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シチュー

2014.05.31 (Sat)
ではよろしくお願いします。・・・私のは夢の話でして、
もしかしたら聞いてがっかりなさるかもしれません。
みなさんは・・・くり返し見る夢ってありますでしょうか。私はあったんですよ。
何から話せばいいんでしょうかねえ。
・・・初めてその夢を見たのは小学校の高学年か中学生のときだと思います。
レストランと言えばいいんでしょうか、料理屋と言えばいいんでしょうか。
古民家みたいなところです。煤けた焦げ茶色の板壁で。
中は暗いんです。

窓があるかどうかもよくわからないんです。
なぜかというと、天井から垂れ幕のようなものが何枚もつり下がっているからです。
暗い赤や、紫、えんじ色の畳一畳くらいの幕が十数枚下がった下の、
白い丸テーブルに一人掛け分のイスがあって、そこに座ってる夢なんです。
そして目の前には料理の皿。
食器はシチューを入れる深皿で、だから店が洋風なのか和風なのかよくわかりません。
テーブルの真上に垂れ幕に囲まれた小さな照明があって、
私は料理を目の前にしてぽつねんと一人いるわけです。

ね、変な夢でしょう。これを、3年に2回くらいのペースで見るんです。
料理はたぶん、レバーのシチューです。
ざっくり大きな塊にレバーを切ってニンジンなどの野菜と煮込んだもの。
どんな味かはわかりません。・・・食べたことがないんですよ。
見た目は湯気がたって熱々でおいしそうなんですが、においが我慢ならないんですね。
え、夢の中でにおいを感じるのかって?それがそうなんです。
生ゴミとドブ泥、腐らせた魚を混ぜたようなにおいで、
しばらく嗅いでいると えずき そうになるくらいです。

だから食べられないでいると、垂れ幕のずっと奥のほうから、
「お熱いうちにどうぞ」という声が聞こえてくるんです。
これは女の声なのは間違いないです。聞き覚えがあるような気がしますが、わからない。
とても親切そうな声でね。なにか食べないと申しわけないような気になります。
でもやっぱり、においがひどくて口をつけることができないんです。
・・・この夢はかれこれ20回近くは見てるんです。
でね、その中で3回だけ、食べてしまいそうになったときがあるんですよ。

最初は大学入試の共通一次試験のときです。私は母子家庭で母一人子一人で育ちまして、
大学には行きましたが、私立ははじめから金銭面で無理でしたので、
地元の国立一本に絞ってたんです。そのね、1日目の試験のできがよくなかったんですよ。
悄然として帰ってきて寝たんですが、その夜にこの夢を見ました。
すると、いつものにおいがしなかったんです。
それどころかうまそうな肉汁の香が立ち上ってきて、皿にむしゃぶりつきそうになりました。
今まさにフォークで肉を突き刺して口に運ぼうとしたとき、
「お熱いうちにどうぞ」という例の声がかかったんです。

それを聞いたとたん、目の前に燃えさかる火の山がうつりました。
こう言うと信じてもらえないと思いますが、地獄の光景を見た、と思ったんです。
それと、この料理はけっして食べてはいけないものであることもわかりました。
無理矢理にフォークをテーブルに置きました。両手を握りしめてぶるぶる震わせていると、
「チッ」という舌打ちの音が聞こえて、そこで目を覚ましました。
・・・このときは大学は無事に合格することができましてね。
奨学金とバイトでなんとか学生生活ものりきりましたよ。
あとの2回は、出版社に就職して6年目、仕事で大きなミスをおかしてしまった夜と、
あの阪神淡路大震災で、家が倒壊して避難所にいた夜とです。

どちらのときにも食べませんでしたよ。必死の思いで我慢しました。
目が覚めたときには全身に脂汗をかいているくらい必死に。
・・・考えてみると、このシチューがですね、おししそうに感じた3回というのは、
私の人生でかなりピンチなときだったんですよ。
そのあたり何か夢の法則でもあるのかと、不思議には感じていました。
でね、私の母なんですが、震災のときに家具で強く胸を打ちまして、
岡山の病院に入院したんですが、3か月ほどして亡くなりました。

亡くなる数時間前まで意識ははっきりしていましたし、死に目にも会えたんですが、
最後の言葉がね、あの夢のことだったんです。
何か言いたそうだったので、医師のはからいで酸素マスクを外してもらいまして、
そうしたら苦しい息の下で、
「お前、夢を見ないかい。幕の下がった部屋で洋食の肉を食べる夢・・・
 いいかい、どんな苦しいつらいことがあっても食べちゃなんないよ・・食べてしまうと・・」
驚きまして「母さん」と耳元で叫んだんですが、そのまま意識をなくして、
明け方に息を引きとったんです。

そのときは不思議でした。
なぜ母が夢のことや料理を食べてはいけないことを知ってるんだろうって。
一度も話してはいないはずです。
もしかして何か隠された事情でもあるのかと思いましたが、もうどうにもなりませんでした。
それから・・・私は天涯孤独になりましたが、
30過ぎに結婚して娘が生まれました。それと時期を同じくして、
あの夢を見ることはなくなったんです。
ですからね、娘が中学生になるころには、忘れたわけではありませんでしたが、
夢のことが頭に浮かぶこともなくなっていたんです。

それで、今年のことです。一人娘は中2になりましたが、
学年が変わって、きっかけは友人とのちょっとした行き違いということでしたが、
やがて部活動とクラスの両方で無視をされるようになり、
自分の部屋で手首を切ったんです。
リスカと言われるのよりずっと深くです。
親として失格もいいところで、お恥ずかしい話ですが、
娘が血まみれになって叫びながら階段を駆け下りてきたのを見つけて、
そこまで追いつめられていたんだということがわかりました。

タオルで止血しながら、泣きじゃくる娘を抱きかかえ、救急車を呼びました。
病院では命に別条はないとは言われましたが、
何針も縫い、その晩は緊急入院することになりました。
私も深く深く反省して、その夜は妻と二人でそばにずっとついていたんですよ。
鎮静剤のせいか娘はすぐに眠りましたが、一晩中うなされていまして、
揺り起こそうかと思ったくらいです。
でね、朝の5時過ぎに目を覚ましまして、私がベッドの脇にいるのを見ると泣くんです。
イジメと、それから昨夜の出来事でショックが続いてるんだろうと思いましたが、
タオルを顔に押しつけて泣きながら「シチュー食べちゃった」って言ったんです・・・


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コメント
怖かったです・・・・

わたしも繰り返し見る夢があるので
気になっています。

毎晩金縛りにあうのですが
つい怖いのに読んじゃいました(;^-^)

シチューってお料理記事なら普通なのに
怖い話のタイトルになっていると

それだけで怖くなりました。
yume-mi | 2014.06.01 01:30 | 編集
コメントありがとうございます
週に5つは怖い話を書いてるのでどうしてもネタ不足になります
それで自分の身近にあるものを見回したりしてるうち
何か思い出したりすることもあるんですが
これもそんな一つです
bigbossman | 2014.06.01 10:39 | 編集
 ヨモツヘグイ…とはちょっと違う気もしますが、親子三代にわたって縛られているところがポイントですかね。娘さん(もしかするとお母さんも)の様子からして、食べた人には「シチュー」がどういうモノなのか分かるのかも…
| 2014.06.02 23:19 | 編集
コメントありがとうございます
この話のシチューは「よもつへぐい」はあまり意識しませんでした
イメージとして頭にあったのは石垣りんさんの「くらし」その他一連の詩です
「よもつへぐい」についてはギリシア神話との関連で少し考えていることがありますので
まとまったら書いてみたいと思います
bigbossman | 2014.06.03 00:10 | 編集
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