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勝負あり

2014.05.30 (Fri)
ついこないだのことです。会社の飲み会があって、地下鉄の終電に乗ったんです。
その車両には5・6人ほどいましたが、みなぐったりした感じで目を閉じてました。
わたしは端のほうの席にいたので、中がよく見渡せたんですが、
わたしと同じようなサラリーマン風がほとんどで、女性は一人だけ。
それもOLみたいな感じでしたね。
終点まで乗るので、わたしもうつらうつらし始めましたが、
ガタンという振動で目を覚ますと、車両の中央に色鮮やかなものが見えました。

何かと思って目をしばたいてよく見ると、
相撲の行司っていますよね。
あれと同じような烏帽子と着物をつけた小さなじいさんが、ちょこんと立ってたんです。
紫の着物でね、ええ、目に痛いほど鮮やかでした。
それを見たときに・・・へええ、行司さんて、この装束で移動するんだ、
なんて考えたんです。きっと寝ぼけてたんでしょうね、そんなはずはないのに。

でね、その行司さんは・・・小さいんです。
テレビの相撲で見る行司さんも小さく見えますが、
それは大きい力士にはさまれているせいで、そう見えるということがあると思います。
ところが、通路の中央に立ってるその行司さんは本当に小さいんです。
身長は130cmくらいといったとこでしょうか。
小学校の3・4年生くらいの大きさだったんです。

あれえ、変だなあと思いましたよ。
顔ははっきりじいさんなんです。それが体にぴったり合った装束をつけ、
足を開き気味に、軍配を手にかまえてたんです。
「八卦よい」行司さんが甲高い声を出しました。
そのとたん、急にのどの奥からこみ上げてくるものがありました。
ああいけない、酔ってて吐いてしまうんだろうか、と思いましたが、体が動きません。

グッ、グッと、何か大きなものがのどから出てきて、自然に口が開いてしまいました。
体を動かせないまま自分の鼻先を見ると、風船ガムのようなのが飛び出ています。
色は日に焼けた紙のような黄色でした。
目だけを動かして他の乗客を見ると、全員がね、
わたしと同じように口から直径10cmほどの何かを飛び出させてるんです。
今、風船ガムと言いましたが、その様子は深場の魚が釣り上げられて、
口から浮き袋を出しているようにも見えましたね。

ちょうど質感が浮き袋みたいな感じだったんです。
色は・・・黄色っぽい点は同じでしたが、その濃さが人によってまちまちでしたね。
何事が起きたんだろうと、必死で体を動かそうとしていると、
行司さんは一人ひとりに近づいていき、
顔を寄せて、その浮き袋みたいなのをしげしげと見つめているんです。
一人なんかには、軍配の先で浮き袋をつついたりもしたんです。
そしたら、その人は目をつむったまま、苦しそうに身をよじらせました。

全部の乗客をまわると、私のほうにやってきて目の前に立ちました。
顔を近づけて、わたしの口から出ているものを見つめるんですが、
その目つきがまるで何かの鑑定でもしているかのようなんです。
行司さんはわたしのほうを軍配で扇ぎました。
すると口から出ているものがフワフワと動きました。
それを見ながら小首を傾げ、さきほど軍配でつついていた人・・・
わたしより10歳ほど若いサラリーマンだと思いますが、
そちらのほうへまた戻っていきました。

その人の口から出ているものをもう一度確認するように見ると、
うむ、という感じでうなずいて、車両の中央に戻ったんです。
そして足を踏ん張って、その人のほうに軍配を向け「勝負あり~」と言ったんです。
それからまたその人の方にいくと、腰にさしていた短刀を抜いて、
その人の口から出たものに軽くぷつんと突き刺しました。
ボフゥ、という感じで、
ふくれた餅がしぼむようにそれは口の中に引っ込んでいきましたよ。

ガタンと振動があり、頭を車両の壁に打ちつけました。
目を閉じて・・・また開いてみると、もう行司さんの姿は見えなくなってました。
それぞれの人の口から出ていたのも引っ込んでたんです。
やれやれ、夢か。それにしても変な夢を見たなあ、と思いました。
次の駅に止まるために電車がブレーキをかけたようでしたが、
そのとき、さきほど行司さんが短刀で突いたと思った人が、
目をつむったまま横に転げて座席に倒れ、さらに通路に転がったんです。

やや近くに座っていたOL風が、目を開けてそのほうを見ましたが、
「きゃーっ」と大きな悲鳴をあげました。
その人の口から、どっと血があふれ通路の横にひろがったんです。
悲鳴を聞いて、年配のサラリーマンが立ち上がり、
一目その様子を見ると、電車の乗員を呼ぶためか隣の車両に抜けていきました。
わたしも立ち上がって、倒れている人に近づいてみましたが、
顔は真っ白で、半ば開いた口からだらだら血がこぼれるだけで、
体はぴくりとも動きませんでした。

やがて乗員が駆けつけてき、私も手伝って担架に乗せました。
次の駅で運び出されましたので、どうなったかはわかりませんが、
あの様子は助かったとは思えませんでした。
・・・話はこれで終わりなんですが、もしわたしが見たものが夢でないとしたら、
あの乗客それぞれの口から出ていたものは何だったんでしょう?
もしかして人の魂とかいうものじゃあなかったんでしょうか。
「勝負あり」というのは、いったい何の勝負がついたっていうんでしょうねえ・・・


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