、新しい学校に行ってもあんまし友達を作んなかったんです。
どうせずっとはいられないし、勉強も、授業の進度や教科書が違ってたりして、
ついてくのがやっとでしたから。部活にも入らなかったし。
だから友達ができても、
自分と同じように放課後すぐ家に帰るおとなしいやつばかりでした。
で、山口です。体の小さい口数の少ないやつでした。
最初は体育の授業で何かのペアを組まされて親しくなったんです。
それで休み時間にも話をするようになって、UFOフアンだということがわかりました。

僕もそうだったんですよ。
当時の中学生はスポーツや芸能の話題ばかりで、そういう話は流行ってなかったんです。
家の帰る方向も同じで無部どうしだったから、
それ系の話をしながらほぼ毎日一緒に帰ってました。
・・・ある日、山口が「すごい秘密を教えてやる」って言ったんです。
帰り道の途中にある児童公園にUFOが着陸するのを見たって言うんです。
「3か月くらい前の帰り道だったんだ。その日は遅くなって、7時過ぎくらいだった。
 たまたま上を見たら、緑色に光るUFOがゆっくり飛んでた。
 後をついてったらその公園に着陸したんだ。物陰に隠れて様子をうかがってたら、、
 銀色のスーツとヘルメットの人が2人出てきて遊具をいじってた。
 しばらくしてまたUFOに乗って、今度はものすごい急上昇をして、
 あっというまに消えた」

こんな話だったんです。
・・・でも、いくらUFO好きでもさすがに信じられませんよね。
たぶんその気持ちが顔に表れてたんだと思います。
「じゃあ、証拠があるからこれから公園に寄ってみよう」ってことになりました。
児童公園は脇道にそれてから5分くらいのところで、かなりの広さでしたね。
そのわりには遊具は少なく、そのときも誰もいなくてうら寂しい感じがしました。
まあ午後4時過ぎという時間のせいもあったのかもしれません。
トイレの後ろの繁みの陰に連れていかれ、「ここだよ。ほら丸く跡がついてるだろ」
と地面を指さされました。

でも、ミステリーサークルみたいにはっきりわかるわけでもないし、
言われればそうかなくらいに、草に半径3mほどの円形の跡がついているだけでした。
山口は僕が驚かないのにいらだったような感じで、
「じゃ、もっとすごい証拠を見せてやるよ。
 ただこれ、すごく危険だから絶対言ったとおりにしてくれよ」こう言いました。
そして遊具のほうに連れていかれたんです。
土管の遊具でした。直径50cmくらい、
長さ4mくらいの土管が6本積み上げられたやつです。
三段重ねで、下が3本、中が2本、上が1本、全部違う色のペンキで塗り分けられてました。

「銀色のやつらが機械を出してあれこれやってたのがこの土管なんだ。
 それを見たから、しょっちゅうここへ来ていろんなことを試してみた。
 ・・・やんなきゃよかったけどな」こんなことを言って、また説明を続けました。
「こっち側から一番下の右の赤をくぐって、向こうに出たらすぐに2段目の黄緑をくぐるんだ。
 最後、一番上の紫のやつをくぐれば終わり。そうすると違った世界に出てる」
「えー、違った世界ってどういうこと?」
「こっちの世界とよく似てるんだけど、少しずつ違う世界なんだ。物も全部が嘘の物だし、
 やつらが何かの実験に使ってるんだと思う・・・
 で、向こうに行ったらこの土管のまわりから離れるな。
 何かヤバイと思ったら、来たときと逆の順に土管をくぐれば戻ってこられるから」

「山口はいっしょに来ないの?」
「俺はいかないよ。こっちはこっちで警戒してなきゃならないんで、ここで待ってるから」
・・・難しいことでもありませんし、やってみましたよ。
バッグを置いて、言われたとおりの順番で素早く土管を下から上へとくぐっていきました。
全部で2分くらいしかかからなかったと思います。
最上段の土管から顔を出してみると、別に前とまったく変わらない風景でした。
山口の姿が見あたりません。僕を驚かそうとしてどっかに隠れてるのかもしれない。
そう思って土管を降りていきました。
自分のバッグを拾い上げて、あれっ、と思いました。何か軽いんです。
発泡スチロールみたいな重みで、チャックを開けようとしても開かないんです。

変に思ってバッグを置きました。すると足元の草も本物の植物でない感じがしたんです。
一つかみ引き抜こうとしたんですが、できませんでした。人工芝みたいなんです。
「えーっ」と思って、近くの木に触ってみました。
すると手をあてたところが少し引っ込むんですよ。
すごくよくできた書割りみたいなのになってたんです。
山口が言ってた「嘘の物」ってこれのことか、と納得しました。
公園の外の街並みも同じに見えましたが、歩いている人も車もありませんでした。
それに・・・見える家々の電気が全部ついてるんです。
これって不自然ですよね。人がいない部屋だってあるはずなのに・・・
そのとき「〇×△◇◎・・・●▼×」日本語でもない英語でもない叫び声が聞こえました。

道のほうから白衣を着た人が数人、こっちに向かって走ってきたんです。
僕のほうを指さしていました。
「あ、つかまえられる」と思って、土管に登って一番上をくぐりました。
2段目から顔を出したとき、白衣のやつらが公園の柵を乗り越えるのが目に入りました。
異様に白い、しわのない、表情もない顔をしていました。
怖くなって必死で2段目を滑り降り、下段に入ったときには、
そいつらはもうすぐ近くまで来ていました。
水泳のように手足を動かして、もがきながら土管を抜け出ると、
向こうに山口が待っていて、引っぱり出してくれました。

「どうだった?」
「白衣のやつらに追っかけられた。白い面みたいな顔をしてたよ。
 それに、何もかも言ったとおりに本物じゃなかった。これって何なんだよ?!」
僕は息を切らしながら言いました。
「・・・やっぱりそうか。ずっと向こうで何かやってるんだな・・・」
山口は声を落とし、
「な、これで信じただろ・・・一人で絶対にやるなよ。
 顔を見られたからもうここに来るのも危ない。しばらく遠回りして帰ろう」
こんなふうに言いました。

「あいつらにつかまったらどうなるんだろう?」僕が聞くと、
「向こうでどうなるかはわかなない。
 ・・・こっちの世界では存在しなかったことにされてしまうよ」
「それ、どういうこと。どうしてわかるん?」
「前に行ったときに弟がつかまって、俺だけ逃げてきたんだ。
 ・・・家に戻ったら、俺は一人っ子で弟なんて最初からいないことになってた。
 弟の物は全部なくなってたし、写真からも弟の姿は消えてたんだ」
泣きそうな声で山口はこう言ったんです。

それから公園には近寄りませんでした。
山口はこの2週間後、学校に来なくなって、
後で担任から、急な事情で転校したと聞かされました。
さらに2か月後、僕も親父の都合で引っ越しが決まってかなり離れたところに移ったんです。
それからこの街には一度も行ってないし、もちろん公園がどうなったかもわかりません。
山口とも会っていません・・・まあ、こんな話ですね。
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