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餅をもらう

2014.05.25 (Sun)
中学校のときに剣道部だったんですよ。
その中学校はけっこう強豪で、
毎年県でベスト4くらいにはいってたんで稽古も厳しかったんです。
剣道・柔道ってオフシーズンないでしょう。それと雨だから軽めの練習ってのもない。
体育館の部みたく時間交代で場所を使うってこともないから、毎日びっちり稽古でした。
その中でも火・金が強化メニューの日になってて、いつもより1時間くらい長いんです。
その金曜の7時過ぎのことでした。
俺は1年で、2年生の家が同じ方向の先輩2人と帰ったんです。

疲れてるから近道して帰ろうってことで、通学路指定されてない裏道を通ったんです。
そこはドブ川の傍の砂利道で、街灯もまばらでした。
変質者の噂は聞いたことなかったけど、女子とかは絶対通りませでしたね。
俺らはまったく気にしてなかったです。
男だし、竹刀袋を持ってるときもあったし、怖いと思ったことなんてなかったですよ。
その裏道に入って5分ほど行くと、超寂れた神社があるんですが、
その日は、遠くからぼんやり赤い灯りが境内にあるのが見えたんです。
先輩たちが「お祭りかな」「まさかあんなとこで」とか話してました。

上下関係の厳しい部だったんで、俺は黙って後をついてったんですが、
たしかにいつもは真っ暗なのに、鳥居の中がぼんやりと赤く明るい。
それに、白っぽい浴衣のようなのを着た人が、
せまい境内にたくさんひしめいてるような気がしました。
すぐ神社の前まで来ましたが、ボロい神社の前に赤い大きな提灯が2つ灯されていました。
人は・・・30人以上はいたでしょうかねえ。
みな白一色の着物を着て、鳥居を背に神社のほうを見て立ってたんです。
男も女もいたように思いますが、子どもの姿は見えませんでした。

お祭り・・・とはちょっと違う感じがしました。
なぜかというと、その人たちはみな無言で、
かといって拝んでるわけでもなくて、ただボーッと立ってるだけなんです。
先輩方も変な感じを持ったらしく、立ち止まって斜め後ろからそっちを見ていました。
神社の雨戸が外されて、扉が開いてました。
境内の人たちは先頭のほうで2人ずつに並んで、
礼もせず無造作に神社の中に入っていってるようでした。
列の後ろに、白い着物は同じですが、黒い袴をつけた40代くらいの男の人がいて、
俺らの方を見て寄ってきました。

「あんたたち◯◯中の子かい」気軽な感じで声をかけられました。
先輩の一人が「そうです」と答えると、
「遅い時間だねえ、部活動かい。ごくろうさん、何部なの?」と聞いてきたんで、
もう一人の先輩が「剣道部です」と答えました。
「ああ、知ってるよ。強いんだってねえ・・・ちょっと待ってて」
その人はそう言って人混みをかきわけて奥の神社のほうに入っていき、すぐに戻ってきました。
「あんたたちにこれをあげるよ。神様のだから力がつくよ」こう言って、
長方形の紙箱を先輩に渡しました。

「どうもありがとうございます」渡され先輩が頭を下げると、
「いやいや、武道をやってる人は礼儀正しいねえ。命の価値も高いよねえ・・じゃあ」
ニコニコしながら奥に引っ込んでいったんです。
そうしているうちに、境内の中の人は5・6人くらいまで減っているのがわかりました。
俺らは歩き出し、神社から100mほど離れてから、先輩が箱を開けました。
「ほら」俺にも見せてくれましたが、ビニールに包まれた紅白の餅が2個入っていました。
「結局、何やってるかわからなかったな。さっきの人に聞けばよかった」

「・・・でもよ、変だと思わねえか。あの神社4m四方くらいだよな。あんな人数が入れるか?」
「裏から出てるんだろ」「裏戸なんてあったけか。それに川だったような気がするけど」
「餅あったけえぞ、中はあんこかな」
「でもよ、3人で2個だからな・・・さっきの人も気きかして、もっとくれりゃよかったのに」
先輩たちがこんなことを言ったので、
「自分はいいっス、一番家が近いし・・・」とっさにそう言うと、
先輩たちは「そうかスマンな」と、餅を一つずつ分け、袋を開けて歩きながら食べたんです。
「ん、あったけえ・・・てか熱いくらいだな。搗きたてなんかな」
「・・・中は何も入ってないみたいだけど、これ肉の味がするぞ」「少ししょっぱいけどうめえな」

その後は特に何事もなく大通りに出て、俺は先輩方にあいさつしてから、
自分の家のある小路のほうに別れたんです。
まあこれだけの話なんですが、後にまた神社の道を通ったときに確かめたら、
やっぱり裏口なんてなかったんですよ。
そのときも変だなあ、くらいにしか感じなくて、すぐこのことは忘れました。
・・・先輩たちは全国出場を手土産に、2年後に剣道推薦で同じ高校に合格して卒業しました。
俺は中学3年間で自分が弱いのがわかったんで、普通に勉強して別の高校に進学したんです。
それで、高校在学中にこの先輩たちが相次いで亡くなったんですよ。
一人は事故、一人は事件でした。

先輩の一人は、高2の夏に、稽古の後一人で海に行って遊泳禁止の岸壁で泳ぎ、
疲れて岸壁に這い上がれないで溺れ死んだんです。
もう一人の先輩は、母親の再婚相手が気に入らなくて反抗してたみたいなんですが、
ある日、寝ているときに煮え湯をヤカンで頭にかけられて死にました。
どっちのことも新聞テレビに大きく出ましたし、
わずか2日違いで同じ高校の剣道部員が亡くなったわけですから、
地元はたいへんな騒ぎでしたよ。
自分もショックで、あれこれ先輩たちとの中学校時代のことを思い出しているうちに、
この神社のことが頭に浮かんできたんです。・・・まあ関係はないと思いますが・・・


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