やり直し

2014.05.24 (Sat)
2か月前のことです。いや変な目に遭いましたよ。
その日は会社の歓迎会があって遅くなったんです。でも自分は遠距離通勤のほうだから、
終電に間に合うように2次会の途中で失礼したんです。
それは飲んでましたけどね・・・だけど、ぐでんぐでんという状態ではなかったです。
カラオケ屋から最寄りの駅に着くと、まだ時間の余裕があったんでトイレに入りました。
少し腹の具合が悪かったんです・・・汚い話ですみませんね。

その駅のトイレは初めて入ったんですが、ふつうのトイレだったとしか言いようがないです。
ただ・・・手洗いの鏡の前に白い紙袋が置いてあったのを覚えてます。
ああ、忘れ物があるなくらいにしか思いませんでした。
4つ並んだ大のほうの個室は全部空いてたんで、手前から3つ目のに入りました。
ほら、ああいうトイレって、和式のがまず最初にあると思ったんで。
でね、電車の時間があるんで5分くらいで出ました。

ドアを閉めて・・・何か違和感があるんですよ。
自分のすぐ横の上に窓があるんです・・・つまりね、一番奥の個室から出たような気がしたんです。
「あれ、変だな」と思ってもう一度ドアを開けてみると、やっぱり洋式の便器があって、
まあ自分の勘違いだろうと思って、たいして気にも留めなかったんです、そのときは。
紙袋ですか?・・・うーん、あったかどうだか?
手を洗ったときに気がつかなかったから、なくなってたのかもしれませんね。
で、トイレから出たら、駅の構内が騒然としてました。

3年前の震災のときみたいに人があふれてたんです。
ほら、あのとき帰宅難民という言葉が流行ったでしょう。
ああいう感じであちこちにサラリーマンらしき人がたむろしてて、みな深刻そうな顔をしてるんです。
携帯で電話してる人も多かったし。
びっくりしましたよ、もちろん。トイレに入る前は閑散としてたんですから。
近くに呆然と立ち尽くすといった感じのおっさんがいたんで「何が起きたんです?」と尋ねてみました。
おっさんは驚いたようにこっちを見て「・・・あんた、知らないのか」と言いました。

「噴火だよ、大噴火・・・それに・・・トカゲ」とおっさんが話を続けようとしたとき、
「ああ、あいつだ」という大声がして、
改札のほうから数人の黒い服の男がこっちを指さしながら駆けてきました。
で、たちまち両脇に来て、左右から腕をつかまれてしまったんです。
男たちは4人でした。・・・映画のメン・イン・ブラックってわかるでしょうか?
ちょうどあんな感じの黒のスーツにサングラスをしてたんです。
それと、自分も背は高い方ですが、その男たちは全員185cm以上はあったと思います。

「何ですか?あんたたちは」自分がこう言うと、
右側の男が、ひじょうに丁寧な口調で「驚かせてすみません。じつはあなたにお願いがあるんです」
と答え、続けて、
「先ほど、トイレに入っておられましたよね。あれ、もう一度やり直してほしいんです。
 謝礼はします」と言ったんです。
自分が「??」となっていると、今度は左側の男がポケットからでかいサイフを取り出して、
中からごそっと札束をつかみ出しました。

「50万あります」そう言って、自分の上着のポケットに突っ込んだんです。
「ちょっと待ってくださいよ」そう言ったんですが、
前後左右を囲まれたまま、さっきのトイレに連れ込まれました。
「なに、ただ一番奥のトイレに入ってもらえばいいんです。
 そこで、あなたの時計で4分以上過ごしてくれれば・・・」
口調はていねいでしたが、最後は引きずるような形で自分をトイレの前まで連れて行き、
ドアを開けて中に放り込んだんです。

ドアが閉められ、その外から声が聞こえました。
「4分以上ですよ、いいですか。それ以上いてもいいんですが、終電がなくなりますから」
で、しょうがないので便器に座って考えたんです、いったい自分の身に何が起きているのかを。
・・・ドッキリカメラみたいなものなんだろうか。
このあとトイレから出たら、番組の看板を持った人がいて・・・
しかしさっき駅で見た大勢の人と、緊迫した様子はただごとではなかったとも思いました。
あれが全部エキストラなのだとしたら、なんて大掛かりな・・・

ポケットからお金を出してみました。
しわ一つない真新しい札で、数えませんでしたが50万はあるように思えました。
耳をすましましたが、トイレの外から物音は聞こえません。
それで、まあ4分はたっただろうと思ってそっと戸を開けてみると、人の姿は見えませんでした。
思い切って出てみて「あれっ」と思いました。
さっき押し込まれたのは最奥の個室だったのに、3番目のドアから出てたんです。
これは絶対間違いはないはずです。

トイレから出ると、さっきまであれほどごった返していた人の姿はかき消えていて、
あちこちの照明が落とされた、もうすぐ日付がかわる時間帯の寂しい駅に戻ってたんですよ。
自分の身に起きた出来事をどう考えればいいかわかりませんでした。
警察に行こうかとも思いましたが、実害はないし、
何より信じてもらえないんじゃないかと思ったんです。
それに・・・50万のこともありますし。
終電は間に合ったので、家に帰って風呂にも入らずそのまま寝ました。翌日は休みでしたから。

で、朝になって昨夜の50万を確かめてみました。
色合いから手触りからホンモノとしか思えなかったんですが・・・
ただ一箇所だけ、福沢諭吉さんの目がね、人間の目じゃなかったんです。
猫の目・・・というか爬虫類の目だと思いました。緑っぽい目の玉で、瞳は細い縦筋だったんです。
50万円分全部がそうでしたから、さすがにただごとではないんで、警察に持っていきました。
当然事情を聞かれましたが、細かい部分は信じてくれそうもないので、
トイレの中で黒服の男たちに押しつけられたと言ったんです。

数時間かかりましたが、なんとか解放されまして。
警察では、また話を聞くことがあるかもしれないと言ってたんですが、
1日後に呼ばれまして、なんと紙幣は全部ホンモノだったということでした。
諭吉さんの目の上に、さらに小さな爬虫類の目のシールを貼りつけてたらしいんです。
手の込んだイタズラだろうということでした。
・・・お金は拾得物ということで、警察に預かってもらうことになりました。
惜しい気もしますが、やはり気味悪いですから。
いったい一連の出来事は何だったんでしょうね。どなたかおわかりになりますか?


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コメント
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| 2014.05.25 01:12 | 編集
コメントありがとうございます
自分は賞とかコンテストに応募したことは一度もないし
ただ趣味で書いてるだけなんですが
いいアイデアを思いついたときが一番楽しいですね
毎日書いてるんで外れも多いんですが
長いのも書いてみたいんですが、自由業なのでなかなか時間がなくて・・・
bigbossman | 2014.05.25 23:23 | 編集
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